県政の取組の成果と今後について(知事)
知事としてのこれまでの成果と県政への想いについて
Q 松坂喜浩 議員(県民)
上田知事は、先週の土曜日、15日に記者会見し、「任期満了をもって知事の仕事を終了させていただく。やり残したことはない」と述べられ、8月に執行される知事選に立候補しないことを表明されました。そのコメントの一つに「改革の成果と方向性がきちんと出ている」とありました。
そこで、4期16年間、知事としての成果とこれから将来に向けて県政への思いについて、知事にお伺いいたします。
A 上田清司 知事
まず、「県政の取組の成果と今後について」のお尋ねのうち、「知事としてこれまでの成果と県政への想いについて」でございます。
16年前の就任以来、「県庁を優れた経営体とする」、先進的な政策で「埼玉から日本を変える」をスローガンに全力で取り組んでまいりました。
「県庁を優れた経営体」にするためには、まず手掛けたのは職員の意識改革でございます。
公務員の世界はとかく「赤字が苦にならない」、「競争原理が働かない」という二大欠点があると私は思っております。
1つ目の「赤字が苦にならない」の典型的な例は地方自治体がその運営に大きく関わる出資法人や一部事務組合であります。
全国的にもこうした法人などは大きな赤字を抱え清算されたり、ただ同然で民間に売却されたりする例などが大きな問題として取り上げられていました。
知事就任時の埼玉県も例外ではありません。
例えば、さいたまスーパーアリーナを運営している株式会社さいたまアリーナですが、平成15年度は県が4億8,000万円の補給金を支給する形で赤字を補てんしておりました。
ある意味では、交通の利便性や施設のすばらしさなどを積極的にアピールし売り込むことなど積極的に職員に取り組んでいただいて経営改善に取り組んでまいりました。
その努力の結果、平成17年度に黒字に転換し、平成18年度以降の県に対する納付金の累計総額は83億8,580万円になっております。
収益の改善とともに年間観客動員数も180万人の横浜アリーナを上回る300万人を超え、「いつかはさいたまアリーナで」という正に国内トップレベルの人気を誇るアリーナに成長しております。
同様に赤字はだめだと職員に認識させることで埼玉高速鉄道株式会社や埼玉県浦和競馬組合など多くの法人等が黒字に転換いたしました。
2つ目の「競争原理が働きづらい」要因の一つに担当者が2年程度で交代し、事業全体を見ている人がいないことがままあります。
私は職員に日々の業務を見つめ直す「虫の目」、全体を俯瞰する「鳥の目」、時代の流れを読む「魚の目」の3つの目で見ていくことを説いてまいりました。
例えば、本県の刑法犯認知件数があります。職員の分析は前年度との比較の中で見ていけば少し増えたという感覚で、漫然とした認識になってしまいます。
しかし、20年というタイムラグで見ていきますと間違いなくすごい勢いで犯罪が増えています。
例えば、昭和60年から20年間の件数をグラフ化したら、60年は約6万件、平成16年には約18万件、現在では刑法犯認知件数は60,001件という形で確実に減ってきております。
また、高校中退率を都道府県別で比較をいたしました。埼玉県は46位でございました。現在では8位になっております。
あるいはまた公立中学校の不登校でも市町村別で比較を通じて、しっかりと現状を認識することが、まずは大事だということを訴えました。
その結果、埼玉県は平成18年度の都道府県別中学生の不登校率で全国40位でしたが、現在では9位になっております。
こうして公務員はやや、やったことに満足をする、結果を丁寧に追っかけてる人が少なかったというふうに私は認識をしておりました。
そこで職員には「問題の本質」を見極めること、更に「政策ターゲットの規模感」というものも意識するように申し上げました。
「問題の本質」を突いた成功事例としては、「埼玉県方式」による糖尿病重症化予防があります。
まず、糖尿病が重症化し人工透析にならない方法はないかと細かく分析をいたしました。
具体的な手法としては、まず国民健康保険の健診データ等を活用しリスクの高い方を抽出することにしました。
このうち医療機関を受診していない方には県医師会や専門医と協働して受診を促すとともに、保健指導により人工透析への移行を防止しています。
現在は県内市町村で展開され、国の「骨太の方針2018」で全国に横展開すべき先進・優良事例として埼玉県が名指しで紹介されています。
また、貧困の連鎖を断ち切るために平成22年度から全国に先駆けて実施しました生活保護世帯の子供への学習支援、いわゆるアスポート事業ですが、これは国を動かし生活困窮者自立支援法の制定につながっています。
次に「政策ターゲットの規模感」でありますが一番いい事例が「埼玉県発達障害支援プロジェクト」だと思っております。
本県の発達障害児は約6万人と推計され早期診断による適切な支援が必要ですが、早期発見に向けたこれまでの研修体制は市町村毎に数人ずつという全く規模感がありませんでした。
各市町村、保育園、幼稚園や小学校から3人以上の教職員に研修を受けていただくことで平成23年度から5年間で1万549人の支援人材を育成し早期発見の成果を上げています。
毎年1,000人くらい補充することで、この1万500人くらいを確保しています。
その後も発達障害総合支援センターも開設し総合的な支援体制を整えています。
このプロジェクトは先に話しました糖尿病重症化予防や生活保護世帯の子供への学習支援同様、全国知事会の優秀政策に選ばれています。
私は埼玉県庁を優れた経営体とするため、成果を上げ続ける仕組みを職員の意識に根付かせたことが、最大の成果だというふうに思っております。時々先祖返りをする職員もいないことはないですが。
今後も問題の本質を突き、成果を出すことを常に意識する経営体としての埼玉県が成長することを望んでいます。
2025年問題、介護人材確保などについて
Q 松坂喜浩 議員(県民)
2025年問題、あと6年でその年を迎えます。改めて後期高齢者が急激に増加し、現在抱えている少子高齢化問題に拍車をかけることになります。医療の問題、介護の問題、認知症高齢者の増加、社会保障費の問題、死の問題、住まいの問題など2025年は始まりに過ぎず、この問題は更に進行していきます。
こうした問題に立ち向かうべく上田知事は、その対策として医療や介護に係る人材の確保、地域包括ケアシステムの構築支援、健康長寿埼玉プロジェクトや働くシニア応援プロジェクトの推進など大きな成果を上げてきました。いずれの取組も今後一層推進していくことが期待されますが、私は特に介護人材の確保が重要だと考えます。
急速に高齢化が進む本県において、県民一人ひとりが必要な介護サービスが受けられるよう、介護人材を確保していくことは喫緊の課題であります。昨今、様々な産業において人手不足が深刻化する中、今年4月現在の介護サービス業の有効求人倍率は4.42倍となっており、介護分野での人材確保は今後一段と厳しくなることが想定されます。そうした中、国では外国人介護人材を確保するため、平成29年9月から留学生が介護福祉士を取得した際に介護の在留資格を認め、さらに本年4月からは新たな在留資格、特定技能1号の制度が施行されました。
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少していく中で、人材を確保するために介護現場への就労支援と就労した方の離職を防ぐことの2つの視点が重要だと考えます。これまで本県は介護職員しっかり応援プロジェクトを立ち上げ、介護職のイメージアップや魅力ある職場づくりの促進、介護職員の給料アップにつながる様々な取組を行っており、私もこの取組を評価しているところであります。
また、他県の取組になりますが、神奈川県では「かながわベスト介護セレクト20」を立ち上げました。これは県内の約8,000の介護サービス事業所を対象に、介護サービスの質の向上や人材育成、処遇改善に顕著な成果を上げた事業所を表彰する制度で、セレクト20に選定された事業所には何と奨励金100万円が交付されるというものであります。こうした頑張った事業所が報われるという制度も私は必要と考えております。
介護現場における人材不足は年々深刻化しており、介護サービス事業者からは、「これ以上、介護保険施設を増やさないでほしい」という声があるのも事実であります。いずれにしても、他の都道府県より速いスピードで高齢化が進む埼玉県において、来るべき超高齢化に対応できるようにしていく必要がございます。
そこで、まず、介護人材確保の問題をはじめとした2025年問題に取り組んでこられた全体的成果について、また、その先を見据え、更にどのようなことに取り組むべきと考えているのか、知事の見解を伺います。
A 上田清司 知事
2025年問題に取り組んだ全体的成果についてでございます。
介護人材の確保については、「確保」「定着」「介護のイメージアップ」という3つの視点で事業に取り組んでまいりました。
例えば、人材の確保という点では介護未経験者を対象に初任者研修を受講していただき、施設での就労体験を経て就職を支援しています。
介護福祉士を養成する学校の学生に対しては、卒業後県内の施設で5年間働くと返還が免除となる修学資金の貸付も行っております。
また、人材の定着という点では介護ロボットの導入促進による職員の負担軽減や介護福祉士の資格取得への補助などによるキャリア・アップに取り組んでいるところです。
さらに、関係団体と一緒に実施している「介護職員しっかり応援プロジェクト」では介護のイメージアップや職員のやりがいを高める取組などを進めているところです。
特に、介護現場の一線で活躍する職員からなる介護の魅力PR隊は中学校や高校で出張介護授業を行って、介護職の魅力や大切さを分かりやすく伝えていただいているところです。
このほかにも、都道府県初の取組として介護職員合同入職式を関係団体の皆さんと実施し、私も出席し、介護職員の皆さんにエールを送っているところです。
また、頑張った事業所が報われる制度が必要との議員のお考えにも同感です。本県でも職員の育成などに優れた取組を行っている事業所を優良事業所として認証をしております。
国でも平成30年度から利用者の要介護度や心身の機能が改善された介護事業所に対する介護報酬の加算の制度も創設されております。
この結果、平成24年から平成29年にかけて特別養護老人ホームの介護職員の増加数は本県では3,663人、伸び率は40.2%であり、ともに全国第1位です。
あわせて、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるため、市町村と連携して「地域包括ケアシステムの構築」を進めているところです。
医療と介護の連携については、実施主体の市町村には医療の専担組織がなく、地元医師会との調整が難しいと言われていました。
そこで、県医師会と共同で県内30の郡市医師会単位に医療と介護の相談窓口となる「在宅医療連携拠点」を設置いたしました。
この取組は全国でも例がなく、これまで培った市町村長や県医師会など関係団体との強い信頼関係の中で作られたものだと思っております。
ケアマネジャーからは医師との連携がスムーズになったとの声をいただくなど、地域の医療・介護連携に重要な役割を果たしています。
また、国は地域包括ケアシステムは御当地主義であるとし、具体的なモデルを示していませんでした。
そこで、市町村からの要請もあり、平成28年度から4市町で自立促進、介護予防、生活支援のモデル事業をそれぞれ実施していただきました。
事業を通じて得られた取組の手法を他の市町村に提示し、地域の実情に応じてアレンジしていただいております。
さらに、平成30年度からは県社会福祉協議会の職員や理学療法士などの専門職で構成する「総合支援チーム」を市町村の要望に合わせて派遣し、伴走型で支援をしております。
こうしたきめの細かい支援を行った結果、2025年に向けて地域包括ケアシステム構築の基礎固めができたものと思っております。
次に、その先を見据え、さらにどのようなことに取り組むかについてでございます。
2015年に24.8%だった高齢化率が2040年には34.2%にまで上がると推測されていますが、数字だけを考えていてはいけないと思います。
この課題を解決するには、発想の転換が必要です。
生産年齢人口は15歳から64歳となっていますがこれを仮に20歳から74歳まで、実際15歳から20歳まではほとんど働いていませんので20歳からいわゆる健康寿命、現在74歳でありますので、74歳までと改めると日本は2040年の段階で生産年齢人口の割合が世界のトップクラスになるという数字上の非常に明るいものが出てまいります。
県ではそういう意味で健康寿命の延伸を図るため、平成24年度から「健康長寿埼玉プロジェクト」を推進していますし、高齢者は「支えられる側」だけではなく「共に支える側」という考え方に立つことも可能ではないかというふうに考えております。
高齢者の潜在的な力を最大限に生かすため、まさしくシニアの可能性に注目して、平成28年度から「働くシニア応援プロジェクト」にも取り組んでいるところでございます。
こうした視点でこれまでの施策を更に拡充していくことで持続可能で活力のある社会を築いていくことができると私は思っております。
8050問題に対する取組について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
2025年問題とともに深刻化しているのが8050問題、7040問題への対応です。昨今、川崎市での事件をはじめとした相次ぐ事件により浮き彫りになった引きこもりの長期化、高年齢化、そして社会的孤立が問題となってきています。介護、健康、経済的困窮など様々な問題が複合化し、日常生活が追い詰められるまで表面化しない社会的孤立が特徴であり、中には経済的に裕福な家庭であっても、複雑な子供の孤立から引き起こす事件もありますが、収入のない50代の子と80代の親の世帯が親子共倒れになるなど8050問題は深刻です。
その背景には助けを求めないまま、あるいは求めたにもかかわらず孤立せざるを得ない家族の姿があります。経済的にも精神的にも限界を超えたところで、思い余って事件を起こすという最悪の状態だけは何としても避けなくてはなりません。支援してくれる団体の育成も一考と考えますが、引きこもりという言葉が社会に知られるようになってからおおよそ20年、引きこもりの当事者を持つ7、80代となり、経済的、精神的に限界を超えている親が相談しやすい環境づくりが大切であると考えます。
そこで、県としての引きこもりの解消に向けた相談体制とその取組状況について、保健医療部長にお伺いします。
A 関本建二 保健医療部長
県では、ひきこもりの当事者や家族などが相談しやすいよう平成27年11月から「埼玉県ひきこもり相談サポートセンター」を設置しています。
センターでは専門知識を有するコーディネーターが、相談内容に応じて助言をし、平成30年度は延べ1,002件の相談を受けております。
このほか、13カ所の保健所や精神保健福祉センターでも、延べ1,933件の相談と142件の訪問、さらに臨床心理士などによる専門相談も行っております。
また、民間の支援団体が、当事者の「集いの場」を県内各地で運営したり、家庭などへの訪問を行っております。
平成30年度の「集いの場」の利用者は延べ2,225人、訪問は337回行われ、県はこうした取組に財政支援を行っています。
議員御指摘のようにひきこもりの長期化、高年齢化はますます深刻な問題となってきています。
ひきこもり相談サポートセンターにおける平成30年度の相談件数のうち、50歳以上の当事者についての相談は1割に満たない状況でございます。
これは高齢になった家族に相談窓口や支援を行う団体が十分知られていないことが一因と考えられます。
このため、まずは高齢者に身近な民生委員や介護関係職員などに、ひきこもりに悩む家族や当事者への支援があることを学んでいただくことが有益です。
支援につなげるための研修の機会を設けたり、広く県民に知っていただく周知活動を強化するなど、高齢者が相談しやすい環境づくりをさらに進めてまいります。
がんゲノム医療推進に向けた取組について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
がんは、早期発見、早期治療により死亡率の低減が図れることから、早期発見に必要ながん検診の受診率を向上させることが大変重要であり、昨年9月定例会の一般質問にてがん検診の受診率アップに向けての施策を提言させていただきました。その結果、今年度の新規事業として、市町村がん検診データ分析事業や成果連動型事業所インセンティブ事業などが取り入れられました。さらには、本年度の実績を踏まえて埼玉県国民健康保険保険給付費等交付金も見直されることになります。がんの罹患率につきましては、単年度ですぐに改善されるものではありませんが、埼玉県としての成果が5年以内に出てくるものと大いに期待をしています。
さて、今回の質問は、がんに罹患してしまってからの治療についてであります。日進月歩のがん医療において、現在最も進展が期待されているのが、遺伝子の集合体であるゲノムの情報に基づき、一人ひとりに最適な治療を行うがんゲノム医療であります。がんゲノム医療では、がん細胞を発生させている遺伝子の変異に応じた抗がん剤や治療方法を選択することによって、これまでの治療よりも効果が高く、副作用を減らすことができると言われております。また、患者のゲノムデータを蓄積していくことで新薬の開発に生かしていくことも期待されます。
国では、第3期がん対策推進基本計画に位置付けて重点的に取り組むこととし、昨年中には中核拠点病院や連携病院が整備され、全都道府県でがんゲノム医療が受けられるように体制が構築されました。さらに国では、中核拠点病院に次ぐ施設として、新たにがんゲノム医療拠点病院を全国で30カ所程度設置する方向を打ち出すなど、更に取組が加速されると聞いています。
県内のがんゲノム医療の提供体制は、県立がんセンターをはじめ5病院が連携病院となっています。がんゲノム医療の検査や治療をより受診しやすくするためには、日頃は身近な地域の病院で治療を受けながら、必要なときには県内でがんゲノム医療を受けられる仕組みが求められています。県立がんセンターは、がん専門医療機関として高度先進医療の提供を行い、県内のがん医療の中核的な役割を担っています。
がんゲノム医療に対しても同様に中核的な役割を担い、がんゲノム医療の推進にしっかりと取り組むことが必要と考えますが、県立がんセンターにおけるがんゲノム医療への取組はどのようになっているのでしょうか。また、今後どのように取り組んでいくのか、病院事業管理者にお伺いいたします。
A 岩中 督 病院事業管理者
まず、県立がんセンターにおけるがんゲノム医療への取組はどのようになっているのかについてです。
がんゲノム医療の体制は、専門家による検討会を実施し治療方針を決定する中核拠点病院と、中核拠点病院と患者情報を共有して診療等を行う連携病院の2階層となっております。
がんセンターは、中核拠点病院である東京大学医学部附属病院で決定した治療方針に基づき、連携病院として患者さんに適切な治療を行っています。
これまでがんゲノム医療の対象となった患者数は25症例となり、連携病院の中で上位となっています。
また、効果が見込まれる治療薬が見つかり、治療を開始した患者さんがいらっしゃるなど、がんゲノム医療の成果が着実に表れています。
次に、今後がんゲノム医療にどう取り組んでいくのかについてです。
がんセンターは、この9月から新たに整備される予定の拠点病院の指定を目指しており、拠点病院の施設要件に相当するがんゲノム医療や遺伝カウンセリングの体制などは、既に整え終えております。
拠点病院の指定を受けることにより、がんゲノム医療を必要とする県民が、受診から治療までの過程を県外に通院することなく、がんセンターで一貫して受けることが可能になります。
県立病院としてこれまで培ってきたがん治療の経験を生かしてがんゲノム医療を提供し、県内のがん医療の向上に貢献してまいります。
児童虐待防止対策について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
この質問につきましては、外部団体から執行部へ要望書が提出され、回答もいただいていますが、改めて質問させていただきます。
平成29年度に県内児童相談所が受け付けた児童虐待件数は1万3,000件を超え、前年度に比べ約1,750件増加するなど、この5年間で約2.8倍となっています。相談内容も複雑、困難化しており、初期の段階から適切に対応していくためには、児童相談所の体制強化などが急務となっています。こうした中、国においては児童相談所強化プランを策定するとともに、児童福祉法の一部改正を行い、児童相談所の体制や専門性の強化など児童虐待に関する対策の強化に向けた施策を講じてきました。
また、昨年、東京都目黒区において当時5歳の女児が保護者からの虐待により亡くなった事件をきっかけに、政府は同年7月に関係閣僚会議で、児童福祉士を2022年までに約2,000人増員することを柱とした緊急総合対策を決定いたしました。しかしながら、千葉県野田市や北海道札幌市などでも同様の事件が相次いでおり、今後二度と子供の命が失われる痛ましい事件が繰り返されることのないよう、児童虐待防止対策の更なる強化を図る必要があります。
そこで、次の2点についてお伺いいたします。
1点目は、児童相談所の体制強化について。複雑、困難化する児童相談に対応するため、児童福祉司及び児童心理士を増員することと、一時保護が必要な児童の増加に対応し得る一時保護所の拡充整備及び増員をすることについて。
2点目は、保護された子供の受皿の充実、強化のため、里親委託やその推進や児童養護施設等における家庭的養育の推進を図ることとされています。さらに、社会的養護が必要な児童の最善の利益の実現に向け、県の実情を踏まえた県推進計画の策定に取り組むとありますが、今後の見通しについて。
以上の2点について、福祉部長にお伺いいたします。
A 知久清志 福祉部長
まず、「児童福祉司及び児童心理司を増員すること、一時保護が必要な児童の増加に対応し得る一時保護所の拡充・整備及び増員について」でございます。
増加する虐待通告に迅速かつ的確に対応するため、児童相談所では今年度、児童福祉司35人を、児童心理司7人を増員いたしました。
児童虐待防止法が制定された平成12年度と比べると、児童福祉司は、2.6倍の197人に、児童心理司は2.8倍の55人になっています。
重篤な事件が後を絶たないため、国は児童相談所等の体制を強化するためのプランを策定しました。
県といたしましては、国が定めたプランに基づき必要な職員の確保に今後も努めてまいります。
また、児童虐待通告の増加に伴い、保護を要する児童も増えています。
県所管の4カ所の一時保護所の定員は120名ですが、入所率は9割と高い状況です。
一時保護の必要性が高まる中、一時保護所の新設に向けた検討を進めております。
児童養護施設3カ所においても一時保護専用施設18名分を設けておりますが、今年度新たに2カ所12名分を確保し受け皿の拡充を図ってまいります。
次に、「社会的養育推進計画の策定の見通しについて」でございます。
社会的養育推進計画は、国の新しい社会的養育ビジョンの理念である家庭養育優先の原則を実現するため、都道府県が地域の実情に応じ策定することとなっています。
具体的な内容といたしましては、子供が家庭に近い雰囲気で暮らせる里親委託の推進や、施設で生活する場合にも家庭的な環境で過ごせる施設の小規模化などでございます。
今後の見通しといたしましては、里親会、施設関係者などで構成される検討委員会の意見や子供たちなどの声を反映させながら、今年度中に計画を策定したいと考えております。
特別養子縁組の推進について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
特別養子縁組の対象年齢を、原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げる改正民法が今月7日の参議院本会議で与党などの賛成多数で可決成立いたしました。制度見直しは昭和63年の導入以降初めてであり、公布から1年以内に施行されることになります。改正法は、民法の規定で15歳になると各種手続で本人の意思が尊重されることなどを踏まえ、対象年齢の上限を定め、例外的に15歳から17歳の縁組も本人の同意などを条件に認められるとされています。
さて、昨年9月定例会で特別養子縁組を行う県民活動をサポートする必要性について質問をさせていただきました。答弁では、民間団体とより連携をして特別養子縁組制度の仕組みや意義を広く周知するなど、もっと団体が活動しやすいような環境づくりをサポートしていくと回答いただいています。
改めて特別養子縁組制度の利用促進が求められる背景には、深刻化する児童虐待問題があります。これだけ児童虐待に関する重大な事件が発生しているにもかかわらず、最近でも同様の事件が相次いでいる状況を考えると他人事ではありません。まず、虐待によって死亡する子供の年齢で最も多いのは0歳で、全体の約半数を占めていると言われております。その多くは生後すぐに母親によって命を奪われるケースであり、若い母親、未婚の母親が加害者となる事例が多くなっています。予期せぬ妊娠を誰にも相談できず、中絶できる時期も過ぎ、追い詰められた結果の悲劇であることも否めません。妊娠中からこのような女性の相談に乗り、自分で育てるのが困難な場合に養子縁組などもあっせんをする体制があれば、母子ともに救済できる可能性が高まります。
ここで重要な役割を果たせるのが民間団体であります。例えば、愛知県の児童相談所や産婦人科医会が行っている赤ちゃん縁組は30年以上の実績があり、最近ではNPOなどの民間団体が積極的に取り組み、養子縁組の3分の1は民間団体でのあっせんであると聞いています。
県でも昨年度から妊産婦支援による養子縁組推進事業がスタートいたしました。今後、特別養子縁組など子供の家庭養育の推進が図られることを大いに期待しています。
そこで、妊産婦支援による養子縁組推進事業の取り組み内容とその成果について、福祉部長にお伺いいたします。
A 知久清志 福祉部長
まず、妊産婦支援による養子縁組推進事業の取組内容についてでございます。
この事業は、経済的な問題、家族のサポート不足、性被害など様々な問題を抱えた妊産婦に対し、看護師やソーシャルワーカーなどが養育や養子縁組の相談・支援を行うものです。
言うまでもなく、子供にとって実親と暮らすことは一番望ましいことであり、養子縁組ありきではなく様々な相談に対応しています。
相談の中で、自ら子育てをするという選択をした方には、子供の健全な成長のため、市町村など関係機関と連携して必要な子育て支援を行います。
一方、自らが子育てをすることが難しい場合には、児童相談所と連携して特別養子縁組に向けた支援を行います。
次に、事業の成果でございます。
精神的な問題や経済的な困窮を抱える妊婦も多く、市町村の保健師と一緒に家庭訪問を行ったり、生活保護の担当者と連携するなど、きめ細やかな支援を行いました。
こうした支援を継続して行った結果、平成30年度は、126人の子供が産まれ、そのうち、5人が特別養子縁組となりました。
今後も、県では妊娠・出産に悩む女性を支援するとともに、特別養子縁組制度の仕組みや意義を県民に広く周知してまいります。
待機児童解消に向けての施策について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
平成30年4月1日現在、県内保育所等の待機児童数は前年度に比べ294名増加し、1,552人となっています。また、待機児童にカウントされていない、いわゆる隠れ待機児童数は待機児童の約3.7倍の5,785人となっています。この数字が表わすように、待機児童数及び隠れ待機児童の人数はまだまだ多い状況にあると言わざるを得ません。そこで、引き続き多様化する利用者のニーズに対し、多様な選択肢を用意することにより、全ての子供が希望する保育園や認定こども園に入所できるような、より良い保育環境を確保するための施策を行う必要があると考えます。
待機児童解消に向け、引き続き県及び市町村が連携し、より良い保育の質、環境を確保しつつ、保育所や認定こども園等の整備、拡充を求めることについて、福祉部長の見解をお伺いいたします。
A 知久清志 福祉部長
待機児童解消に向け、市町村と連携して保育所や認定こども園の整備などを進めた結果、平成29年度、30年度とそれぞれ約7,000人分の保育サービスの受入枠を拡大しました。
これにより、平成31年4月の待機児童数は現在精査中ですが、昨年4月1日現在の1,552人から減少する見込みでございます。
令和元年度も、7,000人分の受入枠拡大を図るための予算を計上しております。
一方で、待機児童解消は、保育サービスの拡充だけでなく、質の向上の両輪で取り組む必要があります。
県では、新卒保育士に対する就職支援や研修等による専門性の向上など保育士の確保・定着と保育の質の向上に向けた総合的な取組を推進しています。
引き続き、待機児童問題の解消に向けて、少子化対策協議会を通じて市町村と十分に意思疎通を図り、保育の質を確保しながら、保育所の整備などを進めてまいります。
特別支援学校卒業後の進路について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
昨年9月定例会にて、医療的ケアが必要な肢体不自由な方々も含めた生活介護事業所利用者への支援について質問させていただきました。平成30年度の県立特別支援学校高等部の卒業生は1,096人でしたが、進路先の主な内訳は、一般就労361人、就労継続支援A型24人、就労継続支援B型232人、生活介護事業所283人となっています。
今回は、卒業後に車椅子、医療的ケアが必要な子供たちを受け入れてくれる事業所や医療的ケアに対応できる放課後デイサービスの不足を何とか改善できないかと、生徒及び保護者団体から要望をいただいてきましたので、そうした声を踏まえて質問させていただいております。
まず、私はこうした実情の背景といたしまして、医療的ケアに対応できる看護職員が不足しているために起きてしまっているものと考えています。生活介護事業所において生活介護を行う場合、現在の法律上では6対1、つまり6人に対して生活支援員又は看護職員1人の体制が最低限求められています。そうした中、重度障害者を一定以上受け入れ、生活支援員や看護職員を手厚く配置している場合には人員配置体制加算が受けられます。実際に加算されている給付費の基準は、事業所の経営実態調査などに基づいて国が定めていて、3年ごとに見直されています。平成30年度の給付費の改定では、生活介護事業所において医療的ケアを必要とする障害者の利用に必要な看護職員の配置加算が拡充され、強度行動障害といった重度の障害者を支援する加算も創設されました。しかし、この全てが国の施策に頼っているものであり、現場の実情からはむしろかけ離れているものと言わざるを得ません。
そこで、必要とされる生活支援員及び看護職員の不足を県独自で補う体制整備も必要と考えますが、福祉部長の見解をお伺いいたします。
A 知久清志 福祉部長
医療的ケアを必要とする重度の障害児者の受入れ施設の確保は、県といたしましても重要と認識をしております。
生活介護事業所は、障害者に対し食事や排せつなどの介護や日常生活上の支援を行う通所施設であり、障害の重い方に対応できるよう生活支援員のほか看護職員も配置されています。
平成31年3月末で県内に290カ所あり、前年度末と比べ31カ所増加しております。
近年、医療的ケアを必要とする重度の障害者が増加しており、受入れ施設のさらなる確保が求められています。
そのためには、利用者の状況に応じた職員の配置ができるよう、給付の基準を見直していく必要があります。
これは全国的な課題であり、国の制度において解決すべきものと考えますので、他の都道府県とともに給付費の増額など必要な改善を国に要望してまいりました。
その結果、平成30年度の給付費の改定では、看護職員を複数配置している施設に対する加算の拡充などがされました。
今後とも障害者が地域で安心して暮らせるために必要なサービスが提供されるよう、障害者やその御家族、事業者の声を聞きながら、給付費の見直しについて国に要望してまいります。
持続可能な行政サービスの推進について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
市町村は住民に最も近い基礎自治体であり、地域の行政課題を的確に捉え、中長期的視点に立った行政サービスを提供していくことが求められています。地方分権の進展により、現在、市町村は多くの事務権限を受けている一方で、財源や人員体制の制約から持続的かつ安定的に行政サービスを提供し続けることが難しいこともあると聞いています。基礎自治体を取り巻く環境が厳しさを増す中、住民ニーズの多様化などからより細やかな行政サービスの提供が求められているところに、今後、市町村が自治体経営を行っていく上で難しい部分があるのではないでしょうか。
また、一口に市町村といっても規模や地理的条件、企業立地など抱える実情は様々であり、人口減少時代にあっても県民が等しく行政サービスの恩恵を受けるためには、市町村の個々の実態に合わせて支援する取組が必要となります。
広域自治体として市町村の取組を支援する役割を担う県への期待は、今後更に高まっていくと考えます。人口が増加する社会から人口が減少する社会への転換期を迎え、将来にわたり市町村が行政サービスを持続的に提供できるようにするには、広域自治体としての役割として県が地域や市町村の実情を把握し、広域的視点から市町村と積極的に協力し、諸課題に対応していくことが重要と考えます。一例ですが、基礎自治体の総合振興計画及び都市計画マスタープランに位置付けられた土地利用計画による開発計画と、自治体が持続可能な地域づくりを目指す方針、実現に向けての前向きな支援などが期待されます。
そこで、人口減少、超高齢社会の中にあって、それぞれの地域の課題を抱えながら持続的に行政サービスを提供していくことが求められる市町村の支援に向け、県としてどのように取り組んでいくのか、上田知事の見解をお伺いいたします。
A 上田清司 知事
本県は現時点で緩やかな人口増加が続いておりますが、概ね圏央道以南では人口が増え、圏央道以北では減っているなど、状況が地域によって異なっております。
2045年までの30年間の将来人口推計では、比企地域は26.6%の人口減少が見込まれる中で、同じ比企地域でも滑川町は6.9%の増と、正に市町村によって状況は様々です。
市町村は住民に最も身近な行政サービスを提供する基礎的自治体として、まずはそれぞれの状況を踏まえ、主体的に施策に取り組んでいくことが重要であると思っております。
一方で県は広域自治体として、広域にわたる行政を担うとともに、市町村の事務を補完・支援することも重要な役割です。
これまでも地域振興センターでは県と市町村のつなぎ役として、個々の市町村の相談に丁寧に対応してまいりました。
また、県と市町村、地元企業からなる「地域の未来を考える政策プロジェクト会議」を開催し、地域共通の課題への対策を検討するとともに、協働して事業を実施するなどの支援も行っております。
人口減少が著しい秩父や比企地域では、若者の地元企業への就職を目指す就職面接会や移住を促進する移住セミナーなどを合同で開催しています。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の射撃会場となる朝霞市を含む南西部地域では、「ねぎ」の形をしたビームライフル銃である「ねぎライフル」を活用した気運醸成なども行っております。
県央地域では4市1町が一体となった暮らしやすさをアピールする冊子を作成するなど、子育て世代に向けた発信力を強化しています。
さらに、県が仲介役になることで複数の市町村の交流も活発に展開されてきております。
例えば、県内の都市部と農山村部の間で和光市と小川町などの3町村、また、朝霞市と越生町が連携協定を締結し、交流を開始しました。
本年5月には県の提案により、特色のあるバラ園を持つ伊奈町、毛呂山町、川島町のバラを通じた相互交流事業が始まり、スタンプラリーなどの事業が実施されております。
県内だけではなく、埼玉県町村会と東京都特別区長会の間でも連携協定が締結され、皆野町と台東区浅草、越生町と豊島区をはじめ、個別の交流が進んでおります。
加えて、市町村の要請に応じて市町村の計画作りについても検討段階からサポートを行っております。
具体的には市町村のまち・ひと・しごと創生総合戦略や都市計画マスタープランの策定に県の職員が参加し、広域的視点からの助言を行っております。
県として地域の実情を十分に踏まえ、共に知恵を出し合いながら、市町村が持続的に行政サービスを提供していけるよう、しっかりサポートしてまいります。
専門的分野における指定管理者の在り方について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
県は、平成30年度に9施設の指定管理者の選定を行い、新たな体制で令和元年度の業務がスタートいたしました。この9施設の内訳は、公募した施設が4施設、随意指定した施設が5施設となっています。今回の質問は、指定管理者の指定における随意と公募の考え方について伺いたいと思います。
まず、随意指定とは、施設の特殊性などから非公募により指定管理を指定するものですが、公募の中にもその特殊性が高いと思われる施設もあります。今回公募したうちの2施設について、まず、児童養護施設いわつきは、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を必要とされる児童を入所させ、これを養護し、併せて退所後の相談、その他の自立のための援助を行う施設であり、その特殊性は高いと考えます。
次に、こども動物自然公園は、地球上の生き物たちを世界各国の動物園とつながって守っていくという使命を持ち、子供の頃から動物愛護と命の大切さを学ぶことができる施設でもあり、スタッフの努力によってその運営は高く評価されています。さらに小動物の導入や持続可能な繁殖、教育、研究の取組を更に進めるため、昨年の11月にWAZA、これは世界動物園水族館協会への加盟を申請し、そしてこのたび厳しい審査をクリア、同協会への加盟が認められました。この加盟団体は、日本国内ではこども動物自然公園を含めて10団体しかありません。この施設は私の地元でもあり、今回の加盟により世界水準の動物園として認められたことはとても誇りに思います。埼玉県としても誇れる施設として広くPRしていかなければならないと考えます。
こうした特殊性の高い施設の公募による指定管理について、様々な手続、申請等にはどの程度の事務的な作業がかかるのか計り知れませんが、大切な業務推進に大きな足かせとなっていることも事実でもございます。そのため、こうした施設は公募で選定されなくても随意指定でもいいのかと思いますし、さらに言えば直営で運営してもいいと私は考えます。
そこで、こうした専門分野における指定管理の在り方について、企画財政部長の見解をお伺いいたします。
A 石川英寛 企画財政部長
指定管理者制度は、民間の能力を活用し、サービスの向上や効率的な施設運営を図ることを目的としています。
そのため、指定管理者の選定にあたっては、競争性を高め、幅広い選択肢の中から最も適した指定管理者を選ぶように、公募を原則としております。
各施設の選定方法については、外部有識者が入った委員会における検証を踏まえて決定しております。
その結果、県が政策を遂行する上でイニシアティブをとるべき場合や、施設の特殊性から他の事業者の参入が見込めないなどの場合には例外的に随意指定としています。
したがって、特殊性の高い施設であっても、当該施設の運営を的確に担える事業者の参入が期待できる場合には、公募による選定を行うことが適当であると考えます。
こうした場合でも、施設の特徴を十分に踏まえた募集条件などを設け、より良い指定管理者を選定することとしています。
例えば、こども動物自然公園につきましては、的確な飼育や展示、他の動物園との連携を確保するため、日本動物園水族館協会に所属する法人であることなどを募集条件としています。
参入を検討している民間事業者の動向、施設の役割やサービスの内容は、社会情勢により変化することから、選定方法についても適宜見直しを行う必要があります。
今後とも、指定管理者制度の主旨が最大限発揮されるよう各施設の目的や特徴を十分勘案して選定方法を決定してまいります。
高齢者ドライバーの事故対策について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
高齢者ドライバーによる死亡事故が全国各地で相次ぎ、その対策が急務となっています。まずは免許の返納ということも選択肢の一つとして考えられますし、自動運転実用化にもまだまだ課題も多く、一朝一夕に進みそうにもありません。県は高齢者ドライバーが加害者とならないためにどのような対策を行っているのか、県民生活部長にお伺いいたします。
次に、事故を起こしたドライバーの言葉から、ブレーキがきかなくなったなど車に問題があるようなことを耳にしますが、多くはアクセルとブレーキの踏み間違いが高齢者ドライバーの事故の最たる原因だと考えられます。お隣の東京都では、アクセルとブレーキの踏み間違いなどを防止する装置の購入費用を補助する考えを今月4日に発表いたしました。今後は幹部職員によるプロジェクトチームを立ち上げ、こうした装置の補助の仕組みを含め、高齢者や子供の交通安全対策などについて議論するとしています。県としても遅れることなく速やかにこうした装置の購入補助等を検討していただきたいと考えますが、併せて県民生活部長の見解をお伺いいたします。
A 矢嶋行雄 県民生活部長
まず、「高齢者ドライバーが加害者とならないためにどのような対策を行っているのか」についてでございます。
県では、平成28年度から高齢者向けに安全運転推進プロジェクトを全県で展開し、タブレットや動画による講習会などを通じて身体機能の低下を自覚させ、安全運転を促す事業を実施してまいりました。
プロジェクトの成果を踏まえ、引き続き県政出前講座による安全教育や街頭キャンペーンなどを実施し、高齢者ドライバーが加害者とならないよう安全対策に取り組んでおります。
また、昨年度から運転免許自主返納を促進するための事業を実施しております。
特に高齢者の会合で活用できる免許返納の手続きなどを紹介したDVDの配布や個別の相談に応じる専門の職員を派遣するなど、市町村への支援を手厚く行っております。
次に、「県は、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどを防止する装置の購入補助を検討できないか」についてでございます。
ペダルを踏み間違えた際の急発進防止装置は、事故防止に効果的であるとされております。
ただ、こうした装置はメーカーによって性能に差がある一方、公的機関などによる性能認定制度がないため、国では防止装置の認定制度を設ける方針です。
現在、県では補助の必要性について、国の動向や既に補助を行っている他県の事業効果などを研究しているところでございます。
県といたしましては、これらを十分に把握した上で、装置の普及に向けて必要かつ効果的な施策を検討してまいります。
地元問題について(県土整備部長)
東松山駅周辺市街地整備促進について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
平成28年9月定例会で同様の質問をいたしましたが、その後の進捗と今後の見通しについて改めてお伺いいたします。
東松山駅周辺市街地整備の一環として、県では都市計画道路駅前東通線のうち、東口駅前広場から県道行田東松山線までの370メートル区間の道路拡張や電線類の地中化工事を平成19年に事業認可を取得するとともに、県道行田東松山線との交差点整備に着手しております。
残された一番大きな用地交渉を含めて、地元の皆様方の御理解をいただかなければなりませんが、現在の進捗状況と今後の予定について、県土整備部長にお伺いいたします。
A 中村一之 県土整備部長
県では、都市計画道路駅前東通線のうち、東口駅前広場から県道行田東松山線までの整備と交差する県道行田東松山線の交差点整備を併せて進めております。
現在の進捗状況は用地買収率が87%、工事は駅前東通線の歩道北側230メートル、南側160メートルの拡幅が完了しております。
令和元年度は残る用地の取得を進めるとともに、駅前東通線の南側約90メートルの歩道拡幅工事を実施いたします。
引き続き、地元の皆様の御理解と御協力を頂きながら、早期に完成できるよう取り組んでまいります。
治水対策について
Q 松坂喜浩 議員(県民)
河川の機能を維持するために欠かすことのできないものの一つとして、河川断面の確保があります。地元の県が管理する安藤川、都幾川、新江川、角川、市野川においても河川の流下能力を妨げるような樹木の伐採、堆積土砂の掘削等の要望をたびたびさせていただいておりますが、平成30年度2月補正から防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策事業として機能強化が図られています。このことは関係する自治体としても効果があるものと期待をしております。
各河川においてどのような対策を進めていくのか、県土整備部長にお伺いいたします。
A 中村一之 県土整備部長
西日本を中心に発生した平成30年7月豪雨などの災害を踏まえ、特に緊急に実施すべき対策として「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が平成30年12月に閣議決定されました。
この対策の一環として安藤川、都幾川、新江川、角川の4河川については、樹木伐採や土砂掘削を実施いたします。
また、市野川につきましては流下能力が不足し、治水上ネックとなっている諏訪堰の改修工事を進めてまいります。
さらに、市野川の東松山市古凍地内におきまして、堤防を補強する盛土工事を実施いたします。
今後とも、3か年緊急対策を着実に進め、地域の治水安全度の向上を図ってまいります。