異次元の少子化対策について

第2子保育料無償化を(知事)

Q 金野桃子 議員(県民)

岸田文雄首相は、異次元の少子化対策を掲げ、今月、こども未来戦略方針を示したところです。それによれば、児童手当の拡充、出産の支援、育児休業取得の促進、保育サービスの充実を柱として、2024年度から3年間は、予算として3兆5000億円規模になると言われています。
東京都においても110億円を計上し、今年10月から第2子の保育料を所得制限なしで完全無償化とする予定です。このほか、1261億円を計上し、18歳以下の子供に月5000円を給付する予定です。
少子化を静かなる有事として捉え、国も東京都も、従来の少子化対策より一歩進んだ施策を打ち込んだと評価していますが、埼玉県としても、第2子保育料無償化をはじめ異次元の少子化対策を今こそ一歩進めるべきだと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。

A 大野元裕 知事

子育て支援については、保育料の無償化をはじめ、乳幼児の医療費助成などの取組も見られますが、これらは、本来、国が全国統一的に対応すべきものであり、自治体間の競争に付されるようなものではないと考えております。
そのため、保育料の無償化等につきましては、これまで全国知事会や関東知事会を通じて、国に対し要望を行ってまいりました。
現在、こども未来戦略会議におきまして、様々な議論が進められているところであります。
県といたしましては、その動向を注視しながら、国に対し、ナショナルミニマムで取り組むべき子育て支援策の確実な実施を働き掛けたいと考えております。
他方、地方自治体におきましては、地域における子育てを取り巻く状況を的確に捉え、それぞれの実情に応じた支援策を講じていくことが重要であります。
そこで、本県の特徴である核家族化の進行や地域コミュニティの希薄化等により孤立化した子育てを防ぐため、今年度より新たに「コバトンベビーギフト」事業を開始し、市町村と子育て世帯が確実につながることで悩みなどを気軽に相談していただけるよう支援をしております。
また、子ども食堂など、子供が地域で安心して過ごせる居場所を全小学校区800か所に設置できるよう取り組んでまいります。
県では、子供を安心して生み育てることのできる社会づくりにしっかりと取り組んでいくことで、少子化対策につなげてまいります。

「こどもまんなか宣言」を(知事)

Q 金野桃子 議員(県民)

こども家庭庁は、子供たちが健やかで幸せに成長できるような社会を実現するという「こどもまんなか宣言」の趣旨に共感、賛同し、その取組を応援し、自らもアクションに取り組む地方自治体や企業を、こどもまんなか応援サポーターと位置付け、活動しています。都道府県レベルでは、熊本県、滋賀県、愛媛県などが宣言し、活動を始めています。
私たち無所属県民会議も、子供を守ることを最優先に考え、先日、大阪市鶴見区に開設された日本初のコミュニティ型こどもホスピス、TSURUMIこどもホスピスを視察させていただき、引き続き子供を守る政策を最優先に取り組む決意を新たにしたところです。
今回、大野知事も是非、こどもまんなか応援サポーターとして「こどもまんなか宣言」をしてはいかがか、知事のお考えをお聞かせください。
併せて、例えばキックオフイベント、県内市町村や企業と連携した取組、県民アンケートの実施、庁内プロジェクトチームの設立など、こどもまんなか埼玉として県全体で取り組むお考えはないか、知事にお尋ねします。

A 大野元裕 知事

本県は、これまでにも市町村、企業、子育て支援団体等と連携するなど、社会全体で子育てを応援する取組を数多く実施しております。
パパ・ママ応援ショップや赤ちゃんの駅は、あわせて2万3500箇所を超え、全国トップクラスの数を誇ります。
また、先ほど申し上げました「コバトンベビーギフト」事業により孤立した子育てなどの防止や子ども食堂など安心して過ごせる子供の居場所づくりにも取り組んでおります。
私は、子供を生み育てることに希望の持てる社会を目指し、誰一人取り残すことのない「日本一暮らしやすい埼玉」を実現することが「こどもまんなか社会」の実現に向けたアクションであると考えております。
私といたしましても「こどもまんなか社会」の趣旨には大賛成であり、宣言についても近々行いたいと考えます。
次に、県内市町村や企業との連携した取組等、県全体として取り組む考えはないかについてであります。
「こどもまんなか社会」の実現には、県だけではなく、市町村、企業、県民など多様なステークホルダーとその趣旨を共有することが重要と考えます。
そのため、官民連携で「たのしい子育て」を情報発信する「SAITAMA子育て応援フェスタ」を新たに開催し、「こどもまんなか社会」の機運を醸成してまいります。
あわせて、「こどもまんなか応援サポーター」として、県民に絶大な知名度を誇る埼玉県のマスコット「コバトン」と「さいたまっち」にも活動していただくとともに、彩の国だよりやホームページなどを活用するなど広報も幅広く展開をいたします。
このほか、多くの企業等に「こどもまんなか」のアクションを起こしていただけるよう、県内経済6団体や子育て支援団体などと連携をしてまいりたいと思います。
今後も、「こどもまんなか社会」の実現に向け、県全体で積極的に取り組んでまいります。

保育士試験におけるアプローチを(福祉部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

保育士確保が叫ばれる中、県内保育所の方から、一般の人材会社から保育士を採用する場合、紹介手数料の負担が大きいと御相談を頂きました。県などの行政からの紹介の場合や御本人が直接園に申し込んだ場合などは紹介手数料は不要ですが、一般の人材会社のエントリーから採用が決まると、月収の3か月程度、金額にして80万円近くを支払う必要があり、その人が辞めた場合、新たに雇うと更に80万円近くを支払い、場合によっては年間数百万円かかることもあるそうです。
私は、2021年に保育士試験に合格したのですが、その際、時間の都合上、東京都で受験をしました。東京都の試験会場では、「東京都で働きませんか」というお仕事相談会のチラシが配布され、その後も、小池百合子都知事の顔写真付きメッセージなども受け取っています。埼玉県では、どのように受験生や合格者に対してアプローチをしているのか確認したところ、試験会場にチラシは置いているものの配布はしておらず、受験生や合格者へのアプローチ等も特段されていないようです。
保育士試験は国家資格ではありますが、児童福祉法上、都道府県知事が行うこととなっています。埼玉県においても、試験会場でお仕事相談会のチラシを配布したり、埼玉県の保育士向け情報配信LINE「SAITAMA保育のおしごと」の登録を促したり、メールアドレスの登録を促し各種情報を提供したり、県の紹介で県内保育所へ就職するルートを強化すべきだと思いますが、福祉部長の御見解をお伺いいたします。

A 金子直史 福祉部長

保育士試験会場における受験者に対する情報提供については、保育士試験の指定試験機関である一般社団法人全国保育士養成協議会と調整しながら行っております。
これまで県内保育所への就職に関するチラシや、就職相談会等の情報をお知らせするメールマガジンの登録案内を会場内の所定の箇所に設置し、受験者に周知を行ってまいりました。
保育士確保は重要な課題であり、保育士試験は、新たに保育士となる方に、県内保育所への就職をアピールする貴重な機会であると考えます。
試験会場における効果的な働き掛けの方法について、議員の御提案も踏まえて、今後、全国保育士養成協議会と調整してまいります。

令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号による被害について

内水ポンプの運用等について市町村との連携を(県土整備部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

今回の大雨に際し、一部市町村において、河川が危険水位に達したことを理由に内水ポンプを止めたそうですが、その旨を県は当該市町村のツイッターによる配信を見て事後的に偶然知ったと伺いました。実際には、河川管理者である県によると、当該市町村の河川は、河川の水が安全に流下できる水位であるハイウォーターレベルには達していなかったとのことです。内水ポンプの運用を含め、内水被害の軽減に向けて、河川管理者である県と市町村との連携体制を全県を通して整えるべきでいないかと考えますが、県土整備部長の御見解をお伺いいたします。

A 金子勉 県土整備部長

内水ポンプについては、市町村等が排出先の河川を管理する県と放流量を協議した上でポンプの排水能力を決定し、河川法に基づく占用許可を得て設置しております。
内水ポンプの運転に当たっては、市町村等が、県の確認を得た上で、運転調整のルールを策定しています。
県としては、今回の台風第2号に伴う大雨を踏まえ、占用者である市町村等との連絡調整会議などを通じて、県内全ての内水ポンプの運転調整のルールについて点検を行い、適切な運用がされるよう連携強化を図ってまいります。

高齢者施設等の福祉施設への支援を(福祉部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

今回、埼玉県と同様に被害に遭った茨城県では、県の調査によれば、床上・床下浸水が約800棟に上り、現在開会中の6月定例会において、被災した高齢者施設や保育施設、障害者施設に対する復旧費用の一部補助事業として約1億1500万円を計上したそうです。
埼玉県において、今後同様の災害が起きた際、これらの福祉施設は命に直結する施設でもあることから、県としても事前に対策をすることが必要だと考えますが、福祉部長の御見解をお伺いいたします。

A 金子直史 福祉部長

施設においては、被災時にも継続して福祉サービスを提供するためのBCPの策定や実際の災害リスクを想定した避難訓練の実施が重要です。
県では、会議の場などを通じて、こうした事前対策を適切に行うよう各施設に指導するとともに、今年度から新たに、BCPの策定が遅れている施設にアドバイザーを派遣する取組を始めております。
一方、実際に施設が被災した際には、施設の利用者が元の生活に一刻も早く戻れるよう速やかな復旧が求められます。
このため、被災した施設に対して補助制度などの適用について速やかに情報提供を行うなど、国と連携して復旧を支援してまいります。

児童虐待について

児童虐待ゼロに向けた決意・「産前産後の母親と子どもを守る」決意を(知事)

Q 金野桃子 議員(県民)

過去3年間において県内で起こった児童虐待死亡事例は全5件で、そのうち4件は0歳児が犠牲になっています。特に令和3年度では、4件の児童虐待死亡事例が生じ、そのうち3件は、産後間もない母親が、0歳児、いずれも生後4か月以内、首も据わっていないような赤ちゃんを手にかけたものです。
県内で生じた児童虐待という言葉の実態は、そのほとんどが産後間もない母親が生まれたての我が子を殺害したというのが事実です。改めて知事に、児童虐待ゼロに向けた決意をお聞きするとともに、児童虐待死の実態は、産後の母親が生まれたての我が子を殺害した事例であることを認識し、「産前産後の母親と子どもを守る」という強い決意をお聞かせいただきたいと思います。

A 大野元裕 知事

私は、子供の成長を社会全体で支えることが極めて重要であるとの考えから、知事就任以来、児童虐待対策に力を注いでまいりました。
これまで、児童相談所の職員を大幅に増員するとともに、本年3月には新たに一時保護所を付設した熊谷児童相談所を開設し、令和7年度には、朝霞市内に県で8番目となる新たな児童相談所を開所することといたしております。
また、児童虐待に迅速かつ的確に対応するため、警察と連携した新たなシステムを導入し、児童相談所と警察がより詳細な情報をリアルタイムで共有をしております。
さらに、県医師会、埼玉弁護士会など児童を取り巻く様々な団体の代表メンバーとした「埼玉県児童虐待防止対策協議会」を立ち上げ、ワンチームで県全体の児童虐待防止に取り組んでおります。
子供は社会の宝であります。悲惨な児童虐待事件によって尊い子供の命が失われることがないよう、児童虐待防止に全力で取り組んでまいります。
次に、「産前産後の母親と子どもを守る」という強い決意についてでございます。
議員お話しのとおり、虐待による0歳児の死亡事例については、令和2年度に1件、令和3年度に3件が発生しており、いずれも生後4か月以下の乳児であります。
幼い命がなくなることは、大変痛ましいものであり、胸が締め付けられる思いであります。
そこで、支援が必要な妊婦を早期に把握し、子育て期まで切れ目なく支援することが非常に重要であると考え、県では「にんしんSOS相談事業」やワンストップでサポートする「埼玉版ネウボラ推進事業」に取り組んでおります。
今年度から実施をしているコバトンベビーギフトは、妊娠期から妊婦が行政とつながることを主眼とした取組であり、市町村と連携し、取り残される子育て家庭の解消を目指しています。
また、今年度から、母子保健部門を、児童福祉部門を担当する少子化対策局長に一体的に所掌させることにより、母子保健施策を通じた虐待防止対策を強化してまいります。
さらに、庁内において部局横断による子供・子育てに関するプロジェクトを設置し、縦割りを排し、多様な側面から支援策を検討しております。
こうした取組を通じて、子供を安心して生み育てられる環境を整備し、児童虐待の根絶を目指したいと思います。

母子保健に特化した取組を(保健医療部長、福祉部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

現在県において、福祉部では、児童虐待防止対策として、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」、埼玉県虐待通報ダイヤル「#7171」のほか、要保護児童対策地域協議会、SNSによる相談窓口、親と子どもの悩みごと相談@埼玉に取り組んでいます。
また、保健医療部では、妊娠期からの虐待予防強化事業として、県内全産婦人科医療機関及び助産所を対象とし、妊娠初期から養育支援が必要な妊産婦を把握し、訪問支援等を行っています。
現在県では、母子保健の取組について健康長寿課の中の一担当として行っていますが、女性の社会進出やライフプランの変化、ライフステージに合わせた課題も複雑多様化しています。母子保健あるいは女性のライフサポートを健康長寿課の中の一担当としてではなく、それに特化した担当課を設けるべきではないかと考えますが、保健医療部長の御見解をお伺いいたします。
また、児童虐待防止について、現在は福祉部を中心に対策が取られていますが、実際に起きている児童虐待は母子保健の範ちゅうであることを真摯に受け止め、保健医療部とも部局を横断してプロジェクトチームを作るなど、産前産後の児童虐待ゼロに向けた取組を進めるべきだと考えますが、福祉部長の御見解をお伺いいたします。

A 表久仁和 保健医療部長

健康長寿課の母子保健担当では、女性の心身に大きな変化が現れる、妊娠期から子供の乳幼児期において、保健指導や健康診断等を通じて、母子の健康の保持及び増進に取り組んでいます。
また、母子だけでなく、母子を取り巻く家族の健康について支援することも重要であることから、県民の健康や保健の向上を担当する課で一体的に女性のライフサポートの強化に取り組んでいます。
特に、妊娠期から産後の新生児期については、児童虐待の芽を摘む意味において非常に重要な時期であり、児童福祉部門と一体的に支援に取り組んでいくことが重要です。
そこで、今年度から母子保健担当を少子化対策局長の所掌とすることにより、児童福祉部門と連携しながら、妊娠期からの虐待予防について組織体制を強化したところです。
今後も児童虐待の防止に母子保健の観点からしっかりと取り組んでまいります。

A 金子直史 福祉部長

児童虐待による死亡事例において0歳児の割合が多い中、母子保健部門との連携が重要であると認識しております。
県では、児童虐待重大事例検証委員会の委員として、令和3年度から新たに母子保健分野の専門家を追加し、再発防止に向けた助言をいただいております。
また、保健医療部などの関係部局を横断した子供・子育てに関するプロジェクトを設置し、産前産後からの切れ目のない支援を行うため、県の取組等について検討を行っております。
今後は、福祉部と保健医療部の関係課が、日頃業務を行う中で抱えている課題などを共有するための連絡会議を新たに設置して、会議を定期的に開催し、さらに連携を強化してまいります。

再Q 金野桃子 議員(県民)

1点目、健康長寿課の中の母子保健担当についてです。
母子保健について、少子化対策局長が所管することとなり、連携した取組を推進していきたいという趣旨の御答弁でした。
現在、健康長寿課の中には、総務・歯科担当、母子保健担当、健康増進・食育担当、健康長寿担当の4つの担当課が入っているとのことです。健康長寿という言葉は、文字どおり取りますと健康で長寿を目指すというものだと思いますが、この4つの担当の担当業務、歯と口の健康、妊娠・出産に関する女性の健康、不妊症、子供の健やかな成長への支援、県民の健康増進、食生活の指導や食育、健康長寿埼玉プロジェクトの推進など、課名とすると、むしろヘルスケア課、ライフサポート、健康増進といったような課名で、高齢者であっても、働き世代であっても、子供であっても、赤ちゃんであっても、全世代に向けた、男性も女性も県民全体のヘルスケア、健康増進を進めていく役割を担っていると考えています。
人生100年時代を迎える現代社会において、その中で、特に女性のライフステージに応じたサポートをどのように担っていくお考えなのか、改めて保健医療部長に御見解をお伺いいたします。
2点目、プロジェクトチームについてです。
子ども・子育てプロジェクトという答弁を、他部局連携して取り組んでいきたいという趣旨の御答弁でした。このプロジェクトチームについて、単発のものなのか、それとも複数年にまたがって継続するのか、福祉部長にお伺いいたします。
また、子ども・子育てプロジェクトチームのユニット、活動テーマの設定といたしまして、児童虐待防止を取り上げられないか。正に福祉部、そして保健医療部、場合によっては警察や児童相談所、教育委員会などが部局を横断して取り組むべき課題だと感じますが、福祉部長にお伺いいたします。
その上で、まずは県庁内の連絡会議から始まるのだと思いますが、そういった取組の中で、実際に県内で産前産後ケアを行っている医療機関や助産所、NPO法人などとも連携したり、県内市町村ではそれぞれ独自の取組も始まっており、これらの好事例を共有したり当事者の声を聞いたりと、そういったコンソーシアムのようなものも考えられるのか、福祉部長にお伺いいたします。

再A 表久仁和 保健医療部長

健康長寿課では、母子だけでなく母子を取り巻く家族の健康について支援することも重要であることから、県民の健康や保健の向上を担当する課で一体的に女性のライフサポートの強化に取り組んでいるところでございます。
議員御指摘の、女性のライフステージに応じたサポートについてでございますが、女性にとって最も変化が大きくサポートが必要なのは、今回議員から御指摘いただいた妊娠・出産の時期であると考えます。
このため、例えば、今年度から、思春期の健康や将来の妊娠を踏まえた日々の健康相談に応じる「プレコンセプションケア相談センター埼玉 ぷれたま」を設置するなど、正しい知識の普及啓発に取り組んでいるところです。
今後も引き続き、健康長寿課の中で女性のライフステージに応じたサポートにしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

再A 金子直史 福祉部長

子供・子育てに関するプロジェクトの実施期間ということでございますが、このプロジェクトにつきましては、今年度から始まったばかりでございまして、今後、議論を進めていく中で、その継続の必要性についても検討してまいりたいと考えております。
次に、プロジェクトで、虐待防止について取り上げられないかという御質問でございますが、これについては産前産後から含めて、非常に重要な議論をしておりますので、その中で虐待防止についても検討事項ということで取り上げていきたいと思っております。
次に、医療機関やNPO法人などとの連携の関係でございますが、県では、警察、県医師会、助産師会などの医療、教育、市町村などとの関係機関の代表が一同に会する、児童虐待対策についての意見交換の場、「埼玉県児童虐待防止対策協議会」と言いますが、こちらを設置してございます。
この協議会を活用することで、議員御提案の内容について取り組むことができますので、この協議会を活用させていただきたいと思います。

産前産後ケアの充実を(保健医療部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

令和2年9月定例会一般質問において、私は、県の産後鬱ケア推進事業及び産後健診推進事業の2つの事業について、共に執行率が40から50%前後、毎年、予算の半分以上が使われていない実態を指摘し、このことは翌日、地元紙の1面にも掲載をしていただきました。
このときの御答弁で、産後健診の契約事務を県が代行するなど、市町村の意見を聞きながら、事務負担の軽減につながる見直しを行う旨の御発言がありました。この後の事業拡大の状況について、例えば市町村からどのような意見があったか、課題を何と捉えているのか、どのような見直しをしたか。その結果、どの程度事業が広がったかについて、保健医療部長にお伺いいたします。
また、先ほどの妊娠期からの児童虐待予防強化事業は、産婦人科医療機関及び助産所を対象とし、養育支援を必要とする家庭に対して支援を行う形式ですが、実際には、妊娠期に適切に医療機関を受診せずに出産に至ったケースや、妊娠・出産期は問題なく過ごせたものの、産後鬱の可能性も含め、夜中に泣きやまない赤ちゃんに対し突発的に行為に出てしまう例がとても多いと認識をしています。だからこそ、医療機関を受診していない妊婦に対する支援、また、現在県をはじめ行政が対象としているのはハイリスクの母親ですが、それだけではなく、いわゆる普通の母親を対象とした産前産後ケアを進めるべきだと考えますが、保健医療部長の御見解をお伺いします。

A 表久仁和 保健医療部長

「産後うつケア推進事業」については、市町村において、産後うつ病のスクリーニング検査である「EPDS」等を行っており、令和4年度は16市町で実施されております。
県では、この検査の実施は重要であると考え、他の事業でも実施できるよう、市町村職員等に研修を通じて普及啓発してまいりました。
現在では、乳児家庭への訪問時など、様々な機会で検査などが実施され、全市町村において産婦の精神状態が把握され、必要な支援につなげています。
また、「産後健診事業」については、令和4年度に各市町村と各産科医療機関等との間の個別契約が不要となるよう、県が一括して契約することで市町村の事務負担の軽減を図ったところ、令和5年度には全市町村において実施されております。
次に、医療機関を受診していない妊婦に対する支援及びいわゆる普通の母親を対象とした産前産後ケアを進めるべきでは、についてお答えを申し上げます。
県では、予期せぬ妊娠等の相談に応じる「にんしんSOS埼玉」を開設し、相談を契機として、未受診妊婦を産科医療機関や市町村につなぎ、その後の継続的な支援につなげています。
この相談窓口をPRするため、今年度からSNSによる広報も始めたところであり、今後もその周知に努めてまいります。
また、今年度から、妊娠から出産・子育て期において経済的支援と伴走型支援を一体的に行う「出産・子育て応援事業」が始まり、産前産後ケアの充実を図ったところです。
具体的には、全市町村において「妊娠届出時」及び「出生届出後」における面談に加え、妊娠8か月頃にアンケートを行うことで、全ての妊産婦について、少なくとも3回、状態を把握する機会を持つようになりました。
このほか、新生児訪問や乳児家庭全戸訪問を行うことにより、子育て家庭の相談に対応し、必要な支援につなげています。
今後も、産前産後ケアが必要な母親を漏れなく・切れ目なく支援するため、市町村と連携して取組を進めてまいります。

小児の高次脳機能障害について(福祉部長、保健医療部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

高次脳機能障害について、私は、令和4年9月定例会において全体的な支援の充実強化を求めましたが、残念ながら議論は平行線で終わりました。
前回取り上げた課題の中でも、特に議論がかみ合わなかったのが小児の高次脳機能障害であると感じており、今回改めて、当事者団体である高次脳機能障害を持つ子供の家族会の皆様や支援団体の皆様にもお話をお伺いし、再度質問に取り上げたいと思います。
前回、埼玉県には小児の高次脳機能障害の支援拠点がなく、県内在住の当事者のお子さんとその御家族は、神奈川県や千葉県のリハビリテーションセンターで支援を受けている旨をお伝えしました。
小児の高次脳機能障害は、回復期のリハビリ、復学後の教育機関との連携など総合的な支援が必要であり、県内に支援拠点をつくるべきだと考えていますが、御答弁では、支援拠点については県総合リハビリテーションセンターがまずは担い、これに障害者福祉推進課も携わって、関係機関の話も聞きながら進めてまいりたいとのことでした。
私は、小児の高次脳機能障害についても、次期の第8次地域保健医療計画や第7期障害者支援計画に位置付けた上で、県リハの中に小児科をつくり支援拠点とするか、あるいは実際に高次脳機能障害の子供を診ているであろう小児医療センター内に支援拠点をつくり、支援拠点に高次脳機能障害児を診られる医師を月1回程度であっても配置し、当事者の意見を聞いて実態把握をした上で、必要な施策、例えば医師を講師とした研修会の実施や、教育や医療機関への周知・啓発を行うことが大切だと考えますが、福祉部長及び保健医療部長に御見解をお伺いいたします。

A 金子直史 福祉部長

まず、小児の高次脳機能障害について、第7期障害者支援計画に位置付けることについてです。
県は現行の第6期障害者支援計画において、高次脳機能障害者及び小児が身近な地域で支援を受けられるよう、相談事業の推進や関係機関の人材育成などを位置付けております。
現在、次期計画の策定を行っているところであり、引き続き、小児の高次脳機能障害について位置付けを行ってまいります。
次に、県総合リハビリテーションセンターに小児科を作り支援拠点として、高次脳機能障害児を診られる医師を月1回程度派遣することについてです。
県総合リハビリテーションセンターに設置している高次脳機能障害者支援センターでは、小児を含めた相談に応じ、地域の支援機関につなぐなどの支援を行っております。
一方で、リハビリテーションセンターで提供する医療は、概ね中学生以上を対象としており、小児科医はおりません。
小児科を設けるには、新たに小児科医の他、小児医療に精通した看護師や作業療法士などの医療従事者が必要となります。
特に、小児の高次脳機能障害に精通した医師は全国的にも少なく、月1回程度であっても配置することは現状では難しいと考えております。
このため、これまでも医療機関を対象に研修を実施してまいりましたが、今後は、保健医療部とも連携して、医師や当事者家族を講師とした研修会を実施するなど、高次脳機能障害児に対応できる医療機関を増やしてまいります。
次に、当事者の意見を聞いて実態把握した上で、必要な施策を行うことについてです。
議員お話しのとおり、当事者の方々から現状やニーズを伺って実態把握を行うことが重要ですので、今後、家族会などの関係団体と定期的な意見交換の機会を設けたいと考えています。
また、福祉、医療、教育等の関係者を対象として理解を促進する研修会の実施や支援について分かりやすく紹介するパンフレットや、ホームページの作成など、周知啓発に努めてまいります。

A 表久仁和 保健医療部長

まず、小児の高次脳機能障害を地域保健医療計画に位置付けることについてでございます。
高次脳機能障害は、外傷性脳損傷などにより、記憶力や注意力の低下などの症状が現れ、日常生活や社会生活に支障が出ることから、必要な医療やサービスを受けられるよう、適切な診断がなされることが必要です。
そのため、現行の地域保健医療計画においては、医療と福祉の連携体制の充実を図ることとしております。
今年度策定する第8次計画においても、障害者支援計画との整合を図りながら策定してまいります。
次に、支援拠点を小児医療センター内に設置することについてでございます。
小児医療センターでは、外傷などで入院した急性期の小児患者を治療する過程で、高次脳機能障害が疑われる場合、障害の程度を評価し、診断を行っています。
高次脳機能障害の診断を受けた方については、外傷などの治療が終了した後は、療育施設などにつないでいます。
議員お話しの小児医療センター内に小児の高次脳機能障害の支援拠点を作り、総合的に支援することは、小児医療センターが担っている高度急性期医療とは性質が異なり、難しいものと考えています。
医師等の研修会の開催に際し、小児医療センターを含め対応可能な医療機関の方に広く協力を呼び掛けるなど、支援体制の構築に向け福祉部と協力してまいります。

ChatGPTの教育への影響及び活用について(教育長)

Q 金野桃子 議員(県民)

ChatGPTは、OpenAIが2022年11月に公開した人工知能チャットボットです。全世界に大きな衝撃を与え、歓迎する声がある一方、脅威と捉える声もあり、世界的には規制する動きも出ています。日本政府は、経済成長に向けて大きな可能性のある技術だとして、現時点で規制はしない方針のようですが、課題への対応を急ぐため、関係省庁による検討を進めています。
議会においても、ChatGPTについて様々な御意見が上がっており、また、先日の知事会見でも、少しずつ概要が見え始めたところです。
そこで、私からは、少し視点を変えて教育局にお尋ねします。
文部科学省では、今後、国内外の事例を集め、専門家の意見も聞いた上で、なるべく早く方針を示す方向だそうですが、埼玉県教育委員会として教育への影響をどのように捉えるのか、教育長のお考えをお聞かせください。
また、市町村教育委員会への支援、特別支援学校での活用の在り方、教職員の負担軽減のための活用という点についてどのように考えるか、教育長にお尋ねします。

A 日吉亨 教育長

まず、教育委員会として、「教育への影響をどのようにとらえるか」についてでございます。
私は、ICTを活用した教育を積極的に推進することで、児童生徒の学びを今以上に豊かにすることを、目指しております。
ChatGPTなどの生成AIの活用については、様々な議論があることは承知しておりますが、考えをまとめる段階で、他に考えるべき観点はないか確認したり、考えを広げ深める学習活動を行ったりすることで効果的な学習になると考えます。
他方、宿題の回答や読書感想文を自動生成できるなど、活用方法によっては、児童生徒の主体的に考える力や創造性の育成への影響も懸念されます。
そこで、国が作成中のガイドラインや先行事例も参考にしながら、児童生徒の主体的、対話的で深い学びにつながるような活用方法を検討してまいります。
次に、「市町村教育委員会への支援、特別支援学校での活用の在り方、教職員の負担軽減のための活用という点についてどのように考えるか」についてでございます。
県といたしましては、先行して取り組んでいる自治体の事例などについて積極的に情報収集し、市町村教育委員会に提供してまいります。
また、特別支援学校におきましては、例えば言葉によるコミュニケーションに課題がある児童生徒が、生成AIを活用して自然な文章を作成する学習の支援に使用したり、それを使って周囲とのコミュニケーションに活用するといったことが考えられます。
生成AIなどの新しい技術は、特別支援学校の児童生徒の自立と社会参加に向け効果ある手段となる可能性が考えられますので、その活用の在り方を研究してまいります。
教職員の負担軽減につきましては、例えば、校務におけるアンケートや文案作成などの場面で、業務の効率化につながり得ると考えております。
今後、教育現場における様々な場面での、ChatGPTなどの生成AIの活用について研究してまいります。

税外未収債権の対策強化について(企画財政部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

税外未収債権とは、貸付金、負担金など自治体が有する税以外の未収金をいい、令和元年度決算では約22億円、令和2年度決算では、総合リハビリテーションセンター公営企業会計適用に伴う影響額を除くと、約22億円、令和3年度決算では約21.4億円と横ばい傾向にあります。
私は、税外未収債権については、制度の維持及び公平性確保のため、適切に管理、対応することが大切だと考えています。全国的には、例えば債権管理推進会議の設置、税外債権に関する実態調査の実施、債権管理適正化指針の策定、徴収強化月間の実施、コールセンターの設置などを行っているところもあるようです。
埼玉県においては、これまで、私が調べた限りでは、税外未収債権の現状や県の整理方針等が公開されておらず、部局横断的な組織体制がなかったため、令和4年度決算特別委員会において、税外未収債権については、部局横断的な組織体制を整えるとともに、未収とならないよう事前の対策にも力を入れ、その縮減に努めることを提言いたしました。
その後、現在までに、県ではどのように税外未収債権の縮減に取り組んでいるのか。まずは部局横断的な組織体制を整え、税外未収債権の現状や県の整理方針を公開するとともに、徴収強化月間、コールセンターの設置等を進めていく必要があると考えますが、企画財政部長の御見解をお伺いいたします。

A 中山貴洋 企画財政部長

本県では、平成26年度に制定した債権管理条例に基づき、税外未収債権の回収と整理の手続の基本的な取組方針を策定するとともに、適正な債権管理を徹底するため、マニュアルの整備や研修等を行ってまいりました。
こうした取組により、収入未済額は、平成26年度時点で約26.5億円でしたが、令和3年度は約21.4億円と着実に減少しております。
本年5月には、全庁的な取組を一層推進するため、部局横断的な「埼玉県 税外債権管理 推進連絡会議」を新たに設置し、基本的な取組方針について改めて意識の統一を図るとともに、困難事案の整理促進のため弁護士相談の活用等を促しました。
議員の御指摘のとおり、税外未収債権の現状等については現在公表しておりませんが、今後、県民に分かりやすくホームページで発信してまいります。
また、徴収強化月間やコールセンターについても、庁内の成功事例の横展開を促すとともに、高額未収債権は集中的に進捗管理を図るなど、税外未収債権の縮減に向けた取組を更に推進してまいります。

公民連携窓口の更なる活用について(企画財政部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

埼玉県では、民間企業などから事業の発案や既存事業の改善提案等を広く募集し、行政課題を解決するための埼玉コラボレーションラウンジ、通称サイコロを運用しています。主な取組を拝見すると、展示やイベントの共同開催等を行ってこられたようです。
今後、更に公民連携を推進するため、例えば民間企業などからフリーで政策提言案を受ける形のほかに、県からテーマや行政課題を提示して解決策を募集する形を新たに設けてみたり、担当課の窓口に民間企業からの応募を歓迎する表示をしてみたり、さらに民間企業側がより提案しやすいように、県の予算等の各種統計や各種行政計画を提示したり、オープンデータで提供したりするなど、工夫が必要だと考えます。現在行われている取組を更に一歩進めて、行政課題に対して政策という形で連携する公民連携を進める方策について、企画財政部長に御見解をお伺いいたします。

A 中山貴洋 企画財政部長

社会問題の複雑・多様化が進む中、様々な課題を行政だけで解決することは難しくなっております。
一方、近年はビジネスの発想で社会課題の解決を図る動きが広がりつつあり、今後は官と民が意見や提案を出し合い、社会課題の解決に取り組むことが重要と考えております。
昨年度、本県の官民連携の窓口には官民双方から148件の相談や提案があり、広報や事業のタイアップなどの官民連携事業を実施しました。
さらに現在約1400の企業・団体が参加する埼玉県SDGs官民連携プラットフォームでは、様々な分科会を設けて社会課題解決に向けた取組を進め、昨年度は大宮公園の舟遊池のかいぼりなどに取り組みました。
今後はこれらに加え、民間から政策提案を積極的に受け付ける窓口を設け、連携の幅を更に広げていきたいと考えております。
議員から御提案いただいた行政情報の提供の在り方や、民間から提案しやすい仕組みについては、民間企業のご意見も伺いながら、今後、検討してまいります。

「知事への提案」の充実について(県民生活部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

「知事への提案」とは、県政に関する御提案などを県民の皆様から直接知事にお寄せいただく制度です。お寄せいただいた提案などは、知事が全てに目を通した上で、担当する部局でよく検討し、政策への反映を進めていくというもので、私は、一般の県民の方が知事に直接声を届けることのできるすばらしい制度であり、充実を図っていくべきだと考えています。
現在では、県庁の県民案内室や県民案内所等に設置している専用ボックス、メール、ファクス、郵便で提出できるそうですが、例えば県内で多くの乗降客数が見込まれる駅に設置するなど、市町村役場や公共施設などに設置を依頼するなど設置場所を拡大できないか、県民生活部長にお伺いします。
また、公表の仕方について、現在、月1件、知事からの回答を県ホームページに掲載しています。「知事への提案」件数は、過去3年間を見ると、多いときで1万420件、少ないときで2922件と、いずれにせよ数千件レベルで推移しています。これに対して、対応状況を公表しているものは年12件のみですから、非常に少ないと感じます。公表件数を増やす、あるいは御意見の傾向を分析して総括するなど、御意見に対し、もう少し対応の見える化を図るなど、より双方向の制度を目指すべきだと考えますが、県民生活部長にお伺いいたします。

A 島田繁 県民生活部長

まず、「専用BOXの設置場所を拡大できないか」についてでございます。
議員お話しのとおり、知事への提案は、県民の皆様のご意見を知事が直接お伺いし、県政へ反映していく重要な広聴手段の1つでございます。
令和4年度の知事への提案は2922件で、郵送等、紙によるものは190件、ファクシミリが137件、残りの9割は電子メールによるものでした。
ご提案の駅等への専用BOXの設置は、設置費用や維持管理が必要になり、紙での提案が少ない中、費用対効果の面で課題がございます。
一方、知事への提案は、市町村役場や公民館等の窓口でも受け付けることができます。今後は、市町村の窓口の利用について改めて周知することで、紙での提案を希望する方の利便性向上を図ってまいります。
次に「対応の見える化を図る等、より双方向の制度を目指すべき」についてでございます。
現状では、知事が返信した中から、個人情報などに配慮した上で、提案数の多かったものや、県民生活で参考になるものを月に1件選定し、県ホームページで公開しております。
公開に当たりましては、個人情報に加え、様々な関係者との調整が必要であり、一律の公開は困難ですが、ご指摘のとおり、いただいたご意見を総括し、見える化することは大切であると考えます。
このため、今後は、公表の仕方を工夫し、どのような提案が多かったのか等、分野や傾向を見える化することで、県民の皆様の貴重なご意見をより県政に反映できるよう取り組んでまいります。

子ども医療費受給者証・障害者手帳のカード化について(保健医療部長、福祉部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

子ども医療費の全県における現物給付化が令和4年10月に始まりました。現物給付を受けるためには、市町村から配布される子ども医療費受給者証を医療機関の窓口で提示する必要がありますが、現在、多くの自治体で紙のものになっています。
私が持っているものも紙のものです。これは、県が示す例示が紙の受給者証を想定した様式であることが要因だと考えています。そのため、県内の多くの保護者は、この紙の子ども医療費受給者証を、長い場合ですと18年間持ち続けなければなりません。子どもの急な発熱などに備えるため、折り曲げてお財布などに入れている方も多いのですが、本当にぼろぼろです。
蓮田市など県内の一部市町村では、その独自の判断でカード化を進めているところもありますが、ごく少数です。ペーパーレス、DX化が進められる中、確かに今後、マイナンバーカードと子ども医療費受給者証の一本化の可能性もありますが、現時点で具体的な見通しは立っていません。県が示す例示が紙の受給者証を想定した様式のみであるため、そもそも子ども医療費受給者証は紙でないといけないと考えている市町村も多いと思われますし、まずは、県が示す例示を紙とカードの両方を示し、市町村が選択しやすい方式に変更すべきと考えますが、保健医療部長の御見解をお伺いいたします。
また、障害者手帳も同様です。カード化を求める当事者の声は大きく、議会でも何度も取り上げられていますが、併せて福祉部長に御見解をお伺いいたします。

A 表久仁和 保健医療部長

子ども医療費受給者証には、「氏名」や「住所」などの受給資格者の情報のほか、助成内容や「窓口負担が生じる場合」の注意事項など様々な情報が記載されています。
このため県では、受給資格者や医療機関に必要な情報が伝わるよう受給者証の参考様式を市町村に示しておりますが、カード型の受給者証にした場合は、記載内容の一部省略などが必要になります。
一方で、持ち運びが容易なカード型の受給者証の利便性から、一部の市町でカード型の受給者証が導入されています。
これらの市町に導入の利点や課題などを確認し、受給者証の参考様式にカード型に関する記載を併記することなどを検討してまいります。

A 金子直史 福祉部長

カード型の障害者手帳は、現在5都県で交付されております。
国では、健康保険証をマイナ保険証に一体化する方針であり、マイナンバーカードの利活用を拡大していく中で障害者手帳も一体化の対象として示されていることから、今後、具体的に検討されていく可能性がございます。
また、手帳の発行は、県、政令市、中核市がそれぞれ行っており、県内統一的に対応することが望ましいと考えます。
県といたしましては、引き続き、国の動向を注視しつつ、政令市・中核市とも協議しながら検討してまいります。

トイレにおけるベビーキープ・ベビーチェアの二重ロックについて(福祉部長、総務部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

トイレにおけるベビーキープ・ベビーチェアとは、トイレの中で子供を座らせる椅子で、子育て当事者にとっては必須なのですが、とても困ったことがあります。
こちらの写真を御覧ください。私が、一歳になる長男を連れて県内の公共施設のトイレに入ったときの実際の様子です。子育て当事者からすると、とても恐ろしい写真なのですが、皆様、何が恐ろしいかお分かりになりますか。
そうです。このベビーキープ・ベビーチェアに子供を座らせると、手が伸びてトイレの鍵を開けてしまうのです。実際に私も何度も鍵を開けられていますし、明けられているほかのママを見たこともあります。これまで私が利用した限りで、二重ロックがあったトイレは1つもありません。
小さなことですので、一般質問に取り上げるか悩みましたが、当事者にとっては非常に大きいことですし、この実態を訴えることで、行政だけではなく、社会、そして民間にも広く施設管理者の方々に二重ロックを進めていただきたいと願い、あえて一般質問に取り上げさせていただきました。今後、トイレにおけるベビーキープ・ベビーチェアの設置を進め、その際、併せてトイレの二重ロックを進められないか、福祉部長にお伺いいたします。
また、まずは県庁自身から率先して二重ロックを設置していただけないか、総務部長にお伺いいたします。

A 金子直史 福祉部長

県では、ベビーチェア等の設置を促進するため、「埼玉県建築物バリアフリー条例」及び「埼玉県福祉のまちづくり条例施行規則」におきまして、一定の規模を超える建築物のトイレにつきましては、ベビーチェア等を設けることとしております。
議員お話しの二重ロックにつきましては、乳幼児がカギを開けてしまうことを防ぐため、高速道路のサービスエリアなど一部の施設において、通常の位置に加え、乳幼児の手が届かない高い位置にもカギを設置している例を確認いたしました。
今回、そうした不安を抱いている方がいらっしゃるという認識を新たにしたところでございます。
二重ロックの設置につきましては、現在、施設管理者の判断で設置をされております。
ベビーチェア等の設置に合わせて二重ロックの設置を推奨することについては、施設管理者の費用負担を伴うため、県といたしましては、まず、学識経験者や建築士、企業などで構成する埼玉県福祉のまちづくり推進協議会に推奨に向けて意見を伺ってまいります。

A 三須康男 総務部長

県では、車いすを御利用される方の駐車場や段差の無い出入口などを整備するなど、年齢や性別、障害の有無などを問わず誰もが利用しやすい県庁舎となるよう努めております。
確認したところ、現在、県庁全体のトイレのうち、65か所にベビーチェアが設置されており、お子様の手が鍵に届かない位置にあるトイレもございました。
一方、議員ご指摘の手が鍵に届いてしまう位置にあるベビーチェアは、20か所あり、いずれも二重ロックは付いておりません。
議員のお話をお伺いし、トイレの鍵が内側から不意に開けられることなく、安心して利用できるようにすることは、改めて大事なことだと認識いたしました。
まずは、来庁される方の多い一階のトイレから優先的に二重ロックを設置し、さらに利用しやすい県庁舎となるよう対応してまいります。

障害者差別解消法に基づく基本方針の改定に伴う合理的配慮の義務化について(福祉部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

障害者差別解消法は、障害のある人もない人も互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる共生社会の実現を目指していますが、2024年4月1日より同法が施行され、これまで努力義務であった事業者による合理的配慮の提供が義務化されます。
これを受けて、都道府県レベルでは滋賀県等において、市町村レベルでは明石市等多くの自治体において、事業者等が段差解消のためのスロープや手すり、点字メニューや筆談ボードなどを用意する際の補助金を設けています。また、静岡県では普及啓発をする際の補助金を設けています。埼玉県についても同様の補助金を検討できないか、福祉部長の御見解をお伺いいたします。

A 金子直史 福祉部長

合理的配慮とは、店舗でスタッフが視覚障害者にメニューを読み上げたり、聴覚障害者に筆談でコミュニケーションを取るなど、事業者の負担が重すぎない範囲で対応することです。
過重な負担となる場合は、事業者は負担が重すぎる理由を説明し、別の方法を提案するなどお互い話し合い理解し合うことが大切です。
県ではこれまで、業界団体や事業所への説明会の実施や障害特性に応じた配慮のポイントをまとめたハンドブックの配布など、理解の促進に努めてまいりました。
議員お話しの補助金につきましては、事業所における合理的配慮の提供の実態や事業者の負担の状況、他県の取組例も参考に研究してまいります。

地元問題について

JR埼京線北戸田駅へのホームドア設置について(企画財政部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

ホームドアの設置については、多くの方から設置の要望が届いていることと思います。私の地元のJR埼京線戸田公園駅、戸田駅、北戸田駅の3駅でも人身事故が増加しており、ホームドアの設置が望まれています。特に北戸田駅は、「鉄道人身事故データベース」という民間のホームページによれば、昨年1年間の人身事故発生件数は5件と、乗降客数が日本で最も多い100万人を超える新宿駅の6件に次いで全国ワースト2位、亡くなった人数で言えば、全国ワースト1位です。
北戸田駅は乗降客数が約4万人で、通っている路線は埼京線の1本のみ、しかも、各駅停車しか停まらない小さな駅です。そして亡くなった方のほとんどが10代から20代であり、それ以外では、30代の母親が幼い子供2人とともにホームに身を投げたという痛ましい事故も発生しており、言葉になりません。
JR東日本のホームドア設置計画については、2031年度末頃までに、東京圏在来線の主要路線330駅、758番線の整備の完遂を目指しているとのことですが、例えばお隣の蕨駅では、乗降客数が約10万人ですが、2017年に盲導犬を連れた目の不自由な男性がホームから転落し亡くなるという痛ましい事故を受け、国、県、蕨市の協力の下、2020年2月に、簡易なタイプであるスマートホームドアが設置されました。是非、県としても、全国ワースト1位の北戸田駅へのホームドア設置に後押しをしていただきたいと考えますが、企画財政部長の御見解をお伺いいたします。

A 中山貴洋 企画財政部長

ホームドア設置の推進は、鉄道利用者の安全確保の観点から、大変重要であるというふうに認識をしております。
現在、北戸田駅にはホームドアが設置されておりませんが、JR東日本では、北戸田駅を含む県内の埼京線の各駅に令和13年度末頃までの整備を計画していると承知しております。
県では本年3月にJR東日本に対して要望活動を行い、北戸田駅を含む整備計画のある駅について、出来る限り早期の整備をお願いしたところでございます。
また、県では、鉄道事業者がホームドアを整備する際、一定数以上の利用者がいる駅などを対象に費用の一部を補助をしております。
引き続き、こうした要望活動や補助制度を通じ、北戸田駅をはじめ県内各駅のホームドアの早期整備を積極的に後押ししてまいります。

笹目川排水機場の排水能力の向上について(県土整備部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

令和4年9月定例会において、私は、笹目川排水機場の排水能力の向上を訴えましたが、その後、ポンプ能力を毎秒30トンから50トンに対応できるよう、具体的な検討に入ったと伺っております。この場をお借りして、関係各位の御理解と御協力に感謝いたします。
そこで、笹目川排水機場の排水能力の向上に向けた現在の進捗状況と今後の見通しについて、県土整備部長にお伺いいたします。

A 金子勉 県土整備部長

笹目川排水機場は、荒川の水位が上昇し、笹目水門を閉鎖した場合に、笹目川の水を最大毎秒30立方メートルで荒川へ排水する能力を持つ施設です。
この排水機場については、令和元年東日本台風の浸水被害を踏まえ、県としてポンプの排水能力を高めることが必要と判断し、検討に着手しております。
令和5年度は、必要となる設備の規模や配置等を検討する基本設計を進めてまいります。
その上で、具体的な事業手順や設備の構造などについて詳細設計等を行い、事業の推進に取り組んでまいります。

菖蒲川の治水対策について(県土整備部長)

Q 金野桃子 議員(県民)

菖蒲川は、戸田市及び川口市を流れる一級河川ですが、令和元年東日本台風の際は菖蒲川も越水し、その周辺の道路が冠水し、多くの住宅などが浸水しました。これを受けて県では、令和4年度から堤防かさ上げ工事に着手していますが、かさ上げ事業の進捗状況と今後の見通しについて、県土整備部長にお伺いいたします。

A 金子勉 県土整備部長

菖蒲川は、戸田市から川口市を流下し、荒川に合流する延長約3キロメートルの一級河川です。
令和元年東日本台風では、菖蒲川の堤防が低い区間で越水等が生じたことから、堤防の高さが不足している荒川合流点から曲尺手橋までの約1800メートル区間の嵩上げ工事を下流から順次実施しております。
これまでに、荒川の合流点から緑川合流点付近までの560メートル区間の嵩上げを実施し、現在の進捗率は31%です。
令和5年度は、その上流の菖蒲橋までの400メートル区間の工事を進めてまいります。
残る曲尺手橋までの840メートル区間につきましても、早期完成に向けて事業を推進してまいります。