新型コロナウイルス感染症対策について

新型コロナ対策に関する県条例の制定について

Q 井上航 議員(県民)

知事はこのコロナ禍において、県民が最も欲しているものは何だと思いますか。それは目の前に起きた課題への対症療法的な対策の積み重ねではなく、この難局を乗り越えるための戦略です。そして、知事のリーダーシップの下、県民の理解を得ながら県民全体の総意としてコロナ対策に取り組むには、戦略を担保する法的な根拠が必要です。私は、この質問を通して戦略を担保する法的根拠、つまり新型コロナウイルス感染症対策条例制定の必要性を訴えさせていただきます。
現在、地方自治体で新型コロナウイルスに関する条例の制定や検討が進んでいます。条例にも大きく二つの傾向があり、一つは、新型コロナウイルスに感染した人や医療従事者を差別や誹謗中傷から守るために差別禁止を盛り込んだ条例、もう一つは、福岡県議会や東京都議会で検討されているような調査や検査協力等を義務化し、罰則を伴い、感染症対策を強化することを目的とした条例です。また、千葉市のように違反への罰則は設けないものの、その双方の視点を盛り込んだ条例もあります。
この間の埼玉県で発生した事案を振り返ると、まず令和2年7月30日夜間に、県内医療機関に入院中だった新型コロナウイルス感染症患者が入院先の医療機関を無断で外出し、一時行方不明となる事例が発生しました。また、10月23日、新型コロナウイルスに感染した外国籍の男性が宿泊療養先の加須市内のホテルから無断外出し、立ち寄った東松山市内の大型量販店で暴行事件を起こし、県警に逮捕される事案も発生しました。
これらの事案では、特に宿泊療養施設については、そこにいるよう法的根拠を伴っての命令ができないことに課題がありました。大野知事は、こうした事案の対策として国に感染症法の改正を求めることを表明されています。私も全国一律に適用される法改正が望ましいと考えますが、残念ながら肝心の国はといえば、「終息したときには、特措法の改正も含めて政府の対応をしっかり検証していく必要がある」と、当時官房長官であった菅総理が発言しており、早期の改正は期待できず、改正するかどうかも不透明な状況です。
さきに述べた事案の再発防止だけでなく、知事は感染拡大の状況に合わせて様々なメッセージを県民に向けて発信しています。しかし、その多くは言ってみればお願いベースの話であり、その要請を守るかどうかは県民の良識に託されています。これに対し、条例を制定し、罰則はなくとも、例えば県民や事業者の責務は、感染予防を行い、蔓延防止に必要な調査や対策に協力することと定まっていれば、知事の発信も、県の政策もより重みを増します。
そのほかにも、例えば彩の国「新しい生活様式」安心宣言に協力する店舗にマスクを着用しない客が来るとします。現時点では、その客に対して法的根拠を持って拒否することはできません。しかし、条例が制定され、仮に努力義務規定だとしても明文化されれば、店側もマスクを着用しない客にも対応しやすくなります。条例制定は、こうした蔓延防止に協力する事業者を守ることにもつながります。
大野知事は、参議院の議員立法の約1割を起案、提出した時期もあるとのことで、全国の知事の中でも立法に精通していると承知しております。知事就任から1年が経過し、県政に不可欠な条例制定、改正は多数行ってきているものの、国でいうところの政策立法、すなわち県における政策条例の制定はこれからです。
新型コロナ対策を県民とともに戦略を持って推進するためにも、是非とも新型コロナウイルス感染症対策に関する条例を制定すべきと考えます。
以上、知事の御所見を伺います。

A 大野元裕 知事
新型インフルエンザ等対策特別措置法第4条には、事業者及び国民の責務を努力義務とすることについて明確に規定があります。
他方、議員御指摘のとおり、戦略を担保する法的な根拠は必要であり、努力義務を規定する条例の制定は有効な選択肢の一つと考えます。
しかしながら、国民の権利を制限する可能性がある事項を含め、県知事として新型コロナウイルス感染症に対応するためには、法改正を検討するべき部分は多岐にわたっており、改正には、法規範に則った包括的な見直しが適切と考えております。
例えば、対策実施に関し必要な協力を定めた特措法第24条第9項に基づき「酒類の提供を行う飲食店」及び「カラオケ店」の営業時間の短縮を要請しましたが、本項の立法の趣旨は営業や個人の行動制限を想定するものではなく、本来は、あくまでも対策実施に向けた一般的な協力要請であり、検討が必要と思います。
また、特措法第3条第1項においては、国は「国全体として万全の体制を整備する責務を有する」と規定しているにもかかわらず、事業者への協力要請に対する補償の問題や、協力要請に応じない場合の罰則などの実効性を担保する規定がありません。
また、宿泊療養施設への入所の勧告など、感染症のまん延防止に実効のある措置が定められていないばかりか、そもそも宿泊療養施設の規定は見当たりません。
こうした様々な課題を抱える法体系を抜本的に見直すことが必要であり、見直しを行った上で、更に地域で定めるべき事項がある場合には、議員御指摘の条例を制定するべきと考えております。
県といたしましては、まず、国に対し法体系の抜本的な見直しを強く求めてまいります。

再Q 井上航 議員(県民)

 先ほどの答弁をお伺いしていますと、まずは法改正を促していく。条例の必要性は否定しないけれども、まずは法改正を促して、その上でカバーできない部分を条例でというようなお考えだったと思います。
 一方で、東京都議会の例を質問の中でも出しました。議員提案による改正というのは見送りになったと聞いておりますが、執行部提案の東京都新型コロナウイルス感染症対策条例というものは存在しています。東京都は条例を持っています。また、同じく例に出しましたが、千葉市では今やっている議会で条例提案がされておりまして、この千葉市の条例を提案した熊谷千葉市長は、千葉県知事選挙に立候補を表明されている方です。仮に熊谷氏が千葉県知事に就任した場合、千葉県にも同様の新型コロナ対策条例が提案されることは想像にかたくないのではないかなと推察いたします。
 そのような状況になると、埼玉県はこの対策条例制定の動きから遅れてしまうのではないかというふうに考えます。他県との連携や足並みをそろえること、知事が大切にされている視点かと思います。
 こうした隣接都県の状況を考慮して、知事には踏み込んだ判断をしていただきたいと思います。再度、御答弁をお願いいたします。

再A 大野元裕 知事

議員お考えの条例の制定について、私は否定していません。また、法律改正を優先させるべきである、まさにその通りの考え方でございます。
それについて、2点ご説明をさせていただきます。
まず1点目は、後段の御質問の、他県との連携の関係について、9都県がすでに条例を制定しております。これらのうち条例を制定している首都圏の都県については、他県との連携を図る上で、条例がなければできない項目は一つもないと現時点では考えております。
他方で、条例は法律を上回ることがないのが一般的な理解でございまして、その意味では、特措法の第4条で努力義務等が規定されていますので、それぞれの地域の状況によって、必要かどうかという観点は当然あると思います。ただ、その一方でまず法律がある、ということが前提です。
2つ目に、今回の法律の運用に関しては大きな困難がございました。
特措法第24条第9項に関しては、本来は、都道府県知事が、当時の新型インフルエンザ感染症等の対応を行う体制を組む上で、一般的な協力を求めるものであり、本来は個人や団体の権利を自粛させる、例えば今回の営業時間の短縮を求めるといったものに使うことは想定されていませんでした。
その想定は、第45条第2項という緊急事態宣言が出された上で行われるべきもので、同項に紐づけされた施行令の11条に、それぞれこういった業界には要請ができると紐づけられています。第24条第9項にはありませんでした。
ところが、現場の都道府県知事として、これをどうしても使わなければいけない状況が、緊急事態宣言前に出たために、本来の法律と違う運用がなされました。
ところが、その後、その運用を政府は後追いで承認しました。法律と政令と現場の解釈と条例が食い違っていました。だからこそ、今回は法律を改正することが妥当であり、改正しないといつまでたっても、現場の混乱は収まらない、と私は考えております。
ですから、私は、幾度にも渡り、大臣に対し、また、知事会等も通じて、法律が必要であると申し上げているところですので、御理解を賜れればと思います。

再々Q 井上航 議員(県民)

法改正をしていくことが妥当だというそのお考えは、今の再質問に対する答弁で非常によく分かりました。また、この間、知事会であるとかアクションを起こしていただいていることも承知しておりますが、先ほど質問の中で例示したように、当時なのかもしれませんが、政府はこの終息が終わった後というふうにいっております。そんな余裕はないと思います。
知事もこれまでアクションを起こしていただいておりますが、知事がそこまで早く改正しなければ対応がならないというふうにおっしゃっていただいておりますので、それを改正を実現するに当たって、知事は今後どのように活動なさるのか、最後にお伺いしたいと思います。

再々A 大野元裕 知事

第24条第9項の話を先程申し上げましたが、政府に法の解釈権はあり、今、法の解釈を変えた、というところだと私は理解しております。
当初との整合性を含めて、やはり、早期に現場の混乱を可能な限り避けるよう対応するのが、政府の役割であり、都道府県知事はそれを受けて、万全の体制を敷くのが役目だと思っています。
まずは、現場の当面の対応を優先させなければいけませんが、その一方で粘り強く政府に対しては、法律そのものの改正を求めたいと思っています。
同様に、第24条第9項だけではありませんが、療養施設の規定等もしっかりと法に定めることをお願いしていきたいと考えております。

ワクチン接種について

Q 井上航 議員(県民)

午前中の荒木議員の質問で明確になった部分が多かったため、私は接種の優先順位の一点に絞って伺います。
県は、9月定例会で補正予算を編成し、冬のツインデミックを避けるべく、65歳以上の高齢者などリスクが高い方々に対してインフルエンザワクチン予防接種を無償化し、優先接種を行いました。
それでは、新型コロナウイルスワクチンの優先順位についてはどのように考えているのか、保健医療部長にお伺いします。

A 関本建二 保健医療部長

ワクチン接種の優先順位についてでございますが、厚生労働省が示すワクチン接種の実施体制の中で、接種順位の決定は国が行うこととされています。
国の新型コロナウイルス感染症対策分科会の中間とりまとめなどにおいて接種順位の考え方が示されています。
ワクチン接種の目的は、新型コロナウイルス感染症による死亡者や重症者の発生をできる限り減らし、結果として新型コロナウイルス感染症のまん延防止を図ることとしております。
当面確保できるワクチンの量には限りがあり、その供給も順次行われる見通しです。
このため、接種目的に照らして、ワクチン接種順位については、まず、新型コロナウイルス感染症患者に直接医療を提供する施設の医療従事者等、次に高齢者、基礎疾患を有する者を上位に位置付けるとされております。
今後、国において具体的な範囲などについて検討するとされておりますので、県としては、こうした国からの情報を基にワクチン接種に向けた準備を進めてまいります。

離職者の介護分野への就職支援について

Q 井上航 議員(県民)

厚生労働省によると、完全失業者数はコロナ禍の長期化に伴い徐々に増え、令和2年12月時点で215万人を超えており、今後の推移が大いに心配される状況です。一方で、県内の高齢者及び障害者施設において5人以上の感染者が出たケースは、私が調査した11月19日時点で19件発生しています。また、同時点で県が把握する全陽性者7,230人のうち、214人の施設職員が陽性と診断されています。これだけ多くの施設職員が一時的に就業不可となるのは、施設運営上、大変困難な状態となります。県はこうした状況に備えるため、介護施設におけるクラスター発生に備えた互助ネットワークで同法人、また法人を超えての職員派遣を行っております。
そこで、まず本題に入る前に、現在までの登録状況、派遣実績を伺います。また、その現状は想定どおりの状況か伺います。もし運用上の課題が見えてきているならば、その点も併せて御答弁願います。
さて、とはいえ、新型コロナウイルスとの戦いは長期戦です。私は、互助ネットワークをしっかりと機能させた上で、県内で働く介護職員の就業者数全体を増加させる必要があると考えております。そのような中で、厚生労働省はこうした離職者増加と介護職員不足を同時に解決すべく、来年度予算の概算要求として、離職者への介護分野への就職支援パッケージに7.4億円を要求したと聞き及んでおります。訓練修了者への介護職就職支援金20万円の貸付けを実施し、2年間以上継続して従事した場合には返済を免除するというスキームが検討されています。
県にはこうした国の動向に注視して、離職者への介護分野への就職支援を積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
また、その上で、この事業の肝は、他職種の方に介護職員の特色ややりがいを知ってもらうこと。また、あくまで一時的な就業と考える方もいる中で、いかに継続して就業してもらえるかどうかです。特に離職の多い分野であるため、貸付免除期間の2年間も決して短い期間ではありません。短期離職が続けば、貸付けだけ残る悪循環になりかねません。そのためにも埼玉県が取り組んできた介護人材の確保、定着の推進に関する事業で培ったノウハウをリンクさせることで、安定した就業につなげられると考えますが、いかがでしょうか。
以上、福祉部長の御所見をお伺いいたします。

A 山崎達也 福祉部長

「介護施設におけるクラスター発生に備えた互助ネットワークの登録状況と派遣実績、運用上の課題」についてでございます。
現在までの介護施設の登録状況と派遣実績ですが、これまで309施設の登録があり、1施設から派遣要請がありました。この施設に対し、11の施設から11名の職員を派遣したところです。
運用上の課題についてですが、派遣された職員が元の施設に戻る際に、PCR検査を受けて陰性であることを確認し、安心して復帰したいという要望があり、急遽その体制を整えたところです。
現時点では派遣は想定より少なく1施設に留まっておりますが、今後実績を重ねることにより様々な課題が見えてくると思いますので、適切に対応し、ネットワークが効果的に機能できるように努めてまいります。
次に、国の動向を注視して、「離職者への介護分野への就職支援」を積極的に取り組むことについてでございます。
本県では、令和7年度には約1万6,000人の介護職員が不足することが見込まれるため、議員お話の国の支援策の活用を検討するなど、離職者への介護分野への就職支援に積極的に取り組んでまいります。
次に、県が介護人材の確保・定着の推進に関する事業で培ったノウハウをリンクさせて離職者の安定した就業に繋げることについてでございます。
新型コロナウイルスの影響による離職者の増加と介護人材の不足という二つの課題を同時に解決するためにも、離職した方に再就職先として介護職に関心を持っていただき、就職後も定着を支援していくことは重要です。
介護の仕事は、利用者や家族から感謝され、やりがいがあり、スキルアップにより資格取得の道も開かれ、職としても安定しています。
今年度は、県の福祉人材センターやハローワーク、市町村の生活困窮者支援窓口などと連携して、離職した方に、こうした介護の魅力をPRし、介護職への就職を促しているところです。
他の職種から介護職への転職に不安を持つ方に対して、県では、研修から就職まで一貫して支援する事業に取り組んでおり、こうした未経験者向けのノウハウを生かして支援してまいります。
就職支援を丁寧に行ってミスマッチを防ぐとともに、就職した後も就労状況を確認し、仕事の悩みの相談に対応するなどフォローアップを行い、離職者の安定した就業につなげてまいります。

県南西部の交通政策について

和光版MaaSについて

Q 井上航 議員(県民)

県南西部の交通基盤はこれから大きく変化を遂げようとしています。まず現状を整理すると、東京外環自動車道については、平成30年6月に東関東道まで千葉区間が開通し、東名高速道までの大泉工区も着々と延伸が進んでいるところです。また、この後詳しく取り上げますが、国道254号和光富士見バイパスが完成した暁には、川越から和光まで沿線市町を一気通貫し、外環道和光北インターチェンジから高速道にアクセスできます。そして、国道254号バイパスが都内へ向けて延伸したその先に目を向けると、都県境に都営三田線の西高島平駅があるという状況です。
さて、こうした現状を踏まえて、質問に入ります。
MaaSとはMobility as a Serviceの略であり、この質問で取り上げる和光版MaaSとは鉄道、高速バス、路線バス、コミュニティバス、自動運転車両等の連携によって、地域拠点間を接続する自動運転サービスが一つの軸線となり、既存の公共交通サービスと有機的につなげることで地域住民の移動の利便性向上に資する取組のことです。
このうち、地域拠点間を接続する自動運転サービス導入事業は、内閣府地方創生推進事務局の未来技術社会実装事業のうち、国土交通省と連携した自動運転サービス導入支援事業に応募し、全国の7地区うちの一つとして採択されています。和光版MaaSは、和光市における地域の足を確保するという視点を超えて、県南西部の交通政策に大きく寄与するものと考えております。
そして、その実現には、交通政策、道路政策、警察行政などを管轄する県の協力なしにはなし得ません。また、あと数マイルプロジェクトや埼玉版スーパー・シティプロジェクトの実現を目指す大野知事にとっても、大いに関心のある取組だと考えております。
そこで、埼玉県におけるMaaS事業の先駆けとなるこの事業についての知事の見解をお聞かせ願えればと存じます。

A 大野元裕 知事

MaaSは、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせて一つの移動サービスと捉え、ICTを活用して様々な交通手段を継ぎ目なく円滑につなぐという考え方です。
議員お話しの和光版MaaSはこうした考え方を取り入れ、和光市駅と東京外郭環状道路の新倉パーキングエリア間に自動運転車両を導入することを核として、様々な移動手段をつなげていく取組と理解しています。
この取組は、自動運転の実証実験にとどまらず、社会実装まで進めるものであり、また、都市部におけるMaaSの実効性のある取組として、国の未来技術社会実装事業にも採択されるなど、県内でも先駆けとなる意欲的なもので、私も大変注目をしているところでございます。
和光市は、新倉パーキングエリア周辺において東京外郭環状道路と国道254号和光富士見バイパスが結節するほか、和光市駅には東武東上線と東京メトロが乗り入れ、都心方面へのアクセスに優れています。
しかし、産業集積が進む新倉パーキングエリア周辺と和光市駅をつなぐ公共交通がないことから、和光版MaaSは、自動運転の導入により、このミッシングリンクの解消を図ろうとするものです。
また、高速道路を使った広域交通を強化するため、新倉パーキングエリアにおいて成田空港などに向かう高速バス等のターミナル機能を構築する構想とも一体として取り組むものであります。
これらの取組が実現されれば、地域住民などの移動手段の確保といった地域交通の課題解決に加え、県南西部での更なる経済の活性化が期待できます。
県といたしましても、和光市が設置した協議会に道路や警察といった関係部局を参画させるなど、事業の実現に向け、できる限りの協力を行ってまいります。

国道254号和光富士見バイパスの進捗状況等及び都内方面への延伸について

Q 井上航 議員(県民)

国道254号バイパスについては、未開通区間の工事を鋭意進めていただいており、一日も早い開通を望む声がますます高まっております。そこで、国道254号和光富士見バイパスの進捗状況と今後の見通しについて伺います。
また、都内方面への延伸については、令和2年3月に都市計画決定がなされ、知事をはじめとする関係部局の御尽力に心より感謝申し上げます。都内方面への延伸は、バイパス全体の整備効果を最大限に発揮することができ、県南西部地域のみならず本県全体の活性化をもたらすことになります。
また、先ほど述べた和光版MaaSの効果を引き出す意味でも延伸は不可欠であり、延伸区間の早期事業化が望まれております。つきましては、都内方面への延伸について今後の取組をお伺いいたします。

A 中村一之 県土整備部長

このバイパスは、外環道から国道463号を結ぶ延長約6.9キロメートルの県内道路網の骨格を形成する幹線道路であり、これまでに外環道から県道朝霞蕨線までの約2.6キロメートルが開通しております。
未開通区間の約4.3キロメートルのうち、国道463号から県道さいたま東村山線までの約1.4キロメートルを先行的に開通できるよう、現在、用地買収及び工事を集中的に進めております。
この区間の用地買収率は99%となっておりますが、残る用地の取得が難航していることなどから、令和3年度に予定していた部分開通が令和4年度以降となる見込みでございます。
今後も残る用地の取得に努めるとともに、鋭意工事を進め、早期の部分開通に向けて重点的に取り組んでまいります。
また、このバイパスの都内方面への延伸については、令和2年3月に外環道から県道練馬川口線までの約1.6キロメートルを都市計画決定いたしました。
現在、バイパス沿線で計画されている土地区画整理事業との一体的な道路整備等について、地元和光市と調整を進めております。
今後も引き続き、和光市と連携を図りながら、早期の事業化に向け、取り組んでまいります。

新倉PAの拡張について

Q 井上航 議員(県民)

新倉PAは外環道で唯一のパーキングエリアです。内回り・外回り供用の小さなエリアでガソリンスタンドはなく、商業施設もコンビニエンスストア1軒しかありません。外環自動車道の東名高速への延伸により、開通すれば和光北インターから15分程度で東名高速に到達できます。開通時には新倉PAのニーズは一層向上し、単なる規模拡大では対応し切れないと考えています。また、東名への開通により、新倉PAは東日本の交通拠点となるポテンシャルを秘めております。羽田空港・成田空港方面、関越・東北・常磐道方面への交通のハブとなり得ます。
和光版MaaSの推進、国道254号バイパスの本線と延伸区間の完成に加えて、和光パーキングエリアの拡張は県南西部の交通政策を進展させる意味で重要な事業であり、和光市では拡張についての検討を始めています。
そこで、新倉PAの拡張について、県土整備部長の御所見を伺います。

A 中村一之 県土整備部長

新倉パーキングエリアは、外環道に現在設置されている唯一の休憩施設でございます。
外環道は、国とネクスコ東日本などが進めている関越道と東名高速を結ぶ延伸工事が完成すれば、利便性が向上し、新倉パーキングエリアの需要がさらに高まることが予想されます。
このため、和光市では、新倉パーキングエリア周辺の地域振興に向けて、国、県、ネクスコ東日本、学識経験者により構成される検討会を立ち上げております。
検討会では、パーキングエリアに隣接した未利用地に商業施設などを誘致し、地域振興拠点として整備することや、パーキングエリアの拡張について協力して検討していくこととしております。
新倉パーキングエリアの拡張は、ドライバーに快適な休憩施設を提供するとともに、和光市の地域振興にも寄与すると考えております。
県では引き続き、国道254号の整備を進めるとともに、新倉パーキングエリアの拡張について、関係機関と連携を図ってまいります。

県内国有施設の災害時避難所としての活用について

Q 井上航 議員(県民)

我が国の災害時の避難所は、体育館や公民館に避難、集団で雑魚寝という運用が長年にわたって行われてきました。しかし、高齢者や障害者、乳幼児などにとって負担は大きく、また、プライバシー等の観点から女性にとっても課題が多いのが現状です。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を経て、避難所の在り方にも変化が生まれました。世帯間での間隔の確保、発熱などの症状がある避難者のための専用スペースの設置などを考慮する必要が出てきました。また、プライバシーの確保についても考慮されなければならないという認識がようやく広がってきました。
さて、私の地元和光市には、宿泊機能を有する国有施設が多数所在しています。私は、以前よりこれらを災害時に活用できないかと考えておりました。しかしながら、かねてより国の協力は得られにくいとの話を伺っておりました。そのような中、新型コロナウイルス感染症の経過観察施設として、和光市の国立保健医療科学院、税務大学校和光校舎が活用されました。そのほか、嵐山町の国立女性教育会館についても、実際の利用はなかったものの宿泊療養施設として指定されたことは、国有施設の災害時利用の活路が開かれるきっかけになったと考えております。
こうした中、国は、本年5月に各省庁に所有する施設のリストアップを指示し、6月にはリストとともに県危機管理防災部宛てに市町村に対して情報提供し、各施設と連携、調整を図った上で取り組みいただきたい旨を周知していただきたい、また、必要な場合には、各市町村における避難所の確保が円滑に進むよう支援していただきたいとの文書が示されたと伺っております。
以上を踏まえ、次の三点を質問します。
国が示した研修所、宿泊等の貸出しし得る施設等のリストによると、埼玉県内にはどれくらいの対象施設があるのか、そのうち市町村との連携、調整の結果、何件の施設が活用可能となる見通しか、主な施設を例示して答弁願います。そして、活用可能となった場合、市町村と各施設で災害時協定のようなものを締結する流れとなるのか、具体的に進捗状況を含めてお示しください。
以上、危機管理防災部長の答弁を求めます。

A 森尾博之 危機管理防災部長

国が示した「研修所・宿泊施設等の貸出し得る施設等のリスト」にある県内の対象施設の数でございますが、7市町にある9施設となっております。
次に、そのうち何件の施設が活用可能となる見通しか、についてでございます。
9施設全て市町との協議が整っておりまして、活用可能となっております。
主な施設といたしましては、和光市の税務大学校和光校舎及び国立保健医療科学院、朝霞市の労働大学校、戸田市の日本下水道事業団研修センターなどでございます。
次に、活用可能となった場合における流れと具体的な進捗状況でございます。
県では、国有施設等の施設管理者と協議が整った場合には、利用できる施設の具体的な範囲や、利用する際の連絡調整方法などを取り決めた協定を締結するよう市町村に働き掛けております。
和光市にある国立研究開発法人理化学研究所以外の8施設につきましては、既に災害時の施設利用に関する協定の締結に至っております。
なお、和光市は理化学研究所と地域振興や防災対策等に関する包括的な相互協力協定を締結しておりまして、その枠組みの中で災害時の施設利用について協力をいただくと伺っております。
宿泊機能等を有する国有施設を活用することは、避難所の良好な生活環境の確保につながるものと考えております。
リストに掲載されていない国有施設につきましても、市町村の意向を踏まえて国に対して協力を働き掛けるなど、県として積極的に支援してまいります。

消防団員の確保について

Q 井上航 議員(県民)

日夜地域の安全のために御尽力していただいている埼玉県下の消防団ですが、年々消防団員数が減少しています。県は、消防団応援プロジェクトや消防団応援の店などの施策に取り組んでいますが、令和2年4月時点での条例定数に対する充足率は89.2%と、なかなか歯止めがきかない状況です。
その中で、2017年3月改正道路交通法が施行され、準中型免許が新設されました。改正前に普通免許を取得していた者は経過措置として3.5トン車両も運転可能ですが、改正後に普通免許を取得した者は3.5トン以上の車両は運転できなくなってしまいました。消防団が保有する消防車両には、対象となる3.5トン以上の車両も多く、特に新入団員が2017年以降に普通免許を取得した場合は、自身の所属する分団所有の車両を運転できないケースも発生します。
こうした状況の中、団員確保に取り組む市町村では、準中型免許取得に係る費用の一部を補助する制度を導入している事例があります。県消防課に確認したところ、令和2年度時点で16市町村が制度を導入しており、私の元には補助制度のない市町村の消防団からも制度創設を願う声が届いております。
この一般質問を行うに当たり、担当課とも意見交換を重ねてきました。例えば、平成29年から令和2年までの4年間で制度を有する16市町村の助成件数は合わせて28件と決して多くありません。それならば、消防広域化を推進するという立場でもある県が、県の制度として導入できないかと提言もさせていただきました。
確かに今の現役団員を見ていれば、この準中型免許の新設は大きな問題ではないのかもしれませんが、この問題が表面化するのは、次の世代が参入しようとしたときです。今、県は学生消防団員の確保に取り組んでいますが、彼らがいざ社会に出て消防団員として活動することを検討するときに、消防ポンプ自動車を運転できないことを理由に入団を断念する者が生じるおそれもあります。
また、車両のほうを3.5トン未満に切り替えればよいという発想があるかもしれませんが、県内市町村の消防団が保有する909台の消防車両うち、準中型免許を必要とする車両は668台に上り、その全ての車輛を入れ替えるには多額の費用と期間を要することとなり、現実的ではありません。
そこで、山梨県の取組を紹介したいと思います。山梨県も助成制度がある市町村ばかりではなく、半数を超える市町村には助成制度はありません。しかし、山梨県は、平成30年にまとめた消防団員確保対策検討会報告書の中で「市町村に任すだけでなく、県として策を講じる必要がある」と述べています。山梨県ではそうした問題意識の下、平成31年から埼玉県でいうところの消防団応援の店の仕組みを活用し、県と自動車教習所で教習料金の割引について申合せを締結し、消防団員であれば、県内教習所の一部で準中型免許取得の際の割引を受けられるようにしています。この取組は全国知事会の先進政策バンクでも紹介されています。
この先の消防団確保の障害となりかねない準中型免許取得に関する問題について、埼玉県としてもしっかり検討していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。この準中型免許取得の支援を含め、消防団員確保に関する危機管理防災部長の御所見を伺います。

A 森尾博之 危機管理防災部長

県では平成29年3月の準中型免許の新設に合わせ、全国の都道府県とともに消防団員の運転免許取得経費に関する財政支援について国に要望を行いました。
その結果、市町村が消防団員の準中型免許の取得に対しまして助成を行った場合、地方財政措置が講じられることとなりました。
現在、助成制度を設ける市町村は少しずつ増加している状況にございますが、免許の新設から3年近く経過いたしますので、市町村に対しまして、改めて助成制度の導入を働き掛けてまいります。
また、免許の取得費用自体を抑えるため、消防団応援の店に登録する県内17の自動車学校に、準中型免許取得の際に必要となる教習料金の割引サービスを実施していただいております。
今後、協力施設の増加を図るとともに、割引率などの充実について自動車学校にお願いをしてまいります。
議員御指摘のとおり、3.5トン以上の車両を運転できない団員が増えていきますと、活動に影響を及ぼすことが懸念されます。
消防団の皆様には、災害現場での活動や火災予防の広報、住民の避難誘導など幅広く重要な役割を担っていただいております。
まさに、将来にわたり「地域防災力の要」として欠くことのできない存在でございます。
県といたしましては、準中型免許の取得の支援を含め、どのような取組が消防団員の確保につながるのか、市町村や埼玉県消防協会などから意見を伺いながら検討してまいります。

話題の人気アニメと連携した観光施策について

Q 井上航 議員(県民)

今話題といえばやはり「鬼滅の刃」です。漫画やテレビアニメのヒットもさることながら、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、本日時点で興行収入が「タイタニック」を超える国内歴代2位の数字をたたき出す大ヒットを記録しています。また、観光にも波及効果は出ていて、例えばJR九州が映画とコラボしたSLの運行を行えば、ファンが大勢集まっています。また、主人公の竈門炭治郎の竈門という名前から、福岡県太宰府市にある宝満宮竈門神社や大分県別府市にある八幡竈門神社には、聖地巡礼のごとくファンが訪れています。
さて、埼玉県には関係がない話とお思いの方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。主人公の竈門炭治郎の出身地は、東京、山梨、そして埼玉県秩父市の3都県の県境にある雲取山であると、作品の公式設定になっています。雲取山は奥多摩から登るルートが知られていますが、登山後、三峰神社を経て西部秩父に下りてくるルートが案内されています。
雲取山は上級者向けの登山なので、安易な登山については注意喚起が必要ですが、こうした「鬼滅の刃」ブームを上手に生かして、秩父地域や埼玉の観光に生かすことはできないでしょうか。
また、秩父には竈三柱神社もございます。作品中に登場する「鬼殺隊」という人間を鬼から守るために作られた組織がありますが、その中でも最上位の実力を持つ九名は「柱」と呼ばれています。「竈」に加えて「柱」の名前も入った竈三柱神社が、注目を集めるかもしれません。
加えて、主人公の敵である鬼にも熱心なファンがいます。この鬼に着目すると、嵐山町に鬼鎮神社がございます。副議長の地元でもあります。この鬼鎮神社でございますが、鬼を祀る神社は全国に四社あり、関東圏では唯一であるとのことです。
県には、アニメを観光や地域振興に生かしたノウハウもあると存じます。こうした地域の観光資源となり得るスポットについて、県が後押しする形で観光に生かせないでしょうか。
以上、産業労働部長に伺います。

A 加藤和男 産業労働部長

「鬼滅の刃」ブームを上手に生かして秩父や埼玉の観光に活かすことについてでございます。
アニメファンは、作品の世界観を体験するためにゆかりの地を訪れたり、コスプレを楽しむために登場シーンとよく似た場所を訪れるなど、アニメをきっかけとして地域を訪ね、楽しんでいます。
議員御提案の雲取山は主人公が生まれたとされ、日本百名山です。
一方、雲取山の登山ルートは上級者向けで、登山者に対して安全確保に係る注意喚起がなされており初心者が容易に登れる山ではございません。
そこで、あたかも主人公の出身地雲取山にいるような気分をパソコン上で味わっていただけるよう、バーチャル背景として使用することができる魅力的な雲取山の写真を県観光サイトに提供してまいります。
それにより埼玉県への関心を高めていただくとともに、登山を検討される方への安全確保の呼びかけと併せて、秩父の雲海や氷柱をはじめとした山麓に広がる豊かな自然や多様な観光スポットを情報発信することで実際の秩父地域や埼玉の観光振興につなげてまいります。
次に、地域の観光資源となり得るスポットについて県が後押しする形で観光に活かすことについてでございます。
県では、アニ玉祭においてアニメによるまちおこしで活躍するキーマンを招いたパネルディスカッションを開催するとともに、ノウハウの共有を図るセミナーを県内全市町村に対し実施しております。
嵐山町の鬼鎮神社は畠山重忠が菅谷館の鬼門除けとして金棒を持った鬼の像を奉納したのが始まりとされ、全国でも珍しい鬼を祀る神社です。
人気アニメに関連付けて地域の資源を活用する際には、地元の理解や地域の取組との連携が重要となります。これまでのノウハウを生かしたSNSによるPRなどについて、地元嵐山町と共に検討をいたします。
本県観光の強みであるアニメを生かしながら地域の可能性を引き出し、魅力をより多くの方に知っていただけるよう積極的に取り組んでまいります。

集中管理車更新基準の見直しについて

Q 井上航 議員(県民)

ここ数カ月ワイドショーを中心として高級公用車問題などと称して、様々な都道府県の知事車や議長車などの公用車の実情がテレビで取り上げられています。埼玉県についても複数回取り上げられ、つい先日は御承知のように長時間の特集が組まれたばかりです。それらの報道は、主にセンチュリーに代表される特に価格帯の高い車両を購入したことに対して、税金の無駄遣いではないかという切り口で取り上げられています。そのため、就任後、ホンダのレジェンドに更新した大野知事の判断は、好意的に受け取られているように感じております。
さて、埼玉県では、知事車や副知事車は集中管理車として会計管理者が更新や管理を担っております。そして、更新に当たっては、昭和55年に定められ必要に応じて改正されてきた集中管理車更新基準に基づき、更新時期や更新車両の選定を行っております。担当課によると、この基準はあくまでも目安であり、令和2年3月31日の知事会見でも、知事は「県内経済の振興や環境性能の観点も含め検討された結果、レジェンドを選定することになった」と述べています。
一方で、この更新基準は議長車等の選定の際にも参考とされております。あくまで目安であるとはいうものの、さきの報道の中では議会事務局の発言として、「更新前の車両と総排気量が同程度、又は総排気量5リットル程度の国産の乗用車という基準に合致するものは、センチュリーのみだった」と回答しており、この更新基準の記載内容が議会の決定にも影響を与えていることを物語っております。
私は、こうした更新基準を定めて運用している点は高く評価しておりますし、今後も継続されるべきと考えております。ただし、今回、大野知事が重視したとされる県内経済の振興や環境性能、そしてそのほかにも安全性や職務環境についても重要な基準と考えますし、価格帯についても県民の理解が得やすい範囲で選定されるよう更新基準に定められるべきだと考えております。
何より車の技術開発は日進月歩で、例えばハイブリッド車の出現によって総排気量をもって馬力は測れなくなってきております。また、欧州をはじめ中国、アメリカカリフォルニア州などが、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を2030年から2040年にかけて禁止する方針というのが世界の潮流となっており、昨日の報道では日本政府も近く同様の方針を表明するとのことでした。
直近でこの更新基準の改正を行ったのは、平成25年と聞いております。さきに述べたように、平成25年以降の様々な社会情勢に合わせて更新基準の改正を行うべきだと考えますが、会計管理者の御所見を伺います。

A 板東博之 会計管理者

集中管理車更新基準は、公用車が税金で購入されることを踏まえ、安全で効果的な運行を確保するとともに、車両更新の客観性を担保するため更新の時期と更新車種の考え方を定めております。
まず更新時期は、車両の使用年数や走行距離を調査した統計資料などを基に、使用頻度の高い知事車は「初度登録から5年以上経過」もしくは「総走行距離が8万キロメートル以上」としております。
また更新車種については、単なる移動手段としての機能だけではなく、車内で資料の確認や打合せを行う必要があるなど使用目的を考慮し、候補車を絞る目安として総排気量を定めております。
さらに安全性や価格などの経済性、県内経済の振興などにつきましては、購入する際に、車の性能だけではなく、これらの要素も総合的に比較検討した上で、導入車種を選定しております。
車の性能は、技術革新に伴い日々向上していることから、更新基準についてはこれまでも車両の更新時期の延長や環境性能の規定の強化などの改正をしてきております。
今後も、車の性能の向上や社会情勢などの変化を的確に捉え、御指摘も踏まえ、適宜、更新基準を見直してまいります。

報酬減額と基金への積立てについて

Q 井上航 議員(県民)

さきの9月定例会で知事から提案された「知事等の給与の特例に関する条例」、並びに議員提案の「埼玉県議会議員の議員報酬及び期末手当の額の特例に関する条例」については、一会派が反対とし賛成少数という結果になりました。
その委員会審議の反対討論では、知事が「削減分を新型コロナウイルス対策推進基金に組み入れること及び議員が使途に希求することについて、公職選挙法の規定している寄附行為と見られかねない懸念が生じる、ないし危惧が生じる」との発言がありました。
一方、その後の10月28日及び29日の報道によると、この反対討論を行った会派から、10月22日に出された埼玉県人事委員会勧告に基づき、期末手当等の引下げを行う場合、削減額を新型コロナウイルス対策推進基金、又は財政調整基金に積み立てることを要望したと報じられています。
この報道に対して、9月定例会の経緯を御存じの方からは、「さきの反対討論で指摘したことを自ら行っているように見えるが違うのか」といった声が届けられることもありました。私にはその真意ははかりかねますし語る立場にもございませんが、限られた財源を新型コロナウイルス対策に充ててほしいという思いは、同一なのではないかと思います。
このような中で私が危惧することは、今後、新型コロナウイルス感染症が更に深刻化した場合、改めて議員報酬をも財源としなければならない場面が訪れるかもしれないということです。そのためにも公職選挙法に抵触するか否かを明確にしておくことで、いざそのような危機的状況になった際に改めて財源確保の議論がしやすくなると考えます。
そこで、条例に基づき知事が給与ないし議員が報酬を減額し、その減額分を基金へ積み立てること、これは公職選挙法の寄附行為に当たるのか、県選挙管理委員会委員長の見解を伺います。

A 岡田昭文 選挙管理委員会委員長

公職選挙法第199条の2の規定により、知事や議員から選挙区内にある者に対し、寄附をすることは禁止されております。
この規定は、当該選挙区を包括する都道府県に対する寄附にも該当し、同様に禁止されることとなります。
御質問の「条例に基づき、知事が給与ないし議員が報酬を減額し、その減額分を基金へ積み立てること」は公職選挙法の寄附に当たるのか、国の見解を改めて確認いたしました。
国の見解は、条例に基づき知事の給与等が減額された場合、その減額分の請求権は知事や議員にはないことから寄附には当たらず、また、それをどのように活用するかは、公職選挙法が規制するものではないと解されるとのことでした。
こうした国の見解を踏まえ、選挙管理委員会といたしましては、条例に基づき知事が給与ないし議員が報酬を減額し、その減額分を基金へ積み立てることは、法的には、公職選挙法第199条の2に規定する寄附には当たらないと考えます。