1 大野知事の2期目に向けた決意について(知事)

Q 岡 重夫 議員(県民)

大野知事にとっては、就任以来、豚熱、台風第19号による被害、新型コロナウイルス感染症、そして昨年末から今年にかけて発生した鳥インフルエンザなど、様々な災害対応に追われた3年間でした。しかし、危機管理のプロである大野知事だからこそ、対策が的確に取られたとも言えます。
こうした場面に触れるにつれ、改めて私たち会派は3年前の知事選挙で大野知事を応援し、大野県政の誕生に貢献できてよかったと思っています。
さて、知事は、新年の抱負などを今年の元旦の埼玉新聞の新春インタビューで語っておられ、その中で「夏の知事選挙に関しては8か月先なので今の段階では考えられない」、一方で「今年は年男で縁起が良く、県民の幸せにつなげたい」と2期目の抱負ともとれることも述べておられます。そして現在、県内の多くの首長や県民も、大野知事への2期目を期待する声が大きいのも事実です。
また、埼玉県5か年計画が2年目に入る時期で、令和5年度の予算案も編成されたばかりであり、これから予算特別委員会も開会されます。そこで知事には、2期目の決意を明確にして予算特別委員会に臨んでほしいと考えています。知事には2期目を目指さないという選択肢はないと思いますし、いつ立候補の表明をするか、時期の問題だけだと考えています。
そこで、今定例会で新たな埼玉県、日本一暮らしやすい埼玉を築くために2期目の決意を表明してほしいと考えますが、知事の答弁をお願いします。

A 大野元裕 知事

岡議員には「的確な対応」と御評価いただきましたが、日々迷い苦しみながら何とか切り抜けてこられたというのが事実であり、県議会の皆様、また、全ての県民の皆様のお力添えと御協力があってこそと深く感謝をしているところであります。
他方、本県は、人口減少・超少子高齢化社会の到来、自然災害や感染症などの危機の頻発・甚大化など多くの課題を抱えており、そのために数多くの施策に取り組んでまいりました。
その中でも、「埼玉県5か年計画」に掲げた各施策の実現は待ったなしであることから、現任期では、直面する危機対応を行いつつも、中長期的施策の礎を築くために引き続き真摯に取り組みたいと思っています。
これらの施策については、先の県知事選挙で無所属県民会議の皆様とともに訴えてきたことであります。このたび、岡議員から知事選出馬に向けての温かい励ましのお言葉を頂きましたことにより、改めてこれらの施策を実現させていく重要性に身の引き締まる思いであります。
また先般、市長会並びに町村会の皆様からも出馬要請を頂いたところです。
政治家個人としての去就は、自らの責任で考えるべきものではありますが、危機が続く中で御協力を頂き、共に闘っていただいた皆様からの御意見として重く受け止め、任期中はもとよりその先においても未来への責任を担うための礎を確固たるものとすべく準備を進めてまいりたいと考えております。

2 令和5年度埼玉県一般会計当初予算案について(知事)

(1)EBPMの考え方に基づく行財政改革について

Q 岡 重夫 議員(県民)

令和5年度の一般会計当初予算案は、3年連続で2兆円を超える2兆2,110億9,500万円で、大野知事が今期最後の大きな結節の予算編成となっていると感じています。そして、「ポストコロナ元年~持続可能な発展に向けて~」をキャッチフレーズとし、随所に知事が埼玉県5か年計画を確実に実行し、日本一暮らしやすい埼玉へ向けてまい進しようとする強い意欲を感じることができる予算となっています。
そこで、一般会計予算案の編成に当たり、次の2点を知事に伺います。
第1点目、EBPMの考え方に基づく行財政改革について伺います。
昨年の私の代表質問では、「賢明な財政支出、すなわちワイズスペンディングにより政策効果が乏しい歳出を徹底して削減し、政策効果の高い歳出に転換し、財政健全化を進めるべきだ」ということを提言しました。今回は、昨年5月に公表された財政制度等審議会の建議である「歴史の転換点における財政運営」の中で、個々の歳出を効果のあるものにする取組として、アウトカム・オリエンテッド・スペンディングという新しい考え方が盛り込まれました。直訳すると成果志向の支出ということで、どのようなアウトカムの実現を目指して財政を支出するか、これを事前に明確化するもので、エビデンスに基づく政策立案であるEBPMの考え方に近いものだといわれています。埼玉県5か年計画の計画を着実に実行する仕組みの項目にも、EBPMの考え方に基づく政策立案が明文化されています。
さて、本県の財政状況を見ると、歳入の大幅な増加が期待できない中、令和5年度当初予算の歳出においては、一般財源ベースで社会保障関係費は対前年度比6.4%増の約4,349億円近くに上り、また、公債費も対前年度比1.0%増の約2,833億円となるなど、削減余地のない義務的経費は急増し、財政余力は狭まるばかりです。さらに今後、全国で最も早いスピードで後期高齢者が急増し、急激な高齢化社会を迎える本県においては、財政状況が今よりも更に厳しくなるのは明らかです。
このような状況では、限られた財源を最適に配分するため施策の優先順位を明確にし、スクラップ・アンド・ビルドを通じて真に効果的な施策に打ち込んでいくという、正に成果志向の支出を徹底していくべきだと考えます。また、成果志向の支出を徹底し続けることで、県民の行政に対する信頼の確保にもつながっていくものと考えます。
そこで、令和5年度当初予算案の編成方針において、3つの柱の1つに「EBPMの考え方に基づいた不断の行財政改革の推進」を掲げていますが、成果志向の支出を徹底する観点から、予算編成の中でEBPMの考えに基づき、どのような行財政改革の取組を図ったのか、知事に伺います。

A 大野元裕 知事

議員御指摘のとおり、本県の財政状況は、異次元の高齢化を背景に社会保障関連経費が年々増加するなど、今後も厳しい見通しであります。
こうした中、持続的な発展のためには、EBPMの考え方に基づき事業の選択と集中を図るとともに、より効果的な事業に見直していく必要があります。
そこで今年度は、有識者会議での御意見なども踏まえながら、予算や人員等のインプットからアウトカムまでの因果関係を明確にするロジックモデルにより、事業の再検証を行い、廃止又は再構築を進めました。
これにより、検証可能な成果指標の設定やデータ等の根拠に基づく事業の構築というEBPMの実践を庁内に定着させていくこととしたものであります。
その結果、例えばダウンロード数が伸び悩んでいた県独自の「まいたま防災」アプリにつきましては、民間アプリの普及等を踏まえ廃止をし、県LINE公式アカウントを活用した情報提供に見直しました。
また、県産木材活用住宅等への支援事業は従前、県産木材の利用拡大を図る成果が十分に得られなかったため、施主から工務店等へ補助対象を見直すなど、一層成果があがるよう再構築をいたしました。
これらをはじめとした見直しにより、県庁全体で567事業、約43億円の一般財源を削減し、その財源を103事業の新規重点事業に活用をいたしました。
こうした取組はまだ緒に就いたばかりではありますが、今後、更にEBPMに基づく検討の質を高めながら、より効果的な事業構築に努めてまいります。

(2)5か年計画における中長期的課題への対応について

Q 岡 重夫 議員(県民)

先ほど述べた成果志向の支出の徹底により生み出された財源を、どのように活用していくかという視点で伺います。
5か年計画は、変化の激しい時代の中で中長期的な視点を持って今から取り組むべき施策を整理し、知事の埼玉県の未来に向けた思いを詰め込んだ計画だと思っています。しかし、計画初年度の令和四年度は、さきに述べたようにコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安などを背景にエネルギーや原材料価格に高騰が続くなど、県民や県内事業者を取り巻く環境はより一層厳しい状況となりました。
知事は、幾度となく補正予算を編成し、こうした状況に対応すべき様々な緊急支援を実施してきました。県民や県内事業者がそのときに必要としている支援を迅速に実施する知事の手腕を県民も高く評価しています。
さて、異常気象や自然災害の発生のおそれは年々高まっています。昨年6月には降ひょうによる農産物への大きな被害が発生し、4月には数年に一度しか起きないと想定されている1時間に100ミリ以上の大雨が複数回観測されました。そして、9月には秩父市中津川地域内において大規模な土砂崩れが発生しました。いつ起こるか分からない災害への対応は日々しっかりと備えることが重要ですから、県民の命を守るために改めて危機管理防災対策を講じる必要があると考えています。
また、今回のエネルギー価格の高騰により、我が国の化石燃料等の海外依存度の高さを再認識させられました。そこで、これまでの生活様式や経営体質からエネルギー価格の影響を受けにくい構造への転換も進めていかなければなりません。
このような変革の時代の中にあって、中長期的な課題に対応していくという観点から、令和5年度当初予算案でどのような取組を行うのか、知事に伺います。

A 大野元裕 知事

5か年計画では、2040年を見据え、生産性の向上や超少子高齢社会への対応、激甚化・頻発化する災害への備え、脱炭素化への取組といった中長期的課題を示しております。
しかし、こうした課題はすぐには解決できません。
令和5年度は、その課題解決に向けた第一歩とするため、デジタル技術を一層活用してDXを推進し、持続的な発展の礎を築くための施策を講じてまいります。
生産性の向上では、例えば、全庁の様々な地理情報を集約し、データの重ね合わせ等が可能なGISの整備により、官民のまちづくりを推進いたします。
少子高齢化対策では、持続可能な成長を実現するまちづくりを全県で進めていく埼玉版スーパー・シティプロジェクトを加速させるとともに、新たに国の出産・子育て応援交付金とあわせ、最大1万円相当のギフトボックス等の配付を行い、孤立した子育ての防止を図ります。
また、災害・危機管理対応では、デジタル技術による災害対策本部の機能向上や全庁GIS等に対応した災害オペレーション支援システムの構築を進めます。
加えて、新たに企業のサーキュラーエコノミーの取組を支援するため、ワンストップ支援拠点を整備し、脱炭素化を推進してまいります。
私は、令和5年度を「ポストコロナ元年」と位置付け、先人が築き上げてきた埼玉県を更に成長させ、未来に引き継ぐための始まりの年としたいと思っております。
10年、20年先を見据えながら、今できることから着実に取り組むことで、日本一暮らしやすい埼玉の実現を目指してまいります。

3 危機管理・防災体制の再構築について(知事)

(1)埼玉版FEMAについて

Q 岡 重夫 議員(県民)

知事は、以前、私の代表質問に対し、「危機管理の要諦は準備にある。そして、危機管理は危機が発生したときに、いかに危機をマネジメントコントロールできるかを日頃から準備しておくものだ」と答弁されました。知事が就任以来、日本一暮らしやすい埼玉を目指すための基本は、危機・災害に強い埼玉を築くこと。そのために、あらゆる事態を想定して準備をすることだと私も考えています。そして知事は、5か年計画の12の指針の中で、「災害・危機に強い埼玉の構築」を1番目の指針として明記しています。
そこで、第1点目、埼玉版FEMAについて伺います。
知事の公約の一つである埼玉版FEMAについては、普段から考えられるあらゆる危機や災害などを想定し、その対処要領や役割分担を定めたシナリオを作成し、図上訓練などを繰り返し、県庁内の各部局や関係機関との連携を深めることが有事の際に大変役立つと私も考えています。そして、ふだんからお互いに顔の見える関係を作ることが、有事の際に効果的な対応につながることは明白です。
さて、昨年8月に大野知事は、就任3年目の成果を発表され、「埼玉版FEMAについては令和2年度から図上訓練を繰り返し行い、これまで十数回実施した」と発表されています。そこで、これまでの訓練の成果と課題、さらにはその課題への今後の対応について、知事に伺います。

A 大野元裕 知事

まず、これまでの訓練の成果でありますけれども、令和元年東日本台風の経験から、令和2年度、3年度に風水害をテーマに計10回の図上訓練を実施し、風水害のシナリオを一定程度作成・熟成させました。
令和4年度は、風水害のシナリオのブラッシュアップを図るとともに、地震災害や大雪災害について新たなシナリオを作成し、計6回の図上訓練を実施しました。
この3年間で、県庁内各部局はもとより市町村、消防、警察、自衛隊、ライフライン事業者など、延べ551機関、823人と実に多くの方々に図上訓練に御参加をいただきました。
しかしながら、埼玉版FEMAに終わりはございません。
引き続き、県が調整・連結機能を発揮し、そこに関係機関が一堂に会し、訓練を通じて課題を共有することが埼玉版FEMAの重要な要素であり、各機関が災害時にどのような動きをするのかをお互いに把握することができました。
次に、課題とその対応についてでございます。
訓練を実施するたびに課題が浮かび上がり、課題が出れば出るほど安心の提供に近づいていくものとなりますので、繰り返し、継続していくことに埼玉版FEMAの意義があるものと考えております。
これまで、風水害、地震災害、大雪災害のシナリオを一定程度作成してまいりましたが、まだまだ不十分であり、訓練で出た課題をブラッシュアップしていく必要があります。
加えて、令和5年度は火山噴火や国民保護といった新たな課題にも取り組んでまいります。
今後とも、埼玉版FEMAのシナリオ作成や図上訓練を繰り返し実施することで、専門的な知識や能力を有する様々な官民の機関を強固に連結し、県の災害対応力の強化を図ってまいります。

(2)ポストコロナ元年における災害対応訓練の在り方について

Q 岡 重夫 議員(県民)

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大してからほぼ3年の間、多くの地域で市町村主体の防災訓練や自主防災組織による避難訓練、あるいは消防団の特別点検などが規模を縮小したり、中止を余儀なくされています。今回の新型コロナウイルス感染症の長期化で学んだことは、感染症が拡大している中でも大きな地震や豪雨などの災害が複合的に発生する場合があり、それを想定した準備をする必要があるということです。
災害は必ずやってきます。昨年も新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、6月には降ひょう、7月には大雨、そして今年の1月には大寒波が襲ってきました。このように次々に起こる自然災害に県が迅速かつ的確に対応するためには、常に備えを怠らず、災害への対応力を維持、向上させていくことが大変重要です。
知事は、本年度コロナ感染を防止しながら、8月には九都県市総合防災訓練、1月には図上訓練を開催しました。いずれも3年ぶりのフル開催だったと伺っています。知事は、来年度のポストコロナ元年の予算の中で、デジタル技術を活用した災害対応も打ち出しています。
そこで、新しい時代に合った訓練の在り方について、知事のお考えを伺います。

A 大野元裕 知事

議員お話しのとおり、感染症が拡大している中にあっても、常に災害を想定した準備を継続していく必要があります。
このため、昨年度の災害対応図上訓練では、本部会議をWEB形式で行うなど、コロナ禍をきっかけに進んだデジタル技術を活用して、多くの関係者が集まることなく訓練を行えるようにいたしました。
さらに今年度は、8月の九都県市合同防災訓練で、現地の様子をYouTubeで配信し、会場に来なくても多くの皆様に訓練内容を見ていただけるよう工夫したことで、見学者の制限を設ける必要がなくなりました。
また、1月の図上訓練では、これまでの業務の流れを見直し、グループチャットやドキュメント共有ツールを活用したところ、災害時における情報共有がより直截的かつ広範に行われたのみならず、資料作成などの時間が短縮され、効率性を高めることにもつながりました。
昨今の激甚化・頻発化する災害時において、多様な情報を迅速に収集・分析・加工し、的確に県民に発信することは、今後ますます重要になってまいります。
そこで、ポストコロナ元年となる来年度は、電子テーブルや電子黒板などのデジタル技術を新たに導入し、本部と現場とのリアルタイムでの情報共有により迅速・的確な災害対応を目指してまいります。
新しい時代に合った訓練とは、こうした新たな技術を取り入れ、災害対応業務の改善に合わせた訓練内容とするなど、業務プロセスの見直しを行いながら実施するものであると考えます。
今後も、より実効性の高い災害対応訓練にしっかりと取り組み、県民の安心・安全確保に努めてまいります。

4 医師不足解消に向けた取組について(知事)

Q 岡 重夫 議員(県民)

埼玉県は、人口10万人当たりの医師数がこれまで全国最下位で、医師不足解消に向けて医学生への奨学金の貸与や研修医への研修資金の貸与、あるいは自治医科大学卒業生を秩父医療圏など医師確保困難な地域へ派遣したり、さらには平成25年に埼玉県総合医局機構を創設し、医師確保の努力をしてきました。その結果、令和2年度の県内の医師数は1万3,057人となり、10年前の1万259人に比べると2,798人増えていて、その増加率は27.3%と全国1位です。
しかし、人口10万人当たりの医師数は、177.8人と全国最下位のままです。埼玉県5か年計画では令和8年の医師数を1万6,343人の目標値を掲げていますので、現状から実に約3,300人の医師を増やさなくてはいけません。また、全国の平均的なレベルになるためには、約5,700人の医師の増員も必要といわれています。
現在、県では医学生の奨学金貸与、臨床研修医・後期研修医の研修資金貸与、そして病院合同説明会など様々な取組を行い、医師の確保に努力しています。また、医師が不足する診療科や地域に医師を誘導する対策として地域枠奨学金を実施していますが、貸与枠は毎年30人程度、制度が始まった平成22年から令和4年までの貸与者数の合計は252人という状況で、非常に少ないと思います。
さらに、県内の医師数を増やすという点では、医師を養成する大学は県内に埼玉医科大学1校しかありませんので、地域枠奨学金の枠拡大に加えて、若手医師を獲得する対策を強化する必要があります。特に、現在のグローバル化が進む中、新型コロナウイルスに続く新たなウイルスの発生や感染拡大に備えたり、大規模災害時の医療体制を整備するためにも、医師の確保は喫緊の課題だと考えています。
そこで、従来に増して地域枠奨学金の貸与枠の拡大や若手医師の誘導対策の強化に取り組むことが必要と考えますが、知事の見解を伺います。

A 大野元裕 知事

まず、地域枠奨学金の貸与枠の拡大についてであります。
議員お話しのとおり、医師確保対策において奨学金制度の活用は効果的な施策の一つであり、今年度は貸与者63人が県内で勤務をしています。
地域枠は、県と大学が合意していること及び当該地域が医師不足であることなど、国が必要性を審査した上で設置が認められる制度であります。
地域枠の活用には力を入れており、今年度は貸与枠を3人増加させました。
更に積極的に活用すべく大学に働き掛け、国と協議をしたところ、北里大学、東京医科大学、東京医科歯科大学に新設、順天堂大学には増員し、12人を追加することで合意が得られています。
このため、令和5年度は地域枠の新規貸与者については、現行の4大学33人から7大学45人に大幅に拡大する予定です。
引き続き、地域枠を活用し医師の確保に取り組んでまいります。
次に、若手医師の誘導対策の強化についてでございます。
これまでの実績では85%の後期研修医が研修終了後も県内に定着しており、後期研修医の獲得は医師確保策の大きな柱となります。
そこで、令和5年度からは後期研修医の獲得のために特設WEBサイトを構築し、研修プログラムごとの特徴や本県で研修を受講する魅力を効果的にPRしてまいります。
具体的には、経験できる症例や先輩医師からのアドバイスなど研修内容がイメージしやすい充実した情報を発信していきます。
なお、これらの取組に関する予算案は今定例会にお願いをしているところです。
引き続き、しっかりと医師不足解消に向けた取組を進めてまいります。

5 埼玉県教育委員会の組織について(教育長)

Q 岡 重夫 議員(県民)

一昨年、県内のある小学校の教員が勤務校で問題を起こした際の教育事務所と本庁教育局、本局の対応について、私は危機意識や市町村教育委員会の指導の在り方などに多くの疑問を持ちました。これは、市町村教育委員会に対する指導や助言などの対応を行う県教育委員会の組織の問題であり、現状の体制であれば教育事務所が必要であるのかとまで疑問を持ちました。もちろん県内の各小・中学校で起こったことに対しては、学校を管理する各市町村教育委員会が責任を持って対応することになりますが、その対応について指導や助言を行うのが県教育委員会の重要な役目です。
しかし、教育事務所と本局という複数の箇所が対応することによって、共通認識や迅速性に課題が生じていると言わざるを得ません。その結果、様々な事案の対応の中で、県民から「教育委員会は子供ではなく組織を守っているのではないか」と言われることが多いのではないかと思います。
そこで、まず学校で起きた問題に対して、今回の事案を踏まえ、県教育委員会としてどのように市町村教育委員会を支援していくのか、教育長に伺います。
次に、現状の課題を解決するために教育委員会の組織について提言したいと思います。
現在、県の教育委員会は3部18課、4教育事務所と17の教育機関となっていて、県の教育行政を推進しています。この中の東西南北の4か所の教育事務所は、総務・人事・学事担当及び教育支援担当、学力向上推進担当の3担当で構成されています。そして、教育事務所の所掌事務は、市町村教育委員会の指導・助言や職員の人事事務、教育職員の免許に関すること、そして学校教育の指導や研修に関することとなっています。
一方、これらの事務は本局の小・中学校人事課をはじめとする教育局の各課でも同様に所掌していて、各事案などの法令的な解釈などは最終的に教育局の判断に委ねているのが現状です。また、現在、県内の教育に関する調査や相談についても教育事務所を通して行われることが多く、教育事務所や対応者によって指導がまちまちとなることなど、迅速性や確実性がおろそかになっていることは否めないと思います。もしこれらを本局で一括対応できれば、市町村教育委員会からの連絡や相談もダイレクトに行え、時間が短縮されるばかりでなく、迅速かつ確実に対応することが可能になります。
現在、県内の小・中学校では日々様々な出来事が起きて、市町村教育委員の力だけ、あるいは教育事務所の対応だけでは解決できない事案が多数発生しています。そこで、現在、4つの県教育事務所には合計100人以上の職員がいますが、今後、DX化を進め、これらの職員を本局に集めればスケールメリットが働き、教育事務所に現在のような人数は必要なくなります。また、教員の質の低下が叫ばれ、教員の希望者が減っている昨今、教育事務所で働いている優秀な教員を学校に戻すことも可能です。
教育委員会の組織の改革は不可能ではありません。その証拠に、県の教育委員会は私の議会での提案を踏まえて小・中学校の事務職の改善を実施しており、学校事務の共同実施を進めることで、学校事務の迅速効率化を進めたり、各教育事務所で行っていた旅費の審査事務を教職員課でまとめて審査することで、教育事務所の定数を削減したりすることに成功しています。
埼玉県の教育行政を一層充実し推進するためには、大胆に教育事務所を再編し、事務処理のDX化を積極的に進め、本局でまとめて対応することが適切と考えますが、教育長のお考えを伺います。

A 高田直芳 教育長

まず、学校で起きた問題に対して、今回の事案を踏まえて、県教育委員会としてどのように市町村教育委員会を支援していくのかについてでございます。
議員お話しの小学校教員の事案は、教員の職務上の行為に関するものであり、一義的には、教員の服務監督権限を有する市町村教育委員会において適切に対応すべきものです。
他方、市町村立学校の教職員の任命権は県教育委員会の権限であることから、県教育委員会としても、適切な人事管理を行うため、市町村教育委員会を通じて、正確かつ的確な情報把握を行う必要があります。
その際、教育事務所が日常的に把握している各市町村教育委員会及び管内の学校に関する客観的な立場からの情報は大変重要なものと考えております。
しかしながら、今回の事案では、教育事務所を含む県教育委員会と市町村教育委員会との間で課題認識が十分には共有できていなかったなど、今後の市町村教育委員会への支援に関し、改善すべき点もございました。
そのため、本局と教育事務所、市町村教育委員会との間で、問題発生時の迅速かつ的確な対応に関する研修を実施するなど対応力の向上を図ってまいります。
県といたしましては、今後とも、継続的に本局と教育事務所との連携強化を図りながら、的確な指導助言を行うなど、市町村教育委員会に対する適切な支援に努めてまいります。
次に、教育事務所を再編し、事務処理のDX化を積極的に進め、本局でまとめて対応することについてでございます。
県教育委員会は、市町村立学校の教職員の任命権を有しており、適切な人事管理を行うためには、各教職員の勤務状況などの情報把握を的確に行う必要があります。
市町村立学校の教職員は約3万人在籍し、1,000校を超える校長からの情報収集や学校現場における実際の勤務状況の確認などを行う必要があることから、地域ごとに教育事務所を設置し、これらに対応しております。
県教育委員会といたしましても、簡素で効率的な組織体制を整備するとの観点から、これまでにも、県内9か所あった教育事務所の4か所への統合や、給与や旅費等の支給を本局の業務として集約するなど、組織の見直しを行ってまいりました。
こうした組織体制は、今後も不断の見直しを図っていくことが必要であり、議員お話しの、事務処理のDX化を積極的に進めていくことも大変重要と認識しております。
現在、本局や教育事務所の事務処理のDX化はもとより、市町村から県への提出書類のペーパーレス化や、県と市町村間の会議のオンライン化などの取組も積極的に進めています。
また、市町村の職員が教育事務所に出向かなくても、迅速かつ容易に相談等ができるよう、オンラインツールを使った相談体制などの整備を図ってまいります。
今後とも、こうしたDX化の進展を図りながら、学校現場やそれぞれの地域の実情等を十分に踏まえた適切な支援ができるよう、教育委員会の組織体制について必要な見直しを図ってまいります。

6 自殺防止対策について(知事、教育長)

Q 岡 重夫 議員(県民)

警察庁が発表した令和4年の自殺者数が全国で2万1,584人と、2年ぶりに増加したとの報道がありました。新型コロナの感染拡大前までは10年連続減少し約2万人となっていましたが、その後は増加傾向にあります。埼玉県でも残念ながら自殺者数は前年よりも125人増の1,229人と増えています。自殺の原因の多くが経済や生活の問題、健康の問題、家庭の問題など様々な社会的要因が複合的に絡み合い、深刻化した結果による追い込まれた末の死といわれています。
そして、自殺を個人の問題としてではなく社会全体の問題として捉え、社会全体でその対策に取り組むこが求められています。特に、自殺の多くが防ぐことができる社会的な問題として対策に取り組むことが大事だと考えています。
私は毎年、代表質問で自殺対策を取り上げ、一人でも自殺者を減らすためにゲートキーパーの養成の提言をしてきました。その結果、大野知事をはじめ担当部がゲートキーパーの必要性を理解してくれ、県のホームページにゲートキーパーに関する動画やその説明などのコーナーを作り、県民に広く理解されるようになりました。そのほか、県ではSNSでの相談事業や「暮らしとこころの総合相談会」などを開催し、自殺予防に力を入れています。
自殺の危険を示すサインの中には、食欲がない、眠れないなどから、ため息が多くなるというサインが出ます。そのようなときに「何か悩んでいることがあるの。よかったら話してみて」と声を掛けて話を聞いてあげるだけで、本人の気持ちが和らぐといわれています。
私は、身内が病気を苦にして54歳で命を絶った悲しい経験から、自殺者を一人でも減らしたいとの思いで活動しています。当時、私は議員でなかったため、行政が自殺防止に向けた様々な取組をしていることは知りませんでした。しかし、議員になって初めて行政が多くの対策を行っていることを知り、もしこのような行政などの相談体制を知っていれば、身内の自殺が防げたかもしれないという思いが常に頭に残っています。そして、その存在を県民に知ってもらうことも大事であると思っています。
ところで、昨年、介護職の人や民生委員の何人かに「ゲートキーパーを知っていますか」と聞いたところ、ほとんどの人が「知らない」と答えたので驚きました。そこで、ホームページなどでは県民には知ってもらえないということを痛感しました。ゲートキーパーは、誰にも相談ができずに悩んでいる人に声を掛けることによって様々な相談組織につなぐ、とても大事な役割を果たしています。
そこで、このゲートキーパーを県民に広く知ってもらうため、埼玉県を挙げて独自のゲートキーパーキャンペーンなどを行い、幅広い層に周知する取組が必要ではないかと考えますが、知事のお考えを伺います。
次に、学校教育の中で、多くの子供たちがゲートキーパーに関することを知ることが重要ではないか。そうすることによって、子供たちが友達の心の変化などを感じ取り相談に乗る、あるいは家族の異変などに早く気付くことができて、自殺を少しでも予防できる可能性が出てきます。
そこで、まず公立の小・中学校、そして県立高校においてゲートキーパーの動画を見るなど、ゲートキーパーに関する啓発を行うことが必要と考えますが、教育長のお考えを伺います。

A 大野元裕 知事

ゲートキーパーの周知についてでございます。
コロナ禍にあって増えた女性や若者の自殺に加え、昨今、経済状況の悪化の影響が指摘され、中高年や失業者、年金受給者等の自殺の増加など、現状を大変憂慮しているところであります。
県では、自殺者数が増加傾向に転じた令和2年以降、電話相談の年中無休24時間化やSNS相談の通年化、生活や経済の問題と心の相談をワンストップでできる総合相談会を月2回から倍増するなど、相談窓口を拡充させてまいりました。
しかし、こうした相談を利用しようとする方ばかりではございません。
議員御指摘のとおり、身近な人の変化に気が付き、声を掛け、話を聞き、相談につなぐゲートキーパーの役割は非常に大きいと考えております。
そのため、多くの県民にゲートキーパーになっていただくため、啓発動画を作成し、県ホームページやYouTube、大宮駅構内のデジタルサイネージ等で県民に周知をしています。
また、3月は自殺者数が増加する傾向にあり自殺対策強化月間とされています。
そこで3月に、「ゲートキーパーキャンペーン」と題しまして、啓発動画を県内5か所の映画館において本編の開始前に上映をするほか、県内3路線で車内の電子広告による周知を行ってまいります。
さらに現在、ゲートキーパーとしての声掛けの仕方などを学ぶことができる研修用の動画も作成をしております。
より多くの県民に動画を視聴していただけるよう県ホームページに掲載するなど周知してまいります。
また、市町村や民生委員・児童委員協議会等関係団体や企業などに対して、この動画を活用したゲートキーパーの養成を働きかけてまいります。
こうした様々な取組を行い、県民に対して幅広くゲートキーパーの周知を図ってまいりたいと考えております。

A 高田直芳 教育長

学校教育におけるゲートキーパーに関する啓発についてでございます。
身近な友人や家族が自ら命を絶つということは、子供たちにとっても強い衝撃と深い悲しみを与えるものであり、学校教育において、すべての児童生徒の健やかな心身の成長を図っていく上で、様々な自殺予防対策を進めていくことが必要です。
議員お話しの児童生徒が友人や家族などの異変を感じ取り、相談につなげるなどの役割を果たすゲートキーパーについて知ることは大変重要なことと考えます。
県では、東京大学大学院と連携して、中学校8校、高校5校を研究推進校に指定し、メンタルヘルスリテラシー向上に向けた研究事業に取り組み、様々な悩みを抱える友人のSOSを適切に受け止め、信頼できる大人に繋げることを目的とした生徒向け授業を実施しております。
この取組は、子供たちがゲートキーパーとして身近な人の異変に気付き、見守る人材となることにもつながるものと考えます。
今後、この取組の成果を踏まえ、児童生徒の発達段階に応じて、啓発動画なども活用しながらゲートキーパーに関する啓発に積極的に取り組んでまいります。

7 第9期埼玉県高齢者支援計画の策定について(知事)

Q 岡 重夫 議員(県民)

埼玉県は、団塊の世代が後期高齢者になる令和7年や、団塊ジュニア世代が65歳以上となる令和22年を考えると、介護保険制度を持続するため高齢者に対する支援の在り方についても大きく変えていかなければならないと考えています。
そこで、県では、来年度は令和6年度から令和8年度までの第9期高齢者支援計画の策定に着手するわけですが、計画に次の4点を入れることを提言したいと思います。第1点目は、介護職の社会的評価の向上。第2点目は、介護予防、フレイル予防。3点目は、認知症予防に資する取組。4点目は、介護施設等の感染症対策の強化の4点です。
まず、最初の介護職の社会的評価の向上については、昨年、私が代表質問で行い、知事からは社会的評価を高めるためには専門性の向上、賃金の改善を国に求めること、さらには県独自に介護福祉士などの資格取得支援などを行う旨の答弁を頂きました。私は、中長期的に考えれば大幅に不足する介護職の人材を確保するには、例えば、看護師と同じくらいまで介護職の社会的な評価を高める施策をしなければならないと考えています。
では、なぜ社会的な評価が上がらないのかということを考えると、介護は昔から施設で行うものではなく家族が行うもので、家事の延長線上にあるものに見られ、仕事として認められてこなかったために社会的に評価されてきませんでした。また、現在は若い男女も介護士を目指して専門学校に進学していますが、昔は主婦がヘルパーの2級を取得して施設やデイサービスで働くことが多かったこともあり、その点も社会的な評価につながらなかった面があると考えています。しかし、実際の仕事は、入所施設では高齢者の生活を24時間サポートとし、健康的で楽しい生活が送れるように日々奮闘しています。
さて、現在の第8期計画には介護人材の確保、定着、イメージアップのための各種施策が記載されていますが、社会的評価の向上という取組はありません。そこで、第9期では、この項目を明記して介護職の人たちの誇りとやる気を起こし、報酬面も含めて介護を憧れの職業にする施策を行うべきと考えますが、知事の見解をお伺いします。
続いて、介護予防、フレイル予防についてです。
現在、第8期計画には介護予防の項目や具体的施策などが記載されていて、県は介護予防に力を入れています。しかし、最近ではフレイル予防に力を入れることが重要視されてきました。
フレイルとは、日本老齢医学会が定義した加齢に伴い心身の状態が低下し、要介護に至るまでの過程を言います。例えて言うのであれば、フレイルは糖尿病・高血圧性疾患などの生活習慣病が発症する前の、いわゆる健康と生活習慣病との境界領域と言えます。
今後は加齢に伴う虚弱による要介護者数が大幅に増加することが予想され、医療費の増加に比べて介護費用が大幅に増加することが見込まれています。これから早期の介護予防であるフレイル予防が、国、県、市町村の大きな課題です。
また、フレイルを予防するためには、栄養、身体活動、社会参加の三位一体の視点に立った日常生活を送ることが大事です。特に、平成26年に介護保険法の改正によって、介護保険の地域支援事業に介護予防日常生活支援総合事業(通称、総合事業)が導入され、各自治体は総合事業に力を入れていかなければ財政的にも厳しい状況になると予想されます。
そこで、計画にフレイル予防を含む介護予防政策の体系化が必要と考えますが、知事の御見解を伺います。
次に、認知症予防に資する取組について伺います。
認知症の予防に関しては、根本的な治療薬や予防法も明確に確立されていないといわれてきましたので、どちらかといえば、認知症になった後で安心して暮らせる社会づくりに力を入れているのが実態ではないかと思います。しかし、最近では、認知症の予防に関する研究が進み、その予防策が紹介されるようになりました。
認知症の原因は、一番がアルツハイマー病、次いで脳梗塞や脳出血による脳の損傷が原因の血管性認知症、そして脳の神経細胞にα-シヌクレインというタンパク質がレビー小体と呼ばれる構造を作り、神経細胞が障害を起こすレビー小体型認知症の3つが主な原因といわれています。また、認知症の中には、20代から30代の若い頃からゆっくりと進行するものもあるとのことです。
そこで、認知症予防に有効なこととして、次の5つが紹介されています。1つは適度な運動、2つ目は生活習慣病の予防、3つ目は他人との交流、4つ目は達成感を味わうこと、5つ目は趣味を無理なく長く行うことの5つです。
若い人たちに認知症の予防といってもピンと来ないと思いますが、ふだんから認知症予防に資する有効策があることを県民に知ってもらい、実践する取組を計画的に取り入れてほしいと考えますが、知事の御見解を伺います。
最後に、介護施設などの感染症対策の強化についてです。
この施策も現在の第8期計画に盛り込まれていますが、作成された当時は新型コロナウイルス感染症の感染初期の段階で、第6波や第7波のような感染拡大により介護施設などの職員の多くが感染するなどのクラスターの発生は予想していなかったと思います。第8期の計画では、介護職員は感染が防止され、入居者の感染防止に力を入れることができるという想定の取組が示されています。
しかし、現実は各施設で多くの介護職員が感染し、クラスターが発生し、県のコロナ対策チームであるCOVMATが休みなしで対応したのが実態でした。そのため、計画にある他施設からの応援職員を派遣する補助ネットワークの仕組みが機能していなかったのではないでしょうか。
そこで、第九期の計画では今回の新型コロナウイルス感染症の教訓を生かし、最悪の状態を想定した取組の具体策を記載すべきと考えますが、知事の御見解を伺います。

A 大野元裕 知事

介護職の社会的評価の向上についてであります。
議員お話しのとおり、介護職の社会的評価を向上させることで介護職の誇りとやる気を喚起し、あこがれの職業にすることは非常に重要だと思います。
介護の仕事に従事される方は、感染症対策や看取りケアの知識に加え、体の仕組みや動きを理解して最小限の力で身体介護を行うなど、日常的に多くの技術を駆使しています。
介護職の社会的評価を向上させるには、こうした幅広い知識や技術が必要な専門職であることを多くの方に知っていただくことも効果的であります。
このため、これまで県が実施してきた介護の魅力を伝える取組に、専門性のPRという視点を加えて、介護職員が実践している高度な介護技術を紹介する動画の配信を新たに実施します。
また、来年度初めてバーチャル空間で開催する介護職員合同入職式では、新任介護職員に私からメッセージカードを授与することで、県全体として介護職員を応援していることを伝えます。
こうしたことも、介護職自身が誇りを持ち、周囲からの評価の向上につながると考えております。
さらに、介護職員永年勤続表彰や、利用者やその家族が介護職員に感謝の気持ちを伝える「コバトン・ハートフルメッセージ」の優良事業所表彰など、社会全体で介護職員を顕彰する取組も続けてまいります。
あわせて、高度な専門性を有する介護職員がその評価にふさわしい賃金を得られるよう、これまで国に対して介護報酬の見直しなどを働き掛けており、今後も強く要望してまいります。
次に、介護予防・フレイル予防についてであります。
高齢者がフレイルや要介護状態にならないためには、早期かつ体系的な介護予防の取組が重要であり、外出や対面での会話等を控えがちであったコロナ禍においては、その重要性はますます高まっております。
そこで県では、実施主体である市町村に対して、理学療法士などのリハビリ専門職や認知症施策の専門家等で構成する地域包括ケア総合支援チームを派遣して、オーダーメイド・伴走型の支援を行っています。
例えば、健康な高齢者に社会的なつながりや運動の機会が提供できるよう、通いの場の立上げや運営を支援したり、フレイルの方が栄養・口腔等の専門職による指導が受けられるようにするなど、具体的な助言を行っております。
また、要支援者に対しては、「介護予防・日常生活支援総合事業」にも位置付けられる短期集中的な運動機能改善プログラムの提供ができるようにするなど、健康状態に応じた体系的な介護予防の取組を支援しております。
一方、フレイルを含めた早期の介護予防に取り組むためには、健康に関するデータを収集し、活用することも重要であります。
市町村によっては、気軽に参加できるフレイルチェック測定会を定期的に開催したり、医療・介護のレセプトや健診結果を把握し、フレイルのおそれのある高齢者に対して専門職の指導を行っているところもございます。
今後は、このような健康データを積極的に活用した好事例が更に広がるよう、県が実施する研修会などを通じて横展開を図ってまいります。
介護予防政策の体系化については、埼玉県高齢者支援計画推進会議の御意見も伺いながら、計画の中に位置付けて、フレイル予防を含む介護予防に取り組んでまいります。
次に、認知症予防に資する取り組みについてでございます。
認知症は未だに発症や進行の仕組みの解明が不十分であり、根本的な治療薬や予防法は確立されておりません。
このため、国の「認知症施策推進大綱」では、仮に認知症になったとしても地域の中で共に暮らせる社会を実現することが求められています。
私は、かつて認知症カフェを訪問した際に、いきいきとバンド活動を行う認知症の方々にお会いし、認知症の方もまたそうでない方も、尊厳と希望を持ち、同じ社会で共に生活していく重要性を、身をもって実感いたしました。
一方、議員お話しのとおり、若いうちから認知症について正しく理解し、認知症予防に資する活動を実践することも重要であります。
県では、認知症サポーター養成講座において、若い時から適度な運動や健康的な食生活・生活習慣を心がけることなどが、結果的に認知症になるリスクを減らせることを周知しております。
今後は、県内の大学や企業に対して、学生や若い社員向けに認知症サポーター養成講座の開催を働き掛けることで、認知症予防に資する取組への理解を促進するとともに、県のSNSなども活用し普及・啓発を行ってまいります。
第9期計画において、こうした認知症予防に資する取組を県民に更に実践いただけるように取り組んでまいります。
次に、介護施設等の感染症対策の強化についてであります。
本県では、新型コロナウイルス感染症による死亡者や重症者を減らすことを戦略目標に掲げ、重症化リスクの高い高齢者が入所する施設に重点的な対策を実施してまいりました。
例えば、感染対策の徹底のため県職員による施設の巡回や、感染拡大防止のためCOVMATやeMATによる早期介入を行ってまいりました。
また、施設職員の不足への対応としては、議員お話しの互助ネットワークに加え、施設内での療養体制を確保するための看護師派遣、リリーフナース制度を導入をいたしました。
さらに、感染が急拡大した時期には、施設内に感染を持ち込まない対策として、職員に対する頻回検査も実施をしてまいりました。
このように、戦略に基づく様々な戦術を展開してきたところであります。
一方で、互助ネットワークについては有効に利用されておりましたが、感染拡大時に自分の施設で陽性者が出ると他の施設に人を出す余裕がなくなるなど、派遣の調整が難しい場合もございました。
そうしたことも含めて、新型コロナウイルスなどの感染症にも対応できる実践的な業務継続計画の策定など、個々の施設の運営強化を推進する一方で、必要な場合に互助ネットワークを活用いただくなど、総合的な体制強化が必要と考えます。
こうした課題などについて、第9期計画では、最悪の事態が発生しても介護施設等がサービス提供体制を確実に確保できる効果的な取組が盛り込めるよう計画策定の会議の場を通じて検討してまいりたいと考えます。

8 埼玉県として有機農業への取組について(知事)

Q 岡 重夫 議員(県民)

私は、昨年の県議会の代表質問で、農水省の緑の食料システム戦略に有機農業の取組面積の割合を2050年までに全耕地面積の25%とあるが、現状、0.2%からどのように目標を達成するのかという質問を行いました。これに対して知事から、県は2050年の目標を見据え、有機農業の拡大に向けた取組を着実に進めていく旨の答弁を頂きました。しかし、世界の現状を見た場合、一番高いイタリアでは16.0%、ドイツでは10.2%などを考えると、日本の目標値が高過ぎると考えています。
一方、どうして日本では有機野菜の良さが叫ばれる中、有機栽培農家の数が増えないのでしょうか。その理由は、大きく4つあるようです。1つは、有機農法にすると化学的に合成された農薬や肥料が使えないので、栽培に技術力が必要なこと。2つ目は、除草剤が使えないので、雑草の除去に手間暇がかかってしまうこと。3つ目は、有機JAS認証の取得に手間がかかること。そして、4つ目は、日本とヨーロッパの国民の有機栽培への考え方の違いです。
特に、この4点目の考え方の違いについては、日本は有機栽培野菜は体に良い、おいしいという理由で購入しますが、ヨーロッパでは環境に良いという理由で購入され、売上げが飛躍的に伸びているそうです。環境問題に対する国民の考え方の違いがはっきり表れています。
そこで、日本でも環境面での有機栽培野菜の良さについて理解を深めてもらうことが大事だと痛感しています。昨年、農林部の担当者が宮代町にある日本工業大学の名誉教授が支援する蛭田農園の有機栽培農法を視察し、現場で有機栽培が環境に良い影響を与えている取組を見せてもらいました。
ところで、昨年の私の代表質問で「政府の有機農業の目標値2050年の25%を県としてどのように達成するのか」という問いに、知事は「先進農家を核として生産から流通、消費の観点も取り入れた地域ぐるみの有機農業を確立する取組を支援し、全国のモデルとなる産地を育成する。さらには研究や普及、栽培指導などを担う人材の育成、確保も図る」などの前向きな答弁をいただいています。具体的に、先進農家を核とした全国のモデルとなる産地を育成することが急務で、その成功例によって横に広がることになると考えます。
そこで、有機農業が環境面でも良いことを知ってもらい、県民の環境問題の関心を高めるための啓発活動などをしてはいかがでしょうか。まず、この件に関する知事の御見解を伺います。
また、全国のモデルとなる産地の育成状況について、知事に伺います。

A 大野元裕 知事

有機農業が環境面でも良いことを知ってもらい県民の環境問題への関心を高めるための啓発活動についてでございます。
議員御指摘のように、日本政策金融公庫の調査でも、有機農産物の購入理由は「体に良いから」が47%を占め、環境保全への寄与を評価して購入する人は16%にとどまっております。
国の調査では、有機農業など環境保全型農業は、一般の栽培と比べCO2排出量が約4割削減となることや、生物多様性の保全に資することなど、環境面の効果が明らかにされております。
有機農業の拡大を図るには、消費者にこうした情報を周知をし、理解を得ることで、生産者の取組に社会的価値を認めて購入するエシカル消費を普及させていくことが重要であります。
本県は生産地と消費地が近いという強みがあり、県では、有機農業者が市町村やNPOと連携して消費者と交流する活動などを支援してまいりました。
令和4年度は、有機農業関係者の交流の場として埼玉県有機農業プラットフォームをSNSに立ち上げ、生産者、消費者、販売流通業者の結びつきを促進しております。
また、埼玉県SDGs官民連携プラットフォームや消費者団体との意見交換の場でも、環境に優しい農業やエシカル消費について情報発信してまいりました。
今後、イベントなどでのPRを継続するとともに、量販店との連携を深め、チラシ配布やポスターの掲示などにより、情報発信の強化を図ってまいります。
さらに、県では下水汚泥の堆肥化に取り組んでおり、下水汚泥の活用がCO2削減や化学肥料の低減に寄与することを生産者や消費者にPRしていきたいと考えています。
こうした取組を通じて、有機農業を含む環境に優しい農業の価値について、県民の理解を促進してまいりたいと考えております。
次に、全国のモデルとなる産地の育成状況についてであります。
国は、有機農業推進のモデル的先進地区として、2025年までに100市町村で「オーガニックビレッジ」を創出することとしています。
本県では、有機農業の産地として全国に名高い小川町で行われている、地域ぐるみの有機農業振興の取組を支援しており、町ではオーガニックビレッジ宣言を行う予定となっております。
令和5年度は、町の協議会が作成する5年間の計画に基づき、有機農業の栽培マニュアルの作成や、地元レストラン・食品加工業者による有機農産物を活用した商品開発などの取組を進めることとしております。
県としては、こうした小川町の取組に加え、全国のオーガニックビレッジの取組について、県内への横展開を図ってまいります。
本県は、小川町のみならず、県北西部のJAでは生産出荷部会として珍しい有機農業部会が生産・販売を行っており、また、農業大学校には全国に2か所しかない有機農業専攻があるなど、有機農業の素地があります。
また、県内には、環境配慮をコンセプトに包装を極力なくして、かつ売れ残りも加工販売する取組で、2022年度の国のグッドデザイン賞を受賞した有機農産物専門店もあり、生産と販売の一層の連携が考えられます。
こうした取組を通じて、モデル産地の育成と取組の横展開を進め、有機農業の面的拡大を図ってまいります。