鉄道の利便性向上について

秩父鉄道を軸とした県北地域の活性化について

Q 柿沼貴志 議員(県民)

「あと数マイルプロジェクト」については、大野知事就任以来、我が会派の平松議員をはじめ多くの議員から質問がありました。このプロジェクトは将来の人口需要や新たな技術の動向などを十分に把握した上で、公共交通及び道路網の更なる利便性向上策について、これまでの経緯なども踏まえつつ検討を進めるものであります。限られた予算の中で、県境路線を含めた効果の高い部分について重点的に整備を進めるとしています。
重点路線として埼玉高速鉄道、舎人ライナー、都営大江戸線、多摩都市モノレールなど、東京都と隣接する県南地域の路線が挙がっています。もちろん、東京からの人の流れが重要であることは間違いありません。一方で、私が住んでいる県北地域に目を向けると、群馬県など北関東からイベントや観光に訪れる方が増えています。県境という意味においては、北関東からの人の流れも埼玉県にとって重要であると考えます。
昨年の9月定例会において、我が会派の江原議員の質問に対して知事も答弁されておりますが、県北地域は国内外から高い注目を集めています。熊谷市で開催されたラグビーワールドカップ2019は、大成功に終わりました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、残念ながら現在トップリーグは中止となっておりますが、パナソニックワイルドナイツの本拠地移転も予定されており、今後もラグビー人気は続いていくと確信しています。
また、新1万円札の新たな顔に決まった深谷市出身の偉人、渋沢栄一翁の大河ドラマのスタートは、いよいよ来年に迫りました。
私の地元行田市には、昨今、県内で初めて特別史跡に指定され、日本遺産の一部となった埼玉古墳群もありますし、令和4年には(仮称)ふかや花園プレミアムアウトレットのオープンも予定されております。
私は、波に乗る北部地域の更なる活性化に向け、より大きな人の流れを生み出すためにも、県北地域の鉄道の利便性向上に力を入れることが重要だと考えます。地元の行田市の知人と話していても、「秩父鉄道と東武伊勢崎線が接続する羽生駅の乗り継ぎが良ければ、東京や群馬県へのアクセスに使えるんだけど」という声を多くお聞きします。例えば秩父鉄道と東武鉄道の間で直通列車を走らせたり、秩父鉄道にPASMOのようなIC乗車券を導入したりすれば、東京や北関東地域からももっと人を呼び込めると思います。
知事は、県民の誰一人も、どの地域も取り残すことのない日本一暮らしやすい埼玉県の実現に向けて県政を推進していくと掲げられております。「あと数マイルプロジェクト」により、県南の鉄道路線を整備することも、もちろん重要です。しかし、埼玉県では人口や労働力の流出など南北格差も課題となっております。県北地域も取り残すことなく、人を呼び込むためにも、しっかりと鉄道の利便性向上を図っていただきたいと考えますが、秩父鉄道を軸とした県北地域の活性化について、知事の見解をお聞かせください。

A 大野元裕 知事

「鉄道の利便性向上について」のお尋ねのうち、「秩父鉄道を軸とした県北地域の活性化について」でございます。
本県は、既に日本の中で最も交通ネットワークが優れた地域の一つであり、この交通の利便性を更に良くしていくことで、本県の経済と人との交流を一層活性化させることができると確信しています。
そして、鉄道の利便性向上は、地域づくり・まちづくりの取組と一体となって進めていくことにより、より大きな効果が得られるものと考えます。
秩父鉄道は、県北地域を東西に結び、他の鉄道会社の多くの路線と接続しているなど、県内の鉄道ネットワークにおいて重要な鉄道路線です。
また、沿線住民の通勤・通学の足として使われるだけではなく、議員御指摘のとおり、県内有数の観光スポットが多いことから、観光振興に欠かせない路線と考えています。
この沿線地域は、それぞれ特性や魅力を持っており、地域資源を生かした地元市町村による新たなまちづくりも期待されます。
熊谷市では、ラグビーワールドカップ開催後、トップリーグのパナソニックワイルドナイツの本拠地の移転が予定されています。
深谷市では、新駅開業に加え、新1万円札の新たな顔に決まった渋沢栄一翁の大河ドラマを契機として、地域活性化の取組が進んでいます。
行田市も、日本遺産に指定されている「足袋蔵(たびぐら)のまち」や県内初の特別史跡に指定された「埼玉古墳群」など魅力あるスポットを有しています。
これまで、県では、ラグビーワールドカップを契機として、外国人観光客の受入れを促進することを目的に、秩父鉄道熊谷駅の券売機の多言語化やWi-Fiの設置などに対し、支援を行ってまいりました。
また、地元市町村の意向を踏まえ、利便性の更なる向上が期待される秩父鉄道の他社線との直通運転やIC乗車券の導入など駅の乗り継ぎ改善を県としても、秩父鉄道などに働き掛けているところであり、引き続き取り組んでまいります。
さらに、県、市町村及び鉄道事業者で構成する鉄道沿線活性化連絡会議を平成28年度から毎年開催し、各主体の取組の情報共有を図ってまいります。
今後、この会議において、市町村のまちづくりの取組と鉄道事業者の利便性向上の取組が一体となって進められるよう、十分に連携を図ります。
県といたしましては、こうした取組を通じ、県北地域の活性化に資するよう、秩父鉄道の利便性向上や利用促進に、引き続き取り組んでまいります。

秩父鉄道と他社線との連携強化について

Q 柿沼貴志 議員(県民)

御案内のとおり、秩父線は三峰口駅から羽生駅まで県北部を東西に横断する路線であります。その間において寄居駅では東武東上線などと、羽生駅では東武伊勢崎線と乗り換えることができます。私は、今回の質問を行うに当たり、平成26年から30年の市町村ごとの観光入込客の統計調査から、沿線ごとに観光客の動向を再分析してみました。
西武池袋線、東武東上線、高崎線、東武伊勢崎、秩父鉄道、この5つの路線を対象に、来訪者がどこから来たかを表すFrom─to分析や、消費額等から仮想観光市場の推計を行いました。その結果、秩父鉄道沿線の自治体は、観光入込客数、客数の伸び率、仮想観光市場額の全てにおいて、最下位であることが分かりました。また、休日14時に秩父市や長瀞町にいらっしゃった方がどこから来たのかを確認すると、東京都や神奈川県、千葉県など南からの来訪者が約7割を占めており、群馬県や栃木県など北からの集客は相対的に少ない状況でした。私は、ここにチャンスがあると考えます。北からの集客は、まだまだ増やせる余地があるのではないでしょうか。秩父鉄道が他社線と連携を強化し、アクセスを向上させることにより、北からの観光客を今以上に呼び込める可能性があると考えます。
加えて、秩父鉄道は地域住民にとっての生活の足であり、高齢者や車を持たない学生などの交通弱者にとって欠かせない交通手段であります。しかし、人口減少やマイカーの普及により利用者が減少しており、その経営が大変厳しい状況にあると聞いております。このまま利用者の減少が続けば、現在の路線を存続することも困難となってしまいます。こういった背景を鑑みても、地域の足を存続させるために県として更なる支援が必要です。
そこで、集計結果も踏まえ、秩父鉄道の更なる利用促進を図る観点から、企画財政部長に三点質問させていただきます。
一点目として、秩父鉄道と東武東上線、東武伊勢崎線間の連携の強化が必要であると考えます。相互乗入れをはじめ、駅の乗換え改善など利便性の向上について、県からの支援が必要だと思われますが、お考えをお伺いいたします。
二点目として、秩父鉄道を軸として鉄道事業者各社間の相互キャンペーンなどをより進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
三点目として、県北地域の交流人口、観光人口を増加させるには、群馬県、栃木県など北関東地域へ目を向けることが必要と考えます。特に秩父鉄道沿線地域においては、北関東へのキャンペーンがより一層重要になると思いますが、いかがでしょうか。

A 堀光敦史 企画財政部長

まず、「利便性向上への県からの支援について」でございます。
秩父鉄道と東武鉄道の相互乗り入れや交通系ICカードシステムの導入は、利便性を大きく向上させるものと考えます。
しかし、議員御提案の他社線との相互乗り入れを行うには、車両の性能や安全装置が各社間で異なるなど多くの課題がございます。
そのような中、秩父鉄道では、安全輸送設備の老朽化が進んでおり、現在、安全性の確保を最優先の経営課題として取り組んでいるところです。
県では、これまでも、秩父鉄道の安全性の向上を図るため、輸送設備の更新等に対し財政的な支援を行ってまいりました。
まずは、この最優先の経営課題への対応をしっかりと支援してまいります。
こうした経営上の課題に対応しつつ、相互乗り入れを進めるためには、利用者数の増加につながる地域の魅力づくりが必要不可欠でございます。
県といたしましては、より大きな効果が見込まれるまちづくりの取組と一体となって進めていけるよう、秩父鉄道に働き掛けることはもとより、沿線市町村とも十分に連携を図ってまいります。
次に、「秩父鉄道を軸とした鉄道事業者各社間の相互キャンペーンなどを進めるべきについて」でございます。
秩父鉄道と西武鉄道は、令和元年度、「秩父鉄道創立120周年、直通運転30周年の記念キャンペーン」として、記念スタンプの設置や、記念ヘッドマークの掲出などを実施しました。
秩父鉄道が単独で実施した令和元年度のフリー切符の販売枚数は、台風19号の影響などもございまして前年度比で7%程度減少いたしました。
これに対し、西武鉄道と共同実施したフリー切符は、記念キャンペーンの効果もあり前年度比1%程度増加したとのことでございます。
これは、西武鉄道の集客力に加え、秩父鉄道の強みであるSLに乗車でき、限定の記念品を贈呈したことなどが功を奏したと分析されています。
こうした鉄道事業者の相互キャンペーンにつきましては、多くの観光客が広域で回遊していただけることから、人の流れを呼び込むのに一定の効果があり、さらに進めるべきものと考えております。
次に、「秩父鉄道沿線の北関東地域へのキャンペーンについて」でございます。
県北地域の交流人口を増やすには、北関東地域にも着目して、広く潜在的な需要を掘り起こすことは重要です。
車を多く御利用される北関東地域の方々に、鉄道を利用して来ていただくためには、単に観光地をPRするだけでなく、鉄道に乗ること自体の魅力もPRすることが効果的と考えます。
例えば、新型コロナウイルスの影響で残念ながら運休となりました「群馬ディスティネーションキャンペーン」におけるSLや観光列車の運行は、まさに鉄道に乗る魅力を発信するものでございます。
県といたしましても、このようなキャンペーンの際に、北関東地域に対しても、効果的な情報発信がなされるよう取り組んでまいります。

学校教育における「チーム学校」の推進について(教育長)

児童・生徒の実態把握を進めるべき

Q 柿沼貴志 議員(県民)

社会の少子高齢化や情報化の急速な発展、地域社会の希薄化等により、青少年を取り巻く環境は大きく変化しております。これらの変化の中で、ひきこもり、中途退学、フリーター、ゲーム依存、生活困窮による負の連鎖などは深刻化し、若者の社会問題に結び付いております。併せて、学校に課せられる課題も複雑で多様化しており、課題の解消や対応に当たる教員の長時間勤務も深刻な問題となっております。
私は、児童・生徒、保護者、一人一人のニーズを受け止め、誰一人取り残さない学校現場を実現するためには、「チーム学校」の推進が重要であると考えています。ちょっと見えにくいかもしれませんけれども、これが「チーム学校」を示した図でございます。
こちらのパネルで示すように、「チーム学校」とは、事務職員の活用やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなど専門スタッフの配置、地域との連携により、教員が授業に専念できる体制づくりを目指そうとするものです。
国は、平成28年度より、これからの学校経営の在り方を「『次世代の学校・地域』創生プラン」と示され、学校と地域一体型の地域創生と定めております。私は、この「チーム学校」が効果的に機能し、地域社会とつながりある学校づくりを再編することこそが教員の負担軽減につながるとともに、埼玉の目指すべき教育の姿、つまり「『次世代の学校・地域』創生プラン」の実現であると考えております。
このような状況の中、中学生の高校進学率は98%前後で例年推移し、その中で発達障害などの障害がある生徒に対しては、合理的な配慮により高等学校での学びが広がっております。平成31年3月に策定された埼玉県特別支援教育環境整備計画によれば、通常学級において学習面、行動面で著しい困難を示す児童・生徒の割合は、平成24年文部科学省調査では全国6.5%だったのに対し、平成25年度の埼玉県の調査では10.7%となっております。また、そのうちの4人に1人、26.8%が、過去において何も支援を受けなかったと報告されております。
例えば長野県では、小中高校で発達障害種別の生徒がどのくらい学んでいるかを調査した上で、学校教育の責務を明らかにしております。それによると、令和元年度の県立高校では、自閉症スペクトラム563名、注意欠陥多動性障害321名、複数の発達障害512名など、全体で1,481名の生徒が学んでいることが報告されております。長野県ではこれらの児童・生徒の実態を明らかにした上で、生徒の将来的な自立や社会参加、自己実現に向けた支援は、地域社会全体で進めていくことが大切であり、学校、福祉、医療等の関係機関との連携を重視することをうたっております。
このように児童・生徒の実態を具体的に把握することは、的確で充実した支援体制を整えていく上で重要であると思いますが、本県では全体数のみの把握にとどまっております。「『次世代の学校・地域』創生プラン」の実現のためには、小学校から中学校、中学校から高校へと児童・生徒の情報を共有するところから取り組むべきだと考えますが、教育長の答弁を求めます。

A 高田直芳 教育長

障害のある児童生徒に対する教育においては、一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導や必要な支援を行うことが重要であると考えております。
県では、管理職や教職員を対象とした「中学校から高等学校等へ支援をつなぐ特別支援教育研修」などを開催し、発達障害への理解の促進を図っております。
障害のある児童生徒の情報につきましては、本人や保護者の意向に配慮しながら、小・中・高等学校を通して幅広く実態を把握し、個別の教育支援計画などを引き継ぐことで、障害の特性等に応じた適切な支援に努めております。
今後、児童生徒の情報をより丁寧に把握し、各学校に対して、発達障害など障害のある児童生徒への組織的な支援ができるよう、取り組んでまいります。

再Q 柿沼貴志 議員(県民)

私は、先日の文教委員会で、教育長の本当に心のこもった現場主義を貫くという所信を聞いて、本当に心強く思って期待するところであります。今回の答弁の中にも、その思いが伝わってくるものはあったんですけれども、一点目、児童・生徒の実態把握のところなんですけれども、小中、中高と、実態をより丁寧に把握して進めていくという答弁をいただきましたけれども、今、現状でどのくらい種別で把握しているのか、種類だけでも分かれば教えていただければと思います。
もう一つなんですけれども、障害だけではなく、例えば中学校のときに不登校になりがちな生徒、だけど出席はしていて保健室登校だったりとか、そういう方々もいらっしゃると思うんです。ただ、今、埼玉県のそういう報告書を見ると、出席日数だけしか見えなくて、遅刻や早退とかというのはなかなか見えないことになっています。その辺も私は実態把握して、高校につなげるべきだと思いますけれども、その辺のお考えをお聞かせください。

再A 高田直芳 教育長

先ほど議員からもお話がございましたとおり、平成22年4月に吹上秋桜高校が開校いたしました。
当時新米校長として、設立に関わらせていただきましたことは、私にとりまして、大変光栄なことでありました。
まず、御質問の1点目でございます。
実態把握についてでございます。
当時私がおりました時も、私の見たところ7割くらいの生徒が不登校経験者でございました。
中学校を全て欠席という生徒も数多くおりました。
また、特別な支援が必要な生徒もたくさんおりました。
当時教員が中学校へ出向きまして、全ての入学生について、つぶさにその生徒の中学校での様子、あるいは小学校からの引き継ぎ事項などを聞き取りをしてまいりました。
そうしたことを教育活動に活かしてきたことを、今でもよく覚えております。
子供たち一人一人の実態把握は非常に大事なことだと考えておりますので、議員御指摘のとおり、あらゆる手段を使って、実態把握に努めてまいりたいと考えております。

スクールソーシャルワーカーの常勤化や職務内容の明確化について

Q 柿沼貴志 議員(県民)

平成31年3月に文部科学省から各都道府県教育長に対して発出された「学校における働き方改革に関する取組の徹底について」の通知では、スクールソーシャルワーカーなどの専門職スタッフの役割分担を明確化、人材確保、そして所管の学校への必要な支援を行うようにうたわれております。
ここまで示したように、「チーム学校」には教育相談体制の充実が必要不可欠です。本県では、高等学校の相談業務を担当する職員として、教育相談員やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーを一部の学校に配置しております。スクールソーシャルワーカーの職務は、生徒の置かれた環境に着目し、福祉の関係機関につなげることで、環境の改善や問題の解消のための支援をすることにあります。教育と福祉の連携が求められているからこそ、両者についての専門的な知識や経験を併せ持つ人を任用する必要があり、令和2年度募集要項の中でも、その旨が記載されています。
もう一枚、パネルを出します。こちらもちょっと見にくいかもしれませんが、こちらのパネルは、今年度のスクールソーシャルワーカーと教育相談員の募集要項から、両者の勤務内容を抜粋したものです。6項目あるんですけれども、六項目のうち赤色にした四項目は、文言が全く一緒です。紫色にした1項目も、内容はほぼ一緒。違うのは最後の1項目だけです。国が「チーム学校」として常勤化した専門スタッフの配置を強く求める中、こちらのパネルに示すように、本県ではいまだにスクールソーシャルワーカーと教育相談員の職務内容が明らかに混同しています。
一方、勤務条件には大きな違いが見られます。福祉や関係機関との連携を図るスクールソーシャルワーカーは、週2日、年間90日の勤務で日給制、1万40円。相談ニーズを受け止めることを主とする教育相談員は、週29時間、週4日あるいは5日の勤務で、月給制の16万7,600円を支給しています。つまり、募集要項はほぼ同じなのに、勤務体系や給与体系が異なっているんです。これではチーム内に業務間格差を発生していると言わざるを得ません。職務に明確な差がない以上、勤務条件に格差がある状態では、「『次世代の学校・地域』創生プラン」に逆行しているではありませんか。これらを踏まえ、以下三点の早急な実現が必要と考えます。
一点目、昼夜開講定時制高校と3部制高校では、様々なニーズを併せ持つ生徒が多く学ぶ現状から、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーを常勤化すること。
二点目、これらの現状を熟知した上で、教育相談員はスクールソーシャルワーカーとして一本化すること。
三点目、そしてこれらの勤務条件を直ちに統一すること。
これまで「『次世代の学校・地域』創生プラン」の実現に関する多くの議員の質問に対し、対応するとの答弁が繰り返されてきましたが、形式的な発言の繰り返しではなく、私が提案する三点を踏まえ、具体的に現状を前進させる教育長の答弁を求めます。

A 高田直芳 教育長

まず、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーを常勤化することについてでございます。
スクールソーシャルワーカーは、問題行動などのある生徒を、福祉や医療に結び付けることや、学校と関係機関の円滑な連携を支援するため、社会福祉士などの有資格者を配置しております。
また、スクールカウンセラーは、心理に関する専門的な知識経験から、教職員や保護者の指導、助言を行うとともに、生徒の心の相談にあたるため、臨床心理士などの有資格者を配置しております。
これらの専門職の役割は、教職員の担うべき業務を専門的知識からサポートするものであります。
御提案の常勤化につきましては、学校の状況や課題に応じて、適切な活用や配置の工夫をすることにより、専門職の充実を図ってまいります。
次に、教育相談員はスクールソーシャルワーカーとして一本化することについてでございます。
教育相談員は、友人関係や家族関係など、生徒のささいな悩みや不安に対し、身近で気軽に相談できる体制を構築するため、相談業務の経験が豊富な相談員を配置しております。
福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーとは、学校における役割が異なることから、いずれも必要な職と考えており、引き続き、それぞれ配置してまいりたいと考えております。
なお、議員御指摘の、募集要項につきましては、分かりづらい表記となっておりますので、業務内容が明確となるよう表現を見直してまいります。
次に、これらの勤務条件を直ちに統一することについてでございます。
勤務条件については学校における役割に応じ、配置日数や勤務時間を設定し、給与は月額又は日額として設定しております。
報酬額の差につきましては、勤務条件の違いから生じているものでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
今後も、スクールソーシャルワーカーなどの専門職員の活用を促進し、教員と専門職が一体となって、生徒を支援する教育相談体制の強化に努めてまいります。

再Q 柿沼貴志 議員(県民)

スクールソーシャルワーカーの常勤化、職務内容、また一本化についてなんですけれども、御答弁の中で、日額や月額というのは勤務条件があるので、これはしようがないよという御答弁をいただいたんですけれども、私が提案しているのは逆なんですね。職務が縦割りになってしまっているから、やっぱり勤務条件も変わってきてしまうと思っているんです。募集要項はほとんど一緒というところも御指摘させていただいたんですけれども、実際、私、2部制の高校に視察に行ったときに、スクールソーシャルワーカーさんにも、教育相談員さんにもお話を聞いたんですね。教育相談員さんは、学校の生徒の心を開かせるために教室は開いたまま、そしてまた通学のときには生徒と顔を合わせられるようにして、話を聞きやすい体制をとっていたということでした。だけれども、福祉のことになるとスクールソーシャルワーカーにつなげなきゃいけないと。たまたま私が行った日は、スクールソーシャルワーカーの方がいらっしゃったんですけれども、私が指摘したように、スクールソーシャルワーカーは週2日しかいないわけでありまして、いない日もあるわけですね。これは生徒の目線に立っていただきたいんですよ。生徒というのは、やっぱり縦割りでいくとかなり難しいんですね。
質問にしますね。すみません。
なので、職務内容、スクールソーシャルワーカーさんも教育相談員さんも、もっと一人でできればいいという話をしていたんです。職員会議にも出られないということなんです。だから、職員会議にも出られないので、学校の現場が把握しにくいとも言っていました。なので、子供たちは決死の覚悟で来ているので、是非、細分化するわけじゃなく、縦に分けるんじゃなくて、一本化して子供たちの教育、次につなげるということをしていただきたいんですけれども、その辺をお聞かせ願いたいと思います。

再A 高田直芳 教育長

それぞれ専門的な職務に応じて、勤務条件を設定し、日額あるいは月給などについて定めているところでございますので、このことについては御理解をいただきたいと存じます。

就労支援アドバイザーの配置を

Q 柿沼貴志 議員(県民)

平成28年1月、文科省は教員以外の専門スタッフの参画として、就職支援コーディネーターの配置促進をうたっております。私は、これまでの県立高校の就職指導は、生徒の実態が多様化しているのにもかかわらず、画一的であったと思います。
一方、多様な生徒が学ぶ特別支援学校には、専属化した進路担当が既に加配されているところもあり、生徒一人一人の実態に応じた指導がなされております。この細やかな対応を県立高校の進路指導にも生かすべきです。
現在の就職指導の課題を挙げれば、一つは時間の確保です。授業、部活動、校務等で多忙な先生方に特別支援コーディネーターの役割を与え、企業を回らせたり、実習等の計画を立てさせたり、個別の支援計画を実行させるとしておりますが、先生方にその時間がないことは明白です。
もう一つの課題は、専門性の不足です。多様な生徒が学ぶ、いわゆるパレットスクールでの就職指導は、高い専門性が求められます。しかし、教員にはその専門性が不足している上、前述のように時間もありません。そこを補うべく、特別支援学校の先生に高校を巡回してもらい、障害のある生徒への対応方法などについて、高校の先生に対して研修や相談を行っておりますが、就職支援という観点では不十分であると考えます。
だからこそ、専門性を持って専業で多様な生徒の就労の指導、支援に当たる就労支援アドバイザーが重要なのです。多様化した生徒の高校入学の機会が広がる中、就労支援アドバイザーをどのように配置し、誰一人取り残さない進路指導をどのように実現するのでしょうか。具体的な配置に対する見解を教育長にお伺いいたします。

A 高田直芳 教育長

県立特別支援学校に配置している就労支援アドバイザーは、障害者を雇用している企業の幹部等が生徒や保護者、学校に対し、就労に係る指導助言を行うことを目的としております。
県立高校に配置している就職支援教員と就職支援アドバイザーは、生徒の就職希望に応じて、生徒のキャリアカウンセリングや面接指導を行うことを目的にしております。
就職支援アドバイザーは、民間企業経験者が中心となっておりますが、本年1月から社会福祉士などの有資格者も新たに配置し、生徒に応じた指導ができるよう、内容の充実を図ったところでございます。
今後、特別支援学校に配置している就労支援アドバイザーによる高等学校での研修を実施するなど、就職支援教員や就職支援アドバイザーに、様々な課題を抱えた生徒への就職支援のスキルを学ばせることで、よりきめ細やかな支援に取り組んでまいります。

再Q 柿沼貴志 議員(県民)

就労支援アドバイザーなんですけれども、研修をしていくということだったんですけれども、実際今、研修だってもう間に合わないと思うんですね。その学校には問題を抱えた生徒がいらっしゃるので、研修を続けるんではなく、今いる先生方が今本当にやっている状況なんです。だからこそ加配が必要で、常勤化が必要だと思っていますけれども、その辺、教育長、いかがでしょうか。

再A 高田直芳 教育長

就労支援アドバイザーは特別支援学校に配置をしている、例えば企業等の経営者でありますとか、人事担当経験者などでございます。
多くは特例子会社の社長さんでありますとか、そういう方でございまして、障害のある子供たちの就労に長く携わってきた経験のある方にお願いをしております。
そうした方の知見や、経験などを特別支援学校で活かしていただいている訳でありますけれども、直ちに高等学校全てに配置をすることもなかなか難しいところがございますので、議員御指摘の趣旨を踏まえまして、高等学校において、研修等でその皆様の経験などを活用させていただきたいと思っております。

手厚い支援体制による埼玉県版「チーム学校」のモデル校を設置するべき

Q 柿沼貴志 議員(県民)

私のここまでの質問の原点には、私の地元の生徒も通学し、髙田教育長も指揮をとられた昼夜開講2部制の吹上秋桜高校の現実があります。昨年度、3年生、4年生は総勢152名でスタートを切りましたが、進路決定できた生徒は107名。大学、専門、就職以外の「その他」に分類された生徒は18名でした。また、そもそも次のステップを見出せず、残念ながら途中で学校を去っていく生徒もいます。先ほどの「その他」と合わせて毎年50名近くの生徒が、次のステージが決まらないまま学校を去っているのです。
私は、様々な問題を抱える生徒たちにとって、高校は社会に出るための準備をする最後のとりで、チャンスになっていると考えています。ここで先を見出せないと、ひきこもりや貧困問題につながってしまいます。埼玉県は、誰一人取り残さない決意として、不登校の生徒も受け入れる体制をとっておりますが、受け入れたからには全ての生徒を次のステージに送ってあげる責任があると思います。吹上秋桜高校には生徒への手厚い支援体制を構築するために、福祉、労働、医療、保健、警察と幅広いネットワークが求められております。この学校にこそ、入学した生徒を誰一人取り残さない教育が待たれているということを、教育長が一番理解しているのではないでしょうか。
また、教育相談部の主任の先生は、夜間勤務にもかかわらず、ほとんど午前中から出勤して、夜は9時過ぎまで生徒と向き合っております。スクールソーシャルワーカーは一日6時間で週2日配属されます。配置校のほかにも2校担当しています。スクールカウンセラーは週に一日の勤務です。このように本県の誰一人取り残さない教育実践は、先生の強い責任感と深刻な労働条件で成り立っているのです。
平成29年9月の定例会において、我が会派の松坂議員の質問に対して、時の教育長は「スクールソーシャルワーカーが教員とともに対応することが重要と考えています。教育委員会としても、これまで以上に福祉部局との連携を密にし、生活保護や就労支援、医療などにもつなげ、生徒を取り巻く環境の課題を解決したいと考えております」と答弁しております。この答弁から3年たっておりますが、教育委員会は専門職としてスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの常勤化などを打ち出しているわけではありません。当時の認識のままであると捉えられても仕方のない状況です。
入学した全ての生徒に対して、豊かな学校生活と家庭生活の実現を支援し、社会人として自立した生活を送ることができる若者の育成を目指すために、まずは手厚い支援体制による埼玉県版の「チーム学校」のモデル校を設置してみてはどうか考えます。吹上秋桜高校に常勤のスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー及び就労支援アドバイザーの加配を行い、手厚い支援体制を整備してはいかがでしょうか。誰一人辞めさせない、誰一人も進路未決定者を出さない、このことを単に学校現場に任せてしまうのではなく、生徒、保護者、地域としっかりと向き合い、教育行政の責任として必ず実行していただきたいと考えますが、これまでの豊富な経験も踏まえ、教育長の責任ある答弁を求めます。

A 高田直芳 教育長

吹上秋桜高校には、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー及び教育相談員を配置するとともに、就職支援のための就職支援教員及び就職支援アドバイザーを配置しております。
県といたしましては、モデル校の指定ということは考えておりませんが、議員御指摘の趣旨を踏まえて、各学校の課題に応じて、必要な支援ができるよう、引き続き努めてまいります。
校長のリーダーシップの下、教員とそれぞれの専門職員、保護者が連携し、チーム学校として、多様な生徒に対応した指導体制を構築するよう、県としてもしっかり支援してまいります。

再Q 柿沼貴志 議員(県民)

手厚い支援体制による埼玉県版「チーム学校」のモデル校をということなんですけれども、私は結果が大事だと思っています。今、教育長が吹上秋桜高校の2部制を立ち上げてからちょうど10年がたったんです。しかし、毎年のように2桁以上の生徒が進路未決定のまま学校を去っている現状があります。結果は出ていないとは言いませんけれども、進路未決定者がゼロになるまで努力する必要があると私は考えています。正に教育長の現場主義が貫かれるときだと思いますけれども、システムを変える必要があると思いますが、今、私の伝えた現状をどのように捉えて改善して、進路未決定者を出さないように次のステージにつなぐのか。
もう一度、専門スタッフの常勤化、職務内容の明確化、加配も行うつもりがあるのかどうかを含めて、教育長の答弁をお願い申し上げまして、再質問とさせていただきます。ありがとうございました。

再A 高田直芳 教育長

先ほど申し上げましたように、吹上秋桜高校には、他の学校にも比して、多くの外部人材を手厚く配置しているところでございます。
外部人材活用に係る成果と課題について整理をし、経過を見ていく必要があるのだろうと思っております。
議員御提案のモデル校ということは考えておりませんが、県立高校それぞれが、様々な外部人材を活用しながら、教職員と一体となったチーム学校となるよう、引き続き、積極的に取り組んでまいります。

特定外来生物クビアカツヤカミキリの被害に万全の対策を

Q 柿沼貴志 議員(県民)

クビアカツヤカミキリは桜だけでなく、スモモや桃、梅などの果樹にも被害を及ぼすため、早急な対策が求められております。環境省はこうした被害を重く受け止め、平成30年1月にクビアカツヤカミキリを特定外来生物に指定しました。被害は埼玉県をはじめ11都道府県で拡大しており、今や全国的な問題となってきております。
本県では、平成30年度、令和元年度と、環境科学国際センターが県民参加による「クビアカツヤカミキリ発見大調査」を実施し、県内における被害状況を調査しました。その結果、令和2年2月末までの集計では、これまでに被害が確認されていた8市に加え、3市1町で新たな被害が確認されております。県では、調査結果を基に、被害報告地点等を含む調査地点マップを作成し、ホームページや広報紙で周知するとともに、被害防止の手引を公開し、被害の拡大防止を呼び掛けておりますが、被害が広がっている現状があります。
群馬県の館林市では、令和元年にクビアカツヤカミキリ撲滅プロジェクトを開始し、市民を巻き込んだ取組を行っています。具体的には、市が防除用品を配布したり、クビアカツヤカミキリの成虫を捕まえて市へ持っていくと、1匹50円の奨励金が受け取れたりします。その結果、令和元年では延べ272名の市民が、成虫6,648匹を捕獲してくれたそうです。令和2年となり、本年も同じく5月から8月にかけて奨励金など助成金制度を実行しております。
また、栃木県の足利市では、市民の居宅で被害の出た庭木の伐採、運搬等にかかった費用の3分の2、上限20万円の助成制度を行っております。
私の地元行田市では、米娘舞娘という小中学生のユニットが「クビアカツヤカミキリを捕まえろ!」という歌を歌って啓発活動を行っています。ユーチューブでも出ているので、是非御覧になってください。埼玉古墳公園や水城公園でも成虫が目撃されており、早期の発見、防除が喫緊の課題となっております。
そこで、クビアカツヤカミキリの被害撲滅に向けて、以下三点、環境部長へお伺いいたします。
一点目として、県内の被害の状況と対策についてお尋ねいたします。特に県民への周知については強化すべきと考えますが、いかがでしょうか。
二点目、防除対策を強化するためには、個人に対する奨励金や防除用品の配布、被害のある木の伐採の費用の助成などが必要と思いますが、県の考え方をお伺いいたします。
三点目、被害の撲滅には、群馬県のように協議会を作るなど地域一体で対策に取り組む必要があります。本県においても市町村等の連携を強化する必要がありますが、県の考えを伺います。

A 小池要子 環境部長

まず、県内の被害状況と対策について、特に県民への周知強化についてでございます。
クビアカツヤカミキリの被害は、令和2年3月末において、県内12の市町、206カ所、738本の樹木に被害が確認され、そのうちサクラの被害が661本と9割を占めております。
その対策といたしましては、発見や被害についての情報が寄せられた場合、県や市町が現場へ急行し初動対応を行っており、県では防虫ネットや薬剤の提供、また、技術的な助言を実施しております。
このほか、市町村職員や保全団体、公園管理者等を対象として駆除の実技も交えた研修会も開催しております。
さらに、新たな試みとして、今週末にはさきたま古墳公園において、行田市と合同で、まだ被害の出ていない樹木に薬剤を注入することで予防が図られるか実証試験を行う予定です。
また、県民への周知強化でございますが、県ではこれまで「被害防止の手引き」の配布や、「クビアカツヤカミキリ発見大調査」などに取り組んでまいりました。
令和元年度には、県政出前講座を7回開催したほか、注意喚起のチラシを7万枚作成いたしました。
現在、既に発生している市町に送付し、自治会での回覧や小中学校、公共施設での周知を依頼しているところです。
今後は、隣接する市町村に対しても注意喚起を強く働きかけるほか、SNSの活用など、積極的な情報発信に取り組んでまいります。
次に、防除対策を強化するため、奨励金や防除用品の配布、伐採費用の助成などが必要ではないか、についてでございます。
県内においても近年、被害樹木の伐採費用に係る補助制度の創設や、保全団体へ薬剤の配布などを行う市が出てまいりました。
このような市町村の動向や近隣都県の支援策、これらの成果を参考にしながら、今後どのような支援ができるか検討してまいります。
次に、市町村等の連携強化についてでございます。
県は、令和元年度から発生市町と連絡会議を開催し、効果的な防除や普及啓発などについて協議を行っております。
今年度には、隣接する市町村をはじめ幅広く参加を呼びかけ、それぞれの広報誌への掲載等により住民の関心を喚起し、早期発見、早期防除を進めてまいります。
議員お話のとおり、クビアカツヤカミキリの防除には地域一体での取組が必要です。今後も市町村や近隣都県と連携しながら、防除対策に取り組んでまいります。

埼玉古墳群を埼玉県の誇る観光拠点へ

Q 柿沼貴志 議員(県民)

私の住む行田市の埼玉古墳群には、昭和62年、当時の畑和知事が碑の題字を書いた「埼玉県名発祥之碑」が建立されております。県名の由来について、この石碑によると、現在の埼玉県の区域が定まったのは明治9年8月、県の管轄区域の中で最も広いのが埼玉郡だったことから、「埼玉」の県名が名称とされたようです。また、古墳群の中に鎮座する前玉神社は、「前玉」と書いて「さきたま」と読み、この神社名が埼玉県のルーツだとも言われております。さらに、「さきたま」は幸魂とも言われ、人に幸福を与える神の霊魂という意味を持っております。埼玉県は「そこら辺の草でも食わせておけ」などと言われる筋合いのない、全くすばらしい県名なのであります。
その埼玉県名発祥の地ともされる埼玉古墳群からは、昭和58年に国宝に指定された「金錯銘鉄剣」が出土しております。この鉄剣に鮮明に刻まれた115文字の銘文が日本古代史の確実な基準点となり、5世紀後半には既に大王の権力が九州から東国まで及んでいたと解釈されるなど、歴史事実の実年代を定める上で大いに役立つことになりました。
また、平成29年4月28日には、埼玉古墳群を含むストーリーが「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」として、県内初の日本遺産にも認定されました。そして最近では、令和2年3月10日に県内初の特別史跡に指定されました。特別史跡は特に学術上の価値が高く、有形文化財の国宝に相当するもので、県民にとっても喜ばしいビッグニュースでした。
しかし、現状を見ると、多くの観光客を満足させられる施設になっているとは言いがたいと思います。以前はちょうどこの時期に二子山古墳周辺に1万株のハナショウブが咲き誇り、訪れた人々の心を和ませてくれましたが、今は同じ場所にヨシがただ伸び続けているという状況です。おもてなしの体制が不十分であると言わざるを得ません。
県内で初めて特別史跡に指定され、日本遺産の一部ともなっている埼玉古墳群です。埼玉県の誇る観光拠点として、日本全国、そして全世界にアピールすべきと考えますが、どのように取り組んでいくのでしょうか。産業労働部長の具体的な答弁を求めます。
また、古墳群は埼玉古墳公園内に位置しており、公園は今、拡張整備が進められております。観光に来た方々がくつろげる休憩所やお食事処、お土産を購入できる施設が公園内に必要と考えます。公園の拡張整備の進捗状況について、都市整備部長にお伺いします。

A 加藤和男 産業労働部長

埼玉古墳群は、5世紀後半から7世紀初頭にかけて築かれた9基の大型古墳が集中する、全国屈指の古墳群です。
議員お話しのとおり、本年3月、この埼玉古墳群が「特別史跡」に指定されたことは、正に我が国の文化の象徴としてその歴史的価値が認められたと言えます。
こうした魅力あふれる埼玉古墳群を観光拠点として広く国内外にアピールし、観光客を誘致することは大変重要なことと認識しております。
県では、昨年度からNEXCO東日本と連携して東日本全域から車での県内周遊を促すスタンプラリーを実施し、埼玉古墳群をおすすめの観光拠点として紹介するなど、県内外に広くアピールをしております。
海外に対しましては、ホームページやSNSを活用し、古墳の魅力を伝える動画に外国人に強く訴えかける解説を添えまして、この秋から新たに情報発信をしてまいります。
また、国内外からの更なる観光客の誘致に向け、地元行田市と観光誘客について連携を深めてまいります。
行田市には、平成29年に県内で初めて日本遺産に認定された足袋蔵などの歴史的建造物、古代蓮の里、忍城址をはじめ、魅力あふれる歴史文化資源が多数あります。
こうしたスポットを回遊する仕掛けづくりや、他の歴史文化資源を有する自治体との連携などについて、行田市と共に検討いたします。
地域の可能性をしっかり見極め、埼玉古墳群の魅力をより多くの方に知っていただけるよう積極的に取り組んでまいります。

A 濱川敦 都市整備部長

さきたま古墳公園については、県民がふるさと埼玉のシンボルとして全国に誇れる公園となるよう整備を進めております。
これまで史跡の保護や鑑賞ができるよう大型古墳群のあるエリアから順次整備し、直近では、令和元年10月に古墳群の南側入口となる広場を供用開始いたしました。
現在は、新たな拡張整備として、県立さきたま史跡の博物館の西側に、イベントの開催など来園者が自由に活用できる多目的広場など約2.4ヘクタールの造成に着手しております。
整備内容は、行田市、行田商工会議所、地元の推進協議会などから御意見を伺いながら検討してまいりました。
議員お話しの飲食や物販ができる施設については、地元からも御要望をいただいております。
施設の設置は、公園のPR効果を高め、観光を含めた来園者の利便性向上につながるものと認識しております。
一方、多くのお客様を誘致するには、魅力のある施設として、地元の方々が熱意をもって地域全体で機運を盛り上げ、継続的に経営を推進する体制が必要です。
例えば、豊島区の南池袋公園では、公募により設置した民間のカフェレストランをにぎわいの核とし、その売上の一部でイベントを行うなど地域との関係性を重視した仕組みを作っております。
こうした先進的な取組なども参考に、引き続き、地元の行田市など関係者と十分協議し、公園のにぎわい創出につながるようさきたま古墳公園の整備を着実に進めてまいります。