県内病床使用率ひっ迫に備えた広域的な支援協定の締結について

Q 八子朋弘 議員

現在、第4波と言われる新型コロナウイルス感染拡大は収束傾向にあるものの、埼玉県のまん延防止等重点措置は延長されました。一方、県内の病床使用率は6月21日、昨日時点で18.8%、重症者用病床についても14.0%であり、幸い余裕がある状況であります。ワクチン接種率もさらに向上していくことから、コロナ収束に向けた明るい材料もありますが、変異株への置き代わり等、まだまだ油断ができない状況は続いていくものと思われます。
このたびの第4波では、特に関西地方で感染が拡大し、特に大阪府では病床使用率等は大変厳しい状況が続き、病院に入院できず、自宅で亡くなられた方が続出いたしました。そのような中、滋賀県は大阪府の要請を受けて、1名ではありますが重症患者の受入れを行いました。大阪府の吉村知事が直接滋賀県の三日月知事にお願いしたと報道されていますが、三日月知事が困ったときはお互い様ということで決断されたことに敬意を表したいと思います。そして、東京都や神奈川県も受入れを検討したとの報道もありました。
私は、このような非常事態には感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、あるいは新型インフルエンザ等対策特別措置法によって感染症患者は県内で治療するといった基本原則はあるものの、滋賀県のような柔軟な対応があってしかるべきと考えます。新型コロナウイルスにとって都道府県境は関係ありませんし、重症患者にとっても同じことが言えます。一人でも二人でも命を救うため、感染状況が落ち着いているこの今のタイミングを捉え、万一のときに備えて患者を受け入れる際のルールを定めた上で、北関東や甲信越地区等の自治体と患者受入れのための相互支援協定を締結してはいかがでしょうか。
埼玉県の病床がひっ迫した際には受入れをお願いし、協定先の自治体がひっ迫し、埼玉県に余裕がある場合は受け入れる、県民の生命を守るための有効な手段であると考えます。知事のお考えをお尋ねいたします。

A 大野元裕 知事

現在の感染症対策では、都道府県ごとに整備した体制に基づくものとされており、原則として、都道府県を越えて患者の受入れや病床の融通は想定されておりません。
県では5月31日現在、即応病床として1,643床、うち重症病床162床を確保しておりますが、県の想定を大幅に上回る感染者の急増という不測の事態に備え、議員御指摘のとおり、都道府県間で病床を融通する仕組みを講じることも必要と考えております。これまでも特殊な緊急治療を必要とした患者数名について県外の医療機関に転院していただいたことはありますが、個別事案として例外的な対応でございました。
具体的に病床の融通を行うには、入院調整の方法が異なる自治体間で、どの程度病床がひっ迫した段階で受入要請を行うのかなど、統一的なルールを設ける必要があります。このため、全国知事会に対し、都道府県間で病床を共有できる仕組みを提言し、知事会として、都道府県間での患者受入れを支援する仕組みづくりを構築することを国に要望したところでございます。
御提案の北関東や甲信越地区等の自治体との相互支援協定の締結につきましては、国における仕組みづくりに向けた対応をまずは見ながら検討をしていきたいと思います。

再Q 八子朋弘 議員

知事会を通して国に要望し、また検討していくという答弁であったかと思いましたけれども、国に要望されるということなのですが、国がいつその要望に対して対応できるかというのがちょっと分からないわけであります。時間がかかってしまうかもしれない。もしかしたら、その間に再びまた感染が急拡大してしまうおそれもないとは言えないわけです。
どこの県かというのは知事の御判断ですけれども、ぜひそういう状況から考えると、せめて知事同士で、大阪と滋賀のようにまず下話だけでもしておくという必要があるのではないかと思うのですが、その点について改めて知事に伺いたいと思います。

再A 大野元裕 知事

まず、第一に八子議員の最初の御質問につきましては、支援協定の締結等の制度としての隣県等との協定の枠組みでございました。ちなみに医療機関等が不足する場合、法は2つの想定をしていて、1つは新型インフルエンザ等特別措置法においては、医療の提供がかなわない場合には臨時に開設する施設で医療を提供すること、これは県の中での想定でございます。
そして2つ目には感染症法3条および特措法両方にございますけれども感染症法の場合には地域の特性に配慮しつつ施策を実施するため国との連携を図ることが規定をされており、その場合には国との連携、そして特措法の場合には国の本部長に対して、県の本部長、つまり知事から総理に対して提言を行う、この2つが定められており、制度として行う場合には隣県等ではなく国との連携が次に想定されているという段階でございます。
他方、再質問にございました、緊急の場合の知事同士の話ですが、既に東京の小池都知事とはこの話をずいぶん前からお話をさせていただいており、緊急の場合にはお互いに融通をし合うという合意ができております。

再々Q 八子朋弘 議員

東京都と話合いをされていたという御答弁をいただきました。それはそれで大切なことだと思いますが、私、つまり埼玉県の病床がひっ迫するような状況にあるときは、東京都も恐らくひっ迫しているのではないかと思われるからこそ、具体的に北関東ですとか甲信越というふうに事例を挙げさせていただきました。
そういった意味で、東京都のみならず、ほかの都道府県ともそういった話合いをしておくことは意味があるのではないかという観点から、再々質問させていただきます。お願いします。

再々A 大野元裕

制度としては、先ほど申し上げた通り、法に定められた通りまずは県内で行うこと、そして次に国と協議をすることが求められているので、我々としてはすでに知事会、もしくは国に対して要望をさせていただきました。これが一つでございます。
また、緊急の際には先ほど知事間ということで東京都知事との間で、先ほど言葉足りませんでしたが、重症病床に関して足りない場合には、お互いで何とかしましょう、と。そして知事間ではありませんけれども医療圏同士でいいますと、群馬県との間でもこう言った議論がすでに進んでおりまして、緊急の場合には対応がなされることになっている、と御理解いただきたいと思います。
いずれに致しましても、制度として行うのであれば一度国に働きかけた上で、きちんとした形で、北関東なのか、甲信越なのかわかりませんけど、そういったところと議論を進めるべきだと考えており、今国に働きかけておりますので、国の反応を待ちたいと思っています。

県立高校の南北格差是正について

学区制復活について

Q 八子朋弘 議員

今年の春に行われた県公立高校入試の平均倍率は、現行の入試制度が導入された2012年度以降、最低となりました。とりわけ圏央道から北側、外側に位置する、いわゆる県北部の県立高校の低倍率は深刻です。普通科設置高校28校中、15校が1.0倍以下、ほとんど倍率がない1.05倍以下も加えると20校になり、7割以上の高校が低倍率といっても過言ではありません。もちろん南部の高校でも低倍率の学校はありますが、それはエリアの中では一部であり、逆に高倍率の高校は南部の高校に集中しています。そして、このような傾向は、特にこの春は顕著だったとはいえ、ここ数年続いていると言えます。
2月議会では江原議員、諸井議員も県立高校の課題を取り上げ、特に諸井議員は全県的にも公立高校入試が低倍率であった点について現状認識を質問されました。教育長は厳しい状況である、危機感を持っていると答弁されておられましたが、私からもまず初めに改めてこの県北部の現実について、教育長の認識をお伺いいたします。
次に、それではなぜ県北部の県立高校はこのような状況になっているのでしょうか。少子化だからでしょうか。確かに県北部の少子化は著しいものがあります。県内中学卒業者数の見込みを見ても、いわゆる北部地域の中学生は他の地域の半分以下の人数で4,000人台です。あるいは、中学生の気持ちとして、田舎よりも少しでも都会の学校に通いたいとの心理があるのでしょうか。もしくは、南部の学校のほうがより魅力的な教育を展開しているのでしょうか。原因についてどのように分析をされておられるのか、教育長にお伺いいたします。
私は、県立高校の教育においては地域間の格差がなく、それぞれの高校が魅力ある教育を展開することによって、結果としてその地域も活性化していくことが理想的であると考えております。その格差とは、入試倍率の格差というだけではなく、実績、魅力の格差も含まれます。そして、格差を是正していく方法は幾つかあると思いますが、やはり一番は各高校が努力し、それぞれが特色ある魅力ある学校づくりをしていくことです。
ですが、今現在、北部の各高校は努力をしていないのでしょうか。決してそのようなことはないと思います。各校頑張っていると思います。しかしながら、高校の努力も限界があると思います。
そこで、高校の努力を補完する意味でも、格差を是正する方策の一つとして、以前に埼玉県でも導入していた学区制の復活を提案したいと思います。本気で南北格差を是正するなら、これくらいの思い切ったことをしないと厳しいと思います。
なお、同じ趣旨の質問を平成30年6月議会で武内議員もしておられましたが、この春の低倍率を受けて、私からも改めて質問させていただきます。
それでは、ここで改めて簡単に経緯を振り返ってみたいと思います。
埼玉県では、当時、国で行われていた教育における規制緩和の議論、法改正を受けて、彩の国教育改革会議、埼玉県高等学校教育振興協議会等の協議を積み重ね、平成16年度より学区制を撤廃しました。もちろん中学生や保護者の希望であり、また、メリットもありますので、それを全て否定するものではありません。しかしながら、その結果どうなったか。入試倍率のみならず、進学実績、部活動、文化祭をはじめとする学校行事等々、様々な面で南北格差が広がっていると思われます。やはり高校はいろいろな意味で生徒が集まらないことにはどうしようもありません。
約10年前、平成23年3月卒業生の調査までしかありませんから少し古いデータになりますが、学区廃止後の受検生の動向を調査した結果があります。それによりますと、北部の中学生が南部の高校に多数進学しています。また、今まで北部に進学していた中央部の中学生も、南部の高校に多数進学しており、明らかに南部に受検生が集中しているのが分かります。そして、この傾向は今も変わっていないと予想されます。
学校選択の自由を残しつつ受検生の流れを変える、その方策として、基本は全県どこからでも受験できますが、定員の一定割合は学区内から合格者を出す等の一定の制限を付した上での学区制の復活を提案したいと思います。
大野知事は機会あるごとに、県民の誰一人もどの地域も取り残すことのない日本一暮らしやすい埼玉県の実現と発言しておられます。学区制撤廃から18年、まずはここで一度検証してみてはと思いますが、教育長のお考えを伺います。

A 高田直芳 教育長

まず、「県北部の県立高校の低倍率の現実についての認識」についてでございます。
近年、県立高校入試の志願倍率は全県的に低下傾向にあり、特に議員お話しのとおり、圏央道の外側、いわゆる県北部に所在する高校においてその傾向が大きくなっております。私は県立高校の志願倍率がこのような状況にあることについて強い危機感を持っており、中学生にとってより一層魅力ある県立高校づくりに取り組まなければならないと考えております。
次に、「原因についてどのように分析しているのか」についてでございます。
主な原因としては、他の地域に比べて県北部の中学校卒業予定者数の減少傾向が大きいことにあると捉えております。また、県北部から他の地域の高校に志願している受検生が一定程度いることも影響していると考えており、それぞれの学校が北部地域の生徒が進学したいと思える魅力ある学校づくりをしていくことが必要です。
その他、全県的に私立の通信制高校への進学希望者が年々増加していることや、私立高校において進学や部活動をはじめてとして様々な特色ある学校づくりが進められていることなども考えられるところでございます。
次に、「県立高校の学区制撤廃から18年経過しているが、検証すべきではないか」についてでございます。
県立高校では、平成16年度入試から生徒や保護者の立場に立ち、自らの意思と責任において自由に学校を選択できるよう、通学区域を廃止しております。居住地に関わらず、自分の希望する高校に志願できるということは生徒や保護者の間で定着しており、現時点で制度の変更を求める要望等はいただいておりません。また、高校入試は受検生にとって公平に行われることも重要であると考えております。
このようなことから、議員御提案のように一定の制限を付した上で再度通学区域を設定することは考えておりませんが、受検生の志願状況や高校ごとの入学状況等につきまして、丁寧な把握・分析に努めてまいります。

再Q 八子朋弘 議員

様々な課題があるということはそのとおりだと思いますけれども、分かった上で伺っているわけです。公平性ももちろん大事ですけれども、南北格差の是正という問題も埼玉県にとっても大変大きな課題だと思っております。つまりバランスの問題だと思っています。本気で南北格差を是正する考えがあるのであれば、これくらいのことをしないと、学校が魅力を高めていくというだけではなかなか格差というのは縮まっていかないと私は思っていまして、そう考えると、その学区を撤廃したことがどのような影響を与えているのかということを検証してみる価値というのは十分あると思うわけです。
もちろん学区の問題だけが南北格差の原因であるとは思いませんけれども、主な理由の一つではあると思います。丁寧な把握、分析という御答弁がありました。これは検証なのかなとも思いましたけれども、改めて検証くらいはしてみてもよいのではないかと思いますが、答弁を求めます。

再A 高田直芳 教育長

南北格差については非常に大きな課題であって、思い切った対策を取るべきだという御指摘は真摯に受け止めさせていただきたいと存じます。北部地域の子どもたちの減少状況が厳しいというお話をさせていただきましたけれども、少し、数字を紹介させていただきます。
5月1日現在の数字で申し上げますと、平成24年度の数字ですと、第1通学区というのは高崎線で言いますと鴻巣より南でございまして上尾、さいたま市、川口市等ですが、21.804人おりました。令和2年度には21,228人、減少率は2.6パーセントでございました。
同じ数字で申し上げますと、秩父地域、本庄・児玉地域、熊谷・深谷地域、学区で言いますと、4、5、6という学区でございますが、平成24年度は6,014人、令和2年度は5,092人、減少率は15.3パーセントとなっております。約15パーセントが、この10年で少なくなっているという状況にございます。
私も県北部に生まれ育って、住んでおりますので、北部地域を何とかしなければいけないという思いは、議員同様、強く思っているところでございます。先ほど答弁の中で、受検生の志願状況ですとか、高校ごとの入学状況等について、学校ごに把握、分析に努めてまいりたいと答弁申し上げましたけれども、子どもたちの高校に対するニーズ、あるいは保護者の皆様の高校に寄せる期待なども含めまして、より丁寧に状況について確認をさせていただいて、次の対策に生かしてまいりたいと思います。
いずれにいたしましても、県立高校が中学生や保護者の皆様にとって選んでいただける魅力ある学校づくりに引き続き全力で取り組んでまいります。

魅力向上策について

Q 八子朋弘 議員

先ほど学区制を復活してはどうかと提案させていただきましたが、その結果、受検生が私立高校に流れてしまっては意味がありません。そこで各高校、とりわけ北部の高校は、中学生と保護者から見て受け皿になるべく、魅力のある学校づくりに一層励まねばなりません。
それでは、中学生、保護者にとっての魅力とは何か。恐らく多くの中学生や保護者にとっての魅力とは、進学実績や部活の実績だと思われます。ですが、県立高校の魅力はそれだけではないはずです。それら付加価値を含めた魅力向上策を追求していけばいいわけですが、先ほど述べましたとおり、高校のみの努力では限界があると思います。そこで、外部の力を借りる。具体的には、高校の同窓会であったり、所在する自治体や民間企業との連携を推進することにより、各高校の特色に応じた魅力度を高めることができるのではないでしょうか。
埼玉県教育委員会は、島根県教育委員会と高等学校教育に関する連携協力協定を結んでいます。島根県は高校を魅力化することで地方創生に資する取組をスタートさせた県ですが、具体的には地域と学校が連携して教育活動を展開し、それを地域活性化に結び付けています。そのノウハウを学ぶことを目的として協定が締結されたわけですが、特に隠岐島の海士町にある隠岐島前高校の取組は、学び生かしていく事例です。廃校寸前だった高校が奇跡の復活を遂げ、地域の活性化、子育て世代の移住、人口増加などにも貢献している成功事例です。島根県と埼玉県では違いも多く、ましてや離島の事例ですから、当てはまることと当てはまらないことの両面あるとは思いますが、隠岐島前高校から県として何を学び、その成果を具体的にどのように生かしていくのでしょうか。
ちなみに、高校が消滅することにより、その地域の人口減少が加速化し、また、その逆に高校の魅力化を行ったことにより、数億円の経済効果が生まれるという民間調査機関の分析結果もありますから、このままでは今後も低倍率が続き、統廃合のおそれがある高校にとっても、また、それら高校が所在する自治体にとっても、島根県との連携協定から得られる成果は大変重要な意味を持ってきます。
埼玉県でも既に幾つか動きが出ています。小川高校は、令和元年度より文部科学省の地域との協働による高等学校教育改革推進事業の指定を受け、所在地である小川町、小川町教育委員会、埼玉県教育委員会と連携して、地域探求に係るおがわ学の構築、実践を進めています。小鹿野高校では、エコワングランプリ審査委員特別賞を受賞したボランティア部の活動や、竹あかりプロジェクトなど地域との協働による取組を行っています。これは正に島根県の事例と重なってきますが、さらにこれら高校の取組を後押ししていただきたいと思います。いかがでしょうか。
そして、例えば、意欲とアイデアを持った校長先生に少し長めに赴任していただき、裁量権を与えて自由に学校経営をしていただいてはと思いますが、いかがでしょうか。教育長に答弁を求めます。

A 高田直芳 教育長

まず、「隠岐島前高校から隠岐島前高校から県として何を学び、その成果を具体的にどのようにして生かしていくのか」についてお答え申し上げます。
議員お話しのとおり、県教育委員会は島根県教育委員会と連携協定を締結し、高校生の交流を進めるとともに、県立高校の教員を一年の任期で相互に派遣しております。昨年度は埼玉県と島根県の高校生が参加して地域課題解決型学習の成果発表会をオンラインで実施いたしました。
その中で本県の生徒からは、例えば「人口減少が続く離島で暮らす高校生から地域の課題を聞くことで異なる価値観に気づくことができた」との感想がありました。また、隠岐島前高校では、地元自治体や企業との協働体制を構築するなど、地域創生のための先進的な教育活動を行っていることから、本県から派遣された教員が地域の方々や役場と連携した地域課題解決型の学習指導の手法について学んでおります。
派遣を終えた教員は、隠岐島前高校での経験を生かし、県立高校と自治体や企業と連携した取組を中心となって推進しております。
次に、「小川高校や小鹿野高校の取組は島根県の事例と重なってくると思うが、これら高校の取組を後押しすべき」についてでございます。
議員お話しの、小川高校などの取組は、学校と地域との連携を推進し、学校の魅力を高め、地域の活性化にも資するものであり、島根県の事例とも重なってくるものと考えます。これらの高校では地域と連携した教育活動を通し、生徒が地域に対する愛着や誇りを高め、地域課題の解決に取り組む力を身に付けるとともに、地域の特色を生かした学校づくりが進んでおります。
県といたしましては、引き続き、県立高校と地元自治体や企業との連携を支援することなどにより、県立高校が地域の特色を生かした魅力ある高校となるよう積極的に取り組んでまいります。
次に、「意欲とアイデアを持った校長に、少し長めに赴任させ、裁量権を与えて自由に学校経営をさせてはいかがか」についてでございます。
現在、校長の在職年数は1校3年程度となっておりますが、専門高校など特に特色が求められる高校については、意欲とアイデアを持つ校長を3年を超えて配置している例もございます。また、校長には地域や企業、大学等と連携した特色ある教育活動の実施など、学校経営に関する大きな裁量が認められております。
県といたしましては、意欲とアイデアを持った校長の適切な人事配置に努め、必要に応じて在職期間の長期化を図るとともに、校長が自らの裁量を最大限生かして学校の魅力づくりに取り組めるよう、引き続き、支援してまいります。

私学でわいせつ事件を起こした教員への対応について

Q 八子朋弘 議員

児童生徒にわいせつ行為をして懲戒免職となった教員に対し、失効した免許を再交付しない権限を都道府県教育委員会に与える新法、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律が、5月28日、参議院本会議で可決成立しました。わいせつ行為を理由に懲戒免職や訓告などの処分を受けた教員は、全国で2018年度に過去最多の282人に達し、2019年度も273人となるなど、高止まりの傾向が続いていましたが、わいせつ教員を許さないという世論の高まりを受けて、議員立法で成立しました。
また、文部科学省はそれに先立ち、わいせつ行為に及んだ教員を原則懲戒免職とするよう通知し、2020年9月には、全ての自治体で規定が調いました。免許失効者を検索できる官報情報検索ツールの検索期間を5年から40年に伸ばすシステム改修も進め、運用も始まっています。これら対策により、わいせつ教員を再び教壇に立たせない仕組みは前進しましたが、残念ながらまだまだ十分とは言えません。理由は、これら対策は主に公立学校の教員に主眼が置かれたものだからであります。
私学は、児童生徒が約130万人、在籍する教員は約8万人、公立学校とともに学校教育の根幹となっています。しかしながら、私学の懲戒解雇は報道によると、2017年度、14人、2018年度、8人、2019年度、15人、このうち、わいせつ・セクハラ行為は27人、同じ3年間の公立学校のわいせつ・セクハラ行為での懲戒免職は436人であったことと比べると、いささか少ないと思います。これは、公立と私立では同じ不祥事を起こした場合でも処分の根拠が違うためであり、私学の教員は警察が捜査をしていても退職が認められてしまうケースがあることが影響していると思われます。つまり、懲戒免職、解雇にならないわけであります。
私立は、教員の不祥事が生徒募集に直結するため穏便に処理されるケースが多いと言われており、仮にわいせつ・セクハラ行為を起こしたとしても懲戒解雇にならずに退職してしまい、結果、教員免許は失効せずに別の教壇に立つことも可能となるわけであります。果たして、これでいいのでしょうか。私はそうは思いません。
そこで、総務部長に伺います。このような実態に鑑み、埼玉県として、現在、私学のわいせつ教員対策としてどのような対策を取っているのでしょうか。また、今後、どのような対策を取っていくのでしょうか。私立は公立とは違い、私学の自主性がありますから、県として取れる対策には限界があることは理解できます。ですが、だからといって手をこまねいているわけにはいきません。
令和4年度、国の施策に対する提案要望には、わいせつ行為を行った教員への対応の厳格化が新規として盛り込まれましたが、私は私学のわいせつ教員対策についても、何らかの立法措置を講ずるよう要望すべきではないかと思っています。
また、先日成立した新法には、地方公共団体に対し、性暴力等に関する通報及び相談を受け付けるための体制整備がうたわれています。しかし、現在、教育局に設置されている教職員コンプライアンス相談ホットラインは、誰が相談できるのか、どのような相談を受け付けているかなどが分かりにくい上に、ホームページ上では目立ちません。県として一日も早く、教職員のわいせつ・セクハラ行為に関する通報窓口を設置すべきではないでしょうか。
このような窓口設置により、わいせつ・セクハラ行為を穏便に処理することが難しくなることが予想されます。結果、わいせつ教員、特に私学のわいせつ教員を教壇から排除する一つの方策になるのではないでしょうか。現在、設置されている教職員コンプライアンス相談ホットラインの運用見直しについて、教育長の答弁を求めます。

A 小野寺亘 総務部長

私立学校の教員に懲戒解雇など免許取上げの事由があるときは、教育職員免許法において、学校法人から知事への報告と、知事から免許管理者である教育委員会への通知が義務付けられています。令和2年度に国からこれらの仕組みについて周知するよう依頼があったことから、事務処理の流れを改めて確認するよう学校法人に求めたところです。これに加え、本年4月には、官報情報検索ツールを活用して教員免許状の失効・取上げの有無など、採用希望者の経歴を十分に確認すること、また、研修など予防的な取組を適切に行うことなどについて周知を行ったところです。
さらに、県では、私学団体との共催で実施している人権教育研修において、わいせつ行為により子供の人権を侵害してはならないことを徹底しています。児童生徒に対するわいせつ行為は教員として絶対に許されないことです。
引き続き、私立学校において適切な採用判断が行われるよう採用希望者の経歴の十分な確認を求めていくとともに、研修内容の充実に努めるなどしっかりと対応してまいります。

A 高田直芳 教育長

私は、子どもたちの未来を育てる立場の教職員が、信頼を寄せてくれている子どもたちに対してわいせつ・セクハラ行為を行うことは言語道断であると強く思っております。また、子どもたちがそのことを誰にも相談できずに辛い思いをすることは、あってはならないことと考えております。
議員お話しの教職員コンプライアンス相談ホットラインは、わいせつ・セクハラなど不適切な行為について、主に公立学校の教職員からの通報を受け付けることを目的に、平成31年4月に設置したものです。
このホットラインが担うべき役割を一層果たすためには、教職員はもとより子どもたちや保護者が安心して相談できること、また、ホットラインの存在を広く周知することも重要です。
そこで今後、少しでもわいせつ教員の排除につながるよう、児童生徒や保護者からの相談も対象とするなど、教職員コンプライアンス相談ホットラインがより効果的な運用となるよう見直しを図ってまいります。

再Q 八子朋弘 議員

教職員コンプライアンス相談ホットラインなのですが、先ほどの御答弁を聞いていますと、主に公立学校の教職員が対象というお話でしたが、私、このたびお尋ねしているのは主に私学のわいせつ教員の対策でございます。
この教職員コンプライアンス相談ホットラインについて、私立の教員も対象になるような分かりやすい窓口としていただきたいと思うわけですけれども、改めて御答弁をお願いいたします。

再A 髙田直芳 教育長

私立の教員も含めてという御指摘でございましたけれども、公立学校、私立学校問わず、教員のわいせつ・セクハラ行為に悩んでいる全ての児童生徒に対応できるよう、運用を改めてまいります。

子どもの居場所づくりについて

Q 八子朋弘 議員(県民)

日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われておりますが、そのような厳しい状況にある子どもたちを何とかしたいとの思いから様々な取組が行われております。
子ども食堂や学習支援を行う無料塾、プレイパーク等のいわゆる子どもの居場所づくりが代表的な取組かと思いますが、埼玉県には令和3年2月末日現在、その居場所が380か所あります。コロナ禍による影響で、ピーク時に比べ、この数字は若干減っているものと予想されますが、埼玉県はこの数を小学校区に1か所の割合、800か所まで増やしたいと考えています。
子どもたちは、地域の大人に支えられることで、自分は皆から愛される大切な存在なんだという自己肯定感を得て、生きる力、頑張る力を得ることができますから、子どもたちが歩いていける距離に、つまり小学校区に1か所、子どもの居場所を設置しようという県の目標を一日も早く達成してほしいところです。
ところで、それではあと400か所以上の子どもの居場所を県はどのように設置していこうと考えているのでしょうか。基本的には民間の力を借りて引き出すことによって子どもの居場所を設置していくのだと思いますが、県は子どもの居場所づくりスタートブックを作成し、そのノウハウを具体的に示しています。また、こどもの居場所づくりアドバイザーを任命して派遣したり、子ども応援ネットワーク埼玉を立ち上げています。
しかしながら、私は800か所の目標を達成するためには、どうも不十分に思えてなりません。ここから先はこれまでのようには設置が進まないことも予想されるため、さらに県が踏み込んで支援していく必要があると考えます。
現在、埼玉県では代表的な子どもの居場所である子ども食堂について、一般社団法人埼玉県子ども食堂ネットワークが組織され、県内から多数の子ども食堂が参加しています。そして、それら子ども食堂は、たくさんの企業から御寄付をいただいた食材等を、企業が提供してくださっている施設にストックし、必要に応じてその施設に食材を取りにいっています。
県も、この保管場所の確保が負担が大きく課題であることは認識されていると思いますが、この保管場所を県で用意していただき、その場所を単なる倉庫ではなく、子ども食堂、無料塾、プレイパーク等の日常的に子どもの居場所づくりに取り組む各種団体が意見交換したり、交流できたりするような機能を兼ね備えた中間拠点施設として活用していただくことはできないでしょうか。そのような施設ができることにより、子ども食堂と無料塾、無料塾とプレイパーク、プレイパークと子ども食堂といった連携が今以上に取りやすくなり、それぞれの活動の相乗効果が高まることが期待できます。
現在は、企業の御厚意に頼っておりますが、今後いつまでその御厚意に頼れるかは分かりません。そして何より、その施設を拠点に活動する中間支援団体が育っていき、全国子ども食堂支援センターむすびえのような団体になれば、県の目標である子どもの居場所800か所設置に大きな役割を果たしてくれるのではないでしょうか。福祉部長の答弁を求めます。

A 山崎達也 福祉部長

まず、「目標まであと400か所以上必要となる子供の居場所をどのように設置していくのか」についてでございます。
800か所の目標達成のためには、子供の居場所づくり活動に取り組みたいと思っていても最初の一歩が踏み出せずにいる多くの方に、いかに実際に行動を起こしていただくかが重要と考えております。そこで、県ではそうした方に対し、ノウハウの提供や立上げ費用の支援を行っております。
ノウハウの提供に関しては、活動を始めようとする方に、子供の居場所づくりの実践者や食品衛生等の専門家を「こどもの居場所づくりアドバイザー」として派遣しております。このアドバイザー制度による立上げ件数は、令和元年度が45件、令和2年度が40件と、コロナ禍によって活動をやめてしまう団体がある中で、新たな居場所の立上げに大きく貢献しています。
立上げ費用の支援に関しては、県社会福祉協議会と連携し、こども食堂応援基金を活用した助成事業を実施しております。
この基金は、個人や企業など民間からの寄附を財源とするもので、令和元年5月の設置以降、2年間で約2,700万円もの寄附をいただきました。
令和2年度は、14団体に対して計140万円を助成し、今年度は更に多くの団体へ助成を見込んでいます。800か所の目標達成に向け、こうした取組により民間の力を最大限引き出せるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。
次に、「子どもの居場所団体が、食材の保管場所や交流拠点として使用できる中間拠点施設を県が用意できないか」についてでございます。
県では、官民連携のプラットフォームである「こども応援ネットワーク埼玉」を立ち上げ、食材だけでなく場所のマッチングも行っております。例えば、セレモニー会社や大型商業施設など様々な企業から、倉庫や冷蔵施設、活動拠点を無償で貸与していただいております。一方、公的支援については、「むすびえ」をはじめ、居場所づくりの関係者から「公費を投じて行政主導で推進すると、活動に制約が生じてしまい、居場所の良さが失われてしまう」との声も聞いています。
保管場所や活動拠点等に関しては、現在も複数の企業から貸与等のお話をいただいているため、まずは、こうした民間の取組を後押しすることが重要と考えます。
今後も広く民間の力を活用させていただくことで、子どもの居場所の更なる拡大につなげてまいります。
次に、「中間拠点施設を拠点に活動する中間支援団体が、『むすびえ』のような団体に発展すれば、県の目標である子どもの居場所800か所設置に大きな役割を果たすのではないか」についてでございます。
議員御指摘のとおり、各地域で中間支援団体が拠点を持ち、組織化され、発展することは、子どもの居場所づくりを推進する上で大きな役割を果たすと考えます。
そこで県では、各地域の団体や企業等が一堂に会する「こども食堂フォーラム」を開催し、顔の見える関係づくりや、団体同士のネットワーク化を支援してまいりました。さらに、県内の子ども食堂やプレーパーク、学習支援等の中心的な役割を担う方々が意見交換を行う場として、アドバイザー交流会を年4回実施しております。特に、昨年度以降、コロナ禍により一つの場所に集まることが難しくなったため、交流会をオンラインで行うことで、団体間の交流を促進しております。
また、日頃からフェイスブックやポータルサイトを通じて、各団体の活動紹介や助成金情報等を発信するとともに、SNSの特長を生かし、フォロワー同士の交流も深めています。
今後も、こうした取組を推進することで、子どもの居場所団体のネットワークを強化し、800か所の目標を達成できるよう全力で支援してまいります。

児童養護施設出身者への支援について

Q 八子朋弘 議員

厚生労働省は、虐待や貧困などにより児童養護施設や里親家庭といった社会的養護で育った若者が施設などを離れた後、どのような状況にあるのか、全国実態調査を初めて実施し、4月30日、調査結果を公表しました。
その調査結果によると、社会的養護出身者の大変苦しい生活実態が浮かび上がりました。調査では、「現在の暮らしで困っていることや不安なことは」との問いに対し、33.6%が「生活費や学費のこと」と回答、また、月々の収支が「黒字」と答えたのは26.8%で、「赤字」は22.9%、「過去一年間に病院や歯医者を受診できなかった経験は」との質問に対し、2割が「あった」と回答し、その理由は、「お金がかかるから」が66.7%と最多でした。経済的に厳しい状況にあることが分かります。
調査の案内を届けられなかった対象者が全体の3分の2であることから考えると、現状はさらに厳しいことが予想されます。児童福祉法に基づき原則として18歳で自立が求められ、進学や就職を機に施設などを出る子どもが多いわけですが、経済的な問題にとどまらず、困ったときに頼れる大人が周囲におらず、孤立しているケースも多いはずです。何としても彼ら、彼女らを救済しなければならないと思います。
昨年の報道では、埼玉県が実施している民間アパートを借り上げて、進学者に安い金額で提供し、社会福祉士が相談に乗る事業が先進事例として紹介されていました。すばらしい取組だと思います。ほかにも出身者の居場所、交流場所、相談場所としてアフターケアを目的に開設されたクローバーハウス事業や、安定した生活基盤を築くため大学生等に貸付けを行う自立支援資金貸付事業等々、埼玉県は頑張っていると思いますが、県内には児童養護施設だけでも22か所があり、毎年約70名が施設を巣立っていきます。
厚生労働省の調査結果は、埼玉県にも当てはまるはずで、孤立を深めている社会的養護出身者が必ずいるはずです。そうなってくると、先ほど御紹介したとおり、埼玉県では様々な支援メニューを用意していますが、その利用率が大事なポイントになってくると思います。
事業の性格上、なかなか利用率は出しづらいとは思いますが、厚生労働省の調査では約20パーセントが「支援を受けていない」と回答しています。必要がなく受けていないのならいいのですが、そもそも3分の2の対象者に調査の案内が届けられなかった状況を考えると、せっかくの支援メニューも利用されなくては意味がありません。利用者を増やすため、どのようなアプローチを行っているのでしょうか。
また、特に自立支援資金貸付事業については、貸付けではなく給付にできないでしょうか。将来の返済の負担を心配して活用しない例が多いようであります。
そして、この質問の最後に、これら様々な支援メニューによって実際の進学率や仕事の定着率等はどのような成果が上がっているのかについても確認させていただきたいと思います。
以上、福祉部長の答弁を求めます。

A 山崎達也 福祉部長

児童養護施設出身者への支援メニューの利用者を増やすため、どのようなアプローチを行っているかについてでございます。
児童養護施設等の入所児童が施設を退所後、保護者からの支援が期待できない状況で進学や就職を継続していくことは大変な困難が伴います。施設退所後、自立の道を着実に歩むことができるようにするためには、県や関係団体が実施する様々な支援メニューに関する情報を、退所児童が求めればいつでも手に入れられる状況にあることが必要です。そこで、児童が施設を退所する際には、支援メニューや必要な相談先をまとめた冊子を必ず渡すようにしております。また、各施設に対して、施設退所後少なくとも3年間は継続して退所者の就労や就学状況を確認するとともに、メールや手紙などで定期的に連絡を取り支援メニューを伝えるなど、必要なサポートを行うよう依頼をしております。
さらに、出身施設を介さずに同じような境遇の仲間と気軽に交流したり、悩みを相談することができる、本県の施設出身者のアフターケアの拠点となる「クローバーハウス」を設置しています。この拠点の存在を含め、支援メニューについては、県のホームページを始め、県社会福祉協議会、クローバーハウスの運営団体などのホームページでも発信をしています。こうしたアプローチをしっかり行っていくことに加え、施設等関係者や利用者からも御意見を伺い、より利用がしやすい制度となるよう工夫を重ねるなど、支援メニューの利用者の増加を図ってまいります。
次に、自立支援資金貸付事業について、貸付ではなく給付にすることはできないかについてでございます。
国の制度設計のもとに、本県でも平成28年度から経済的基盤の弱い児童養護施設等の退所者に、家賃や生活費などを貸し付ける事業を行っており、令和2年度末までに150人の方が利用しています。この貸付事業は、週20時間以上の就労を5年間行うことにより返済が免除されることになっており、給付型に準じたものとなっております。
しかし、児童養護施設等の退所者は、虐待によるトラウマや何らかの障害を抱え、就労への不安がある方も多く、この事業を利用することを躊躇ことも考えられます。そのため、退所児童が安心して利用することができるように、他の都道府県と協働して、完全な給付型にするよう国に対して強く要望しているところでございます。
次に、様々な支援メニューによって、実際の進学率や仕事の定着率等はどのような成果があがっているのかについてでございます。埼玉県5か年計画では、児童養護施設退所児童の大学等進学率を平成25年度の13.9%から令和3年度に27.0%にすることを目標としています。
そこで県では、進学率を高めるために、児童養護施設の高校生の塾に要する費用や教材費、大学受験料を負担するなどの支援を行っており、直近の令和元年度の進学率は目標を上回る28.6%となっております。また、就職者の職場定着率を高めるため、県が委託している就労支援事業者が退所者からの悩み相談に丁寧に対応するとともに、職場訪問によるフォローアップをきめ細やかに行っております。
こうした取組により、退所後3年後の離職率は、調査を開始した平成26年度の退所者は53.5%でしたが、直近のデータでは47.2%となり初めて50%を下回りました。
今後も児童養護施設や民間団体と連携しながら、誰一人取り残すことなく、全ての施設出身者が希望を持って社会生活を送ることができるように積極的に取り組んでまいります。

障がい者支援について

障害者優先調達推進法の更なる推進について

Q 八子朋弘 議員

平成25年4月、障害者優先調達推進法が施行されました。この法律は、障害者就労施設等で就労する障がい者の経済面の自立を進めるため、国や地方公共団体などの公共公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的、積極的に購入することを推進するために制定されたものです。
埼玉県では、毎年、障害者優先調達推進方針を策定し、令和3年度の調達目標金額は1億300万円となっています。ちなみに、令和元年度は9,500万円の目標金額に対し、1億200万円を超える実績を残しました。
現在、埼玉県では推進方針において対象となる障害者就労施設を定めており、就労支援事業所や生活介護事業所を中心に約1,480施設、事業所等を対象としていますが、先般、埼玉県としては初めて重度障害者多数雇用事業所を認定し、要綱の整備が行われました。いわゆる普通の民間企業が認定を受けたことは法律の趣旨からいっても大変喜ばしいことだと思っておりますが、今後、いかに実効性を担保していくかがポイントであります。
そこで、福祉部長に伺います。
まず初めに、さらに認定事業所を増やしていく必要があると考えますが、広くこの法律の趣旨を民間企業に知っていただくためにどのように広報していくのでしょうか。
次に、認定を受けても仕事が発注されなければ意味がありません。令和元年度の実績を見ても、就労支援事業所や障害者入所施設への発注が多く見受けられます。今後どのようにして障害者優先調達推進法の政令に基づく事業所、つまり民間企業に仕事を出していくのでしょうか。
また、当然のことながら、この法律は市町村にも適用されており、これまでの努力もあり、令和元年度の市町村の実績は1,100件、約4億7,000万円となっておりますが、市町村によって実績にばらつきがあります。その理由として、この法律への理解がまだまだ進んでいないことが挙げられます。担当課の職員のみならず、全庁的に法律を周知していく必要があると思います。市町村への支援、働き掛けも重要であると思いますが、いかがでしょうか。福祉部長の答弁を求めます。

A 山崎達也 福祉部長

まず、「重度障害者多数雇用事業所を増やしていくため、法律の趣旨を民間企業にどのように広報していくのか」についてでございます。
重度障害者多数雇用事業所とは、障害者の雇用者数が5人以上、障害者の割合が従業員の20%以上、雇用障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上という要件をすべて満たしている場合に認定されるものです。この認定を受けることで地方公共団体、国、独立行政法人における優先調達の対象施設となります。
他方、県では障害者雇用率が2.6%以上であるなど、障害者雇用に積極的に取り組んでいる事業所を「埼玉県障害者雇用優良事業所」として認証しております。この事業者は、障害者雇用への意欲が高いことから、「重度障害者多数雇用事業所」として認定できる可能性が高いと思われます。そこで、まずは、これらの事業所に対し、優先調達のメリットを個別に丁寧にお伝えしてまいります。さらに、経済団体の御協力もいただきながらホームページやパンフレットなどを通じて広く県内の事業所にも広報し、認定事業所が増えるよう努めてまいります。
次に、「今後どのようにして障害者優先調達推進法の政令に基づく事業所、つまり民間企業に仕事を出していくのか」についてございます。発注が進むためには、優先調達の対象事業所が提供できる物品やサービスの内容を県庁内の各部局に十分理解をしてもらう必要があります。そのため、個々の事業所の情報をホームページに掲載するとともに、庁内会議で情報共有を図ってまいりました。
今後、これらの取組に加え、優先調達が進んでいる事例を事例集としてまとめ、会議を通じて情報共有するなど、調達が進むよう取り組んでまいります。
次に、「市町村への支援、働きかけも重要と考えるがどうか」についてでございます。
県では、市町村に対し、県と同様に優先調達推進方針を作成し調達目標を定め、優先調達に取り組むよう求めています。市町村全体の令和元年度の優先調達実績額は、議員お話しのとおり、約4億7,000万円であり、法律が施行された平成25年度と比較して約3倍近くに増えています。一方、調達目標額に達していない市町村は33市町村に及んでおり、市町村によって取組に差があります。こうした市町村には、先ほどの事例集を含め、県の庁内会議での情報を周知するとともに、調達実績が上がっている市町村の好事例も情報提供するなどし、優先調達の取組が進むように支援してまいります。
今後とも、県と市町村双方で優先調達が進むよう、積極的に取り組んでまいります。

触法障がい者支援について

Q 八子朋弘 議員

障がい者の社会参加が進む中で、警察官が知的障がい者と接する機会が増えています。知的障がい者は相手の主張に同調しやすく、事件に巻き込まれて事情を聞かれる際、「お前がやったのか」との問いに「はい」と答え、「やっていないのか」との問いにも「はい」と答えてしまうなど、何にでも同調してしまうことがあると言われています。また、不審者に間違われやすいといった特性もあります。
そのようなことから、知的障がい者の家族会では、理解不足から知的障がい者が不当な扱いを受けることがないよう、警察官向けの啓発活動に取り組んでおります。
知的障がい者と家族でつくる全国手をつなぐ育成会連合会では、啓発冊子「知ってほしい・知っておきたい―知的障害と『警察』」を作成し、全国の警察に配布を進めています。そして昨年、福岡県や兵庫県では地元の手をつなぐ育成会が、新人警察官や若手警察官を相手に研修会を開きました。研修を受けた警察官からは、「初めて聞く話ばかりで参考になった」「驚かせないように話す等、教わったことを現場で生かしていきたい」といった感想が寄せられたようです。
そこで、警察本部長に伺います。
現在、埼玉県警では知的障がい者に対する事情聴取をどのように行っているのでしょうか。そして、理解を深めるための研修は行われているのでしょうか。ぜひ育成会の方を招いての研修会を開催してはと思いますが、いかがでしょうか。
また、現在、行われている取調べの適正さを事後に検証できる録音、録画についても、それでは不十分であり、外国人に通訳がつくのと同様に、知的障がい者の家族や施設職員の同席を求める声もありますが、いかがでしょうか。警察本部長の答弁を求めます。

A 原和也 警察本部長

まず、知的障害者に対する事情聴取についてでありますが、現在、県警察においては、知的障害者に対する事情聴取に当たっては、御指摘の知的障害者の特性等を十分に考慮し、供述の任意性に疑問が生じることのないよう、その障害の程度等を踏まえた聴取を行うこととしております。また、逮捕又は勾留されている被疑者が知的障害者である場合は、犯罪捜査規範の趣旨を踏まえ、可能な限り幅広く取調べ等の録音・録画を実施しております。
次に、県警察における知的障害者を含めた障害者への理解を深めるための教養についてでありますが、障害者の人権を尊重し、各種警察活動において適切な対応ができるよう、埼玉県福祉部の担当職員や福祉学を専門とする大学教員などを招いての教養や、警察庁が作成した「障害者への接遇の在り方」と題する動画教材などを基に職員に対して教養を定期的に実施しているところであります。このほか、取調べに従事する者を対象とした教養の課程においても、障害者の特性等を踏まえた取調べの在り方についての指導を実施しております。
また、御指摘の「埼玉県手をつなぐ育成会」の方を招いての研修会については、今後同会からの申出を踏まえ、検討を行う考えであります。
最後に、取調べにおける知的障害者の家族や施設職員の同席についてでありますが、先ず、取調べの録音録画については、供述の任意性や信用性の立証のみならず、取調べの適正さを図るものであると認識をしております。被疑者の取調べは、事案の真相を解明して被疑者の犯罪の嫌疑を明らかにするために証拠資料を収集するという捜査の一環であり、事案の真相を明らかにするため重要な役割を果たしているところ、取調べにおける第三者の立会いは、その必要性と捜査への影響等と総合的に勘案しつつ、特に慎重に検討する必要があると考えております。