災害時の帰宅困難者対策について
東京都との具体的な輸送区間について(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
巨大地震のリスクは、2014年に内閣府の中央防災会議において、地震発生後の初動体制等が示されており、また、プレートの沈み込みに伴う活動間隔や発生の可能性が随時公表されています。この報告によると、南海トラフ地震と首都直下地震の発生確率は、2020年1月時点で30年以内に70から80%と予測されていますが、発表から2年経過していることから、年々そのリスクは高まっており、来るべき災害には、いかなるときでも柔軟に対応できる体制を構築していくことが何より重要です。
東日本大震災の際は、首都圏で515万人の帰宅困難者が発生しましたが、震度七を想定する首都直下地震では、東京都だけで帰宅困難者は415万人に上るとの推計が内閣府から出されています。このことから、都内へ移動する1日当たり約93万人の県民と本県へ通勤通学する約26万人が、公共交通機関の運行停止による移動手段が断たれた場合の対策をすぐにでも確立しておく必要があります。
本県の地域防災計画における帰宅困難者の定義は、「平日の24時までに徒歩による帰宅が容易にできない者」とされています。また、昼12時に首都直下地震が発生した場合は、県外からの通勤通学者も含めて、約67万人が帰宅困難になると予想しています。
東京都の地域防災計画(震災編)を見ると、帰宅困難者の代替輸送として、交通局によるバスの確保が盛り込まれています。また、バスの運行に当たっては、限りがあるため要配慮者を優先し、鉄道折り返し駅まで短距離区間でのピストン輸送など、効率的な形態によって実施するとの記載があります。
しかし、残念ながら、東京都と埼玉県双方の計画には、どこからどこまで輸送するといった具体的な区間の明記はありません。これでは、県民どころか、要配慮者の優先輸送も困難になると思われます。東京都への移動は、本県からのほか、神奈川県から106万人、千葉県から71万人であり、発災時間によってはバスの確保が難しくなることが予想されるため、まずは、東京都と本県で具体的なバス輸送区間を定めておくべきだと考えますがいかがでしょうか、知事の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
大規模地震発生直後に多くの方々が一斉に帰宅をしようとすると、各地において混雑が発生をし、集団転倒に巻き込まれたり、火災や沿道建物からの落下物で負傷したりと、大変危険な状態になることが想定されます。
また、一刻を争う救出・救助活動や消火活動、救援物資輸送などの応急対策活動の妨げにもなります。
そのため、内閣府が平成27年3月に策定した「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」に基づき、「むやみに移動を開始しない」という、一斉帰宅の抑制を原則としております。
救出・救助活動が落ち着き、発災後おおむね4日目以降から、安全を確認した上で、順次帰宅を始めていただくこととなります。
議員からお話しがありました帰宅困難者対策は、県域を越えて広域的に取り組む必要があることから、これまで、徒歩帰宅者に対する災害時帰宅支援ステーションの確保などについて九都県市で連携して取り組んでまいりました。
特に、東京都とは個別に、妊婦や高齢者、障害者など徒歩での帰宅が困難な避難行動要支援者を対象に、県内へバス輸送する訓練を、平成26年度から毎年実施をしております。
具体的なバス輸送区間をあらかじめ定めておくべきとの御提案ではありますが、避難行動要支援者の住所地や県内の被災状況、公共交通機関の運行状況によって、輸送手段や輸送できる地域も異なります。
したがって、具体的な輸送区間を想定することが困難であります。
東京都、埼玉県に共通する課題でもありますので、まずは、「東京・埼玉連携会議」でバス輸送を含めた被災時の交通の在り方について提案し、検討したいと考えています。
再Q 並木正年 議員(県民)
知事、災害の被災状況ですとかそういうのは分かるんですけれども、東京都とやっぱり具体的な輸送区間がないことには、なかなか帰宅困難者の輸送ができないと思うんですね。やっぱりこれは、ある程度幾つかの路線、ルートを想定しておくのも必要かと思うんです。
11年前の東日本大震災の際を思い出してほしいんですけれども、物すごい数の帰宅困難者で、この帰宅困難に関しては、自助とか共助じゃもうどうにもできない世界で、こういうときこそ公助の役割をしっかり認識して力を発揮するべきだと思うんですね。この場合だと、なかなか輸送区間が示せないということでしたので、もう震災はいつ起こるか本当に分かりません。今日かもしれないし、明日かもしれません。東京都との連絡会議をやっていると、時間がまた2年後とか3年後とかになってしまいます。なるべく早く帰宅支援策、強力に進めるために、今できることは例えばどういうことなのか、知事のお考えをお示しください。
再A 大野元裕 知事
大規模な災害が発生した際には、先ほどお話をさせていただきましたとおり県内の被災状況、公共交通機関の運行状況、更には地域ごとの被災状況、被害の程度等により、具体的な輸送手段や輸送できる地域も異なってくるため、なかなか想定は困難であります。
しかしながらその一方で、議員御指摘のとおり、これまで想定ができないという中でも大きな災害の際には大混乱が生じましたので、できることからやるべきだというのは、全くその通りだという風に私も考えております。
そのためには、自ずと限界はあるものの、2点、私どもはあると考えています。
まず、第1点目には、具体的な輸送区間を想定することは困難ではありますが、先ほど申し上げたとおり、平成26年度から毎年バス事業者と連携し、例えば池袋駅周辺と南越谷駅、品川駅周辺と航空公園駅周辺を発着所とした訓練を重ねてまいりましたので、このような訓練を重ねることにより、災害の場所の想定というわけではございませんが、地域の自治体と課題を洗い直すことによって柔軟で迅速な対応を可能にする、これが一つであろうかと思っております。
そして、もう1点は、災害が起きますと大きな混乱が必ず生じることとなります。
これらの大きな混乱を前提として、被災地であればこそ早急に、例えば開通している公共交通、あるいはバス路線を始めとした様々な災害時特有の交通手段、これらのものを迅速にお伝えするシステムの構築、この2点についてはすぐにでも取り組めることでございますので、もちろん、東京都との会議等も重視しておりますが、その一方で議員御指摘のとおり、できるところから解消させていただきたいと思います。
市町村及び近隣県との輸送区間について(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
帰宅困難者の輸送は、都内からだけではなく、本県に通勤通学されている約26万人に対しても考えなければなりません。本県の地域防災計画による帰宅支援策は、県バス協会との協定から、代替輸送の発着所となる市町村に、救護所等の設置や要支援者の安全確保を求めています。
しかし、発着所となる市町村も決められていない状況では、支援策は機能しません。そこで、発着所となる市町村や近隣県との輸送区間の取決めが必要だと考えますので、知事の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
現在、本県に通勤・通学する約26万人のうち、東京都からは約14万人、千葉県から約4万1,000人、群馬県から約2万7,000人などとなっています。
このような方々が県内で被災した場合でも、発災後の一斉帰宅抑制の考え方は同じであります。
発災後おおむね4日目以降になって、避難行動要支援者等の帰宅支援のため、鉄道不通区間でのバスの代替輸送を行うことになるものと考えております。
議員御提案の市町村や近隣県との輸送区間をあらかじめ取り決めることにつきましては、地域ごとの被災状況や被害の程度を想定することは難しく、帰宅困難者対策全体の中でのバスによる代替輸送の位置付けや実施体制等はもとより、具体的な発着所を定めることも困難であります。
まずは、「東京・埼玉連携会議」という協議の枠組みにおいて、県内への通勤・通学者の半数以上を占める東京都との被災時の交通の在り方について検討を進めてまいります。
また、東京都との調整を進め、ノウハウを蓄積した上で、近隣県との擦り合わせも丁寧に進めたいと思います。
効率的な相互輸送について(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
都内では、発災直後に警視庁による第一次交通規制がしかれ、環状7号線の内側に一般車両は進入できません。また、第二次交通規制では、環状8号線の内側への流入抑制となっています。限られた輸送資源を効率的な相互輸送につなげるために、どのような考えをお持ちでしょうか、知事の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
災害時には、帰宅困難者を輸送するバス車両や運転手などのヒト・モノの資源が限られることから、相互輸送を行うことは有効であると考えます。
一方、発災から3日間、72時間は、被災者の生存率が高いため、人命救助等が最優先されます。
また、道路が被災する中で、一定期間、緊急輸送道路等においては緊急車両のみ通行が可能となり、一般車両は通行が規制されることとなります。
県では発災から、先ほど申し上げた72時間を経た後の4日目以降において、道路の安全が確保されたことを前提に、県内にいる都民を都内へ輸送し、帰りは都内にいる埼玉県民を県内へ輸送するピストン輸送の訓練を行っているところです。
平成26年度から毎年度、バス事業者と連携し、例えば池袋駅周辺と南越谷駅周辺、品川駅周辺と航空公園駅周辺を発着所とした訓練を実施してまいりました。
その結果、帰宅困難者の安全かつ円滑な乗降に不可欠な役割を担う市町村の体制確保や、必要なバスの確保などの課題が浮かび上がりました。
このような課題を踏まえ、現在行っている帰宅困難者対策訓練について必要な見直しを行い、限られた輸送資源を効率的に活用できるよう取り組んでまいります。
県内ハブ拠点の位置付けと指定について(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
東京都の防災計画には輸送区間の記載がないため、短距離区間でのピストン輸送を本県に位置付けた場合、西部地域は所沢駅、南部は和光市駅と川口駅、東部を草加市の谷塚駅と仮定します。しかし、そこから先の輸送が大きな課題です。帰宅困難者の定義は、「徒歩により容易に帰宅することができない者」とされているからです。
そこで、当然、県内のハブ拠点が必要になると思います。例えば県北方面への輸送は、緊急輸送道路の国道17号に近い上尾市のさいたま水上公園や鴻巣市の運転免許センターなど、送迎車の駐車スペースを十分に確保できる施設を拠点として位置付け、指定することが有効だと考えますが、知事の考えを伺います。
A 大野元裕 知事
本県の地域防災計画では、帰宅困難者のバスによる代替輸送について、近隣都県や関係事業者と連携、協力し、避難行動要支援者を中心に輸送し、発着所となる市町村では円滑な乗降について体制を整備することとしております。
また、東京都の地域防災計画におけるバス輸送につきましては、鉄道折り返し駅までの短距離区間のピストン輸送を原則とし、効率的に実施することとしています。
しかしながら、被災状況や道路の啓開状況、緊急輸送道路の状況等が明らかでない中、輸送区間をあらかじめ想定した上で、送迎スペース等を確保することは困難でありますので、事前の指定までは考えておりません。
なお、県内で十分に駐車スペースを確保できる施設につきましては、施設の所有者・管理者等の了解を頂いた上で、県地域防災計画の中で、救援物資の集配や、警察、消防、自衛隊等の集結など、災害時の活用用途を既に定めているところでございます。
また、仮に施設所有者や管理者、利用予定者との調整が整ってハブ拠点とする場合でも、実際に発着所の設置、運営を担う市町村との連携も重要となります。
このように、県内ハブ拠点の位置付けにつきましては、様々な関係機関との十分な調整が必要なことから、どのような形で整理できるか、今後研究をしたいと思います。
シナリオ作成と輸送訓練について(危機管理防災部長)
Q 並木正年 議員(県民)
震災を想定した訓練は、これまでも定期的に行われていますが、要救助者の救出や搬送、道路啓開などが主な内容であり、帰宅困難者の輸送に特化した訓練は行われてきませんでした。「災害対応に想定外はあってはならない」と防災白書に示されるように、震災の危機が迫っているからこそ、輸送に特化したシナリオ作成や公共交通機関等を含めた訓練から、課題の把握と精査が必要だと思いますが、危機管理防災部長に伺います。
A 安藤 宏 危機管理防災部長
県では震災を想定した帰宅困難者対策訓練として、平成16年度から、都内からの帰宅経路や途中にある危険箇所、一時休憩できる場所を確認いただく、徒歩帰宅訓練を実施してまいりました。
その後、平成23年の東日本大震災で多数の帰宅困難者が発生したことから、東京をはじめとした大都市圏では、一斉帰宅抑制の考え方に大きく転換をいたしました。
これを受け、平成26年度からは、東京都が区や鉄道事業者、駅周辺事業者等と合同で実施している駅前滞留者対策訓練に、本県もバス事業者等と参加をしております。
県では、発災後4日を経過しても公共交通機関が運行再開しないという条件のもと、妊婦や高齢者、障害者など自力での徒歩帰宅が困難な避難行動要支援者を支援するため、実際にバスを使用した代替輸送訓練を実施しております。
引き続きこのような実働訓練を実施するとともに、新たに発災の季節や時間帯、天候など様々な条件のシナリオを想定した図上訓練にも取り組んでまいります。
埼玉県地域防災計画の修正について(危機管理防災部長)
Q 並木正年 議員(県民)
先日まで、地域防災計画の修正案に対する県民コメントが募集されていました。主な内容としては、関係機関との連携強化やデジタル技術を活用した情報収集と分析、伝達体制の構築などが挙げられます。そこで、実効性ある帰宅支援策を実現されるために、より強化した内容を地域防災計画に盛り込むべきだと考えますがいかがでしょうか、危機管理防災部長の考えを伺います。
A 安藤 宏 危機管理防災部長
昨年10月に発生した「千葉県北西部地震」を契機に、国は、学識経験者、鉄道事業者、放送事業者、行政などから構成される、「首都直下地震帰宅困難者等対策検討委員会」を設置いたしました。
この委員会では、公共交通機関の耐震対策の進展や、スマートホンの普及により個人への情報提供方法が多様化してきたことなど、近年の社会状況の変化を踏まえた帰宅困難者対策について検討を行っております。
この中で、これまでの原則3日間の一斉帰宅抑制は継続しつつ、被災状況や公共交通機関の復旧状況等に応じて、応急活動等の妨げにならない範囲で順次帰宅することも可能とする今後の対応方針案が示されております。
この委員会では令和4年度にかけて議論を行い、平成27年に国が策定した「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン」を改定する予定と伺っております。
こうした最新の国の動きを注視しつつ、東京都や県内市町村と効果的な帰宅困難者対策の検討、訓練を行い、その成果について地域防災計画へ反映してまいります。
医療提供体制の整備について
病床数の確保に向けて(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
本県では、医師・看護師の確保策とともに、急激な高齢化の進展から、不足している病床数の確保が課題です。整備が可能とされる基準病床数は、全国統一の算定式によって算出され、一般病床と療養病床は、二次医療圏ごとの性別や年齢階級別人口、退院率、病床使用率などから計算されます。
2025年に必要な病床数が既存の病床数を下回ることになる自治体は、全国で40の道県と試算されていますが、本県を含む7都府県では、逆に病床数が不足することになります。その理由として、特に本県は、高齢者の増加による年齢階級別人口から、令和5年の必要病床数は1,380床不足すると予測されているからです。
本県は、現時点でも病床の積み増しが難しい中で、新型コロナ第6波に備えた対策として、第5波のピーク時から272床増の2,176床を医療機関に協力要請し、今日現在、2,202床を確保しました。しかし、積み増しが増えるほど各医療機関が持つ病床数の余力はなくなり、これまで以上に搬送待機時間の延長や搬送困難事例の増加、また、一般病床への影響も懸念されます。
基準病床数と必要病床数の算定方法の見直しは、毎年、国への要望をはじめ県選出国会議員にも出されていますが、一向に進んでいない状況です。高齢化により医療需要が年々高まる本県では、安定した医療を県民に提供できる体制を構築していくことが急務です。この課題解決のため、知事のより強い取組が必要だと思いますが、知事の考えを伺います。
A 大野元裕 知事
本県は人口10万人当たりの一般病床数が全国最低であることや、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時には病床使用率が急激に高まること、そして今後の高齢化に伴う医療ニーズの高まりを考えれば、議員御指摘のとおり、病床数の確保による医療提供体制の充実・強化は、本県にとって喫緊の課題であります。
県では、本定例会で御審議をいただいている埼玉県地域保健医療計画の変更に伴い、県内の病床数決定の基礎となる基準病床数の引上げについて国と協議を行い、1,259床の引上げを承認いただきました。
その結果、県内6つの圏域において、合計1,763床もの病床整備が新たに可能となり、病床不足の現状が大きく改善をするものと期待をしております。
しかし、推計人口や過去の医療需要を基に算出する必要病床数を事実上の上限とする現在の基準病床数制度では、一般病床との両立を図りながら新型コロナウイルス感染症への対応に必要な病床数を確保することには限界がございます。
また、第6波においては、新型コロナウイルス感染症の重症病床等の使用率が一定程度にとどまっているにもかかわらず、一般医療での重症者患者が増加したことから医療提供体制がひっ迫をいたしました。
私は、734万人の県民の命を預かる者として、まずは現在の制度の中でできる医療提供体制を整備しつつも、今回のパンデミックのような状況に陥った際に十分対応できる病床の確保が必要だと考えます。
したがいまして、私はこれまでの基準病床数や必要病床数の算定方法について、新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた加算を可能とすること、新型コロナなど高度で専門的な医療を提供する医療機関の病床を知事の裁量により圏域を越えて弾力的な病床配分ができるようにすることを要望してまいりました。
引き続き、国に対し、一般医療に影響を及ぼすことなく新型コロナウイルス感染症にも対応できるよう、基準病床数制度の見直しを粘り強く要望し、新たな5か年計画で定めた本県の目指すべき将来像である安心・安全を議会の皆様の御協力もいただきながら追求してまいります。
医療圏における偏在の解消を(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
地域医療構想における本県の二次医療圏ごとの基準病床数と既存病床数を見ると、さいたま医療圏、北部医療圏、秩父医療圏では、将来、必要な病床数よりも既存病床数が多くなります。一方で、私の住む県央医療圏や東部医療圏は、基準病床数よりも既存病床数が少ない上、必要病床数も不足し、医療圏ごとでは、東部医療圏が最大の819床不足することになります。
医療圏ごとの偏在は課題であり、特例加算された高度専門医療機関の病床数が、地域医療圏の基準病床数としていまだに加算されている現状は看過できません。県央医療圏では、県立がんセンターの503床と総合リハビリテーションセンターの120床、計623床分もの病床数が基準病床数として算定されています。パーセントに換算すると、約19%がこの2つの医療機関が有する病床数であり、私は、これを公的病院占有率と呼んでいますが、どの医療圏においても、これほど多い負担はないということです。この病床数は、県央医療圏約53万人の住民に必要な病床数であるため、県立がんセンターと総合リハビリテーションセンターのように、高度で専門的な医療を提供する医療機関の病床数は、医療圏の基準病床数から除外し、県全体の病床数として弾力的に算定すべきだと思いますが、知事の見解を伺います。
A 大野元裕 知事
現在、国は議員御指摘の、県央医療圏のがんセンター病床などの「公的病院占有率」にかかわらず、圏域ごとに病床数を定めています。
しかしながら、現行の制度では、その医療機関の属する医療圏の既存病床数として計上され、病床非過剰地域への病床整備を重点的に行うことで病床の地域的偏在を是正していくという基準病床数制度の趣旨になじまない面があると考えており、国のルールは変えなければならないと考えています。
がんセンターや小児医療センターなどの圏域を越えた高度で専門的な医療を提供する医療機関の病床数を県全体の病床数として計上し、弾力的に算定するべきであるという御提案については私も同じ思いを共有しております。
私は政府要望や県選出国会議員連絡会議において、病床制度の弾力的運用について働き掛けを行ったほか、昨年11月には後藤茂之 厚生労働大臣に対し要望を行いました。
今年も様々な機会を捉え、引き続き粘り強く国に対し要望をしてまいります。
整備可能病床数の公募と増床について(保健医療部長)
Q 並木正年 議員(県民)
新型コロナ対策における病床確保は、各医療機関の協力の上で確保されており、駐車場に整備した専用仮設病棟などで対応しています。しかし、この仮設病棟は基準病床数に入らないため、恒久的には使用できません。今後更に病床の積み増しが必要になった場合や安定した医療提供体制のためにも、第7次埼玉県地域保健医療計画の変更によって、6つの医療圏で整備可能となる1,763床の積極的な公募と増床を行っていく必要があると考えますが、保健医療部長の考えを伺います。
A 関本建二 保健医療部長
新型コロナウイルス感染症の受入病床は、本来一般医療に対応する病床をコロナ病床に転換しており、その分一般医療に影響を与えているため、増床により医療提供体制を強化すべきと考えます。
今後の病床配分は、本定例会で御審議いただいております第7次埼玉県地域保健医療計画の変更をお認めいただければ、公募する病床の医療機能や公募の進め方などについて、医療審議会にお諮りします。
その後、公募内容について速やかに医療機関に周知するとともに個別相談にも応じるなどし、1,763床の増床が実現できるよう積極的に取り組んでまいります。
医師・看護師の確保について(保健医療部長)
Q 並木正年 議員(県民)
医師・看護師の確保策については、これまでも多くの議員が取り上げています。地域枠の必要数は、2036年時点の医師供給推計が需要推計を下回っている場合について、その差を医師不足数として地域枠等の必要数を算出します。本県は、奨学金や研修資金の貸与を行い、医師確保に努めていますが、令和2年度までの累計返還者は、地域枠が2名、臨床研修医研修資金が17名、後期研修医研修資金が13名と、多くの貸与者が医師不足の地域や診療科での勤務を諦めてしまう現状があります。
また、地域枠の拡大については、教員数や大学の施設面で地域枠奨学生を増やせない現状もあるため、貸与者の本県への定着と地域枠の拡大を進めることが重要です。一昨年の特別委員会で、「医師確保のために、医学生奨学金、臨床研修医、後期研修医の研修資金制度の拡充、地域枠の拡大に努めること」と、意見・提言を行っています。そこで、医師の確保に向けた保健医療部長の見解を伺います。
また、看護師不足の問題は以前から指摘されていますが、コロナ禍においては、感染拡大時に濃厚接触者認定からの勤務制限や、ワクチン接種会場でのダブルワークなどで、勤務する医療機関のシフトを減らさざるを得ない状況があります。勤務先でのローテーション確保が課題であったことは、本県における看護師不足の実情を示すものであるため、看護師の確保策に向けた保健医療部長の考えを伺います。
A 関本建二 保健医療部長
医師については、奨学金や研修資金の貸与制度を柱に確保を進めており、令和4年度は地域枠の新規貸与者を現行の3大学30人から4大学33人に拡大する予算案を今定例会にお願いしております。
これにより、毎年度3人ずつ増え、令和18年度以降は27人の医師を安定して確保することができます。
看護師については、現在、特に潜在看護師の復職支援に取り組んでおります。
昨年のワクチン集団接種では、ワクチンの打ち手としての従事を呼び掛けたところ、585人が研修を受講し、就業に結びつけることができました。
医師・看護師の確保に向け、対策を更に充実させ、全力で取り組んでまいります。
県有資産のファシリティマネジメントの推進について
保有資産と処分対象資産の選択をどう判断していくのか(知事)
Q 並木正年 議員(県民)
新型コロナの影響から、大手企業が兵庫県淡路島へ移転、電通の本社ビル売却や丸紅の社屋移転など、企業経営は、働き方の変化や多様化するニーズから地方移転や経営合理化が進んでいます。また、財務省は、国有不動産として過去最大の売却額となる見通しの、区分所有している都心のオフィスビルの売却を発表しています。
県が保有する資産においても、保有、利活用、処分といった企業経営の視点であるファシリティマネジメントを用いることが、今後の財政運営に大きな影響を与え、結果として、県民サービスを継続して提供できることにつながると考えます。
保有し、利活用される県有施設では、「海のない埼玉県に海を」というコンセプトで、埼玉県誕生100周年を記念して建設され、私もたびたび利用した上尾市のさいたま水上公園は、多くの県民に愛されながら、昨年50年の役割を終え、新たにスポーツ科学拠点として再生されることが決まりました。このように、県有施設で保有され続け、再生される施設は、今後限られてくると思います。
本県は、高度成長期を中心に多くの公共施設を建設、整備してきたため、将来は、老朽化による維持管理費の大きな財政負担を強いられることが明らかになっています。今年度末時点で築30年を超える県有施設は約65%を超えており、2013年に行った推計によると、2043年までの30年間で約1兆8,000億円の予算が必要になると試算されています。この額を平均すると、単年度の負担額は586億円となり、10年前の維持管理費に係る当初予算額の約2倍の負担になります。しかし、この費用は、あくまで当時の賃金体系や景気、物価などを基準にしたものであるため、将来の人件費や物価の上昇から考えると、更に大きな負担となることが予測されます。
そこで、保有資産と処分対象資産の選択をどう判断していくのか、会社経営者でもある知事に、ファシリティマネジメントの視点から見解を伺います。
A 大野元裕 知事
県が保有する多くの資産のうち、どの資産を保有し、また処分すべきかを選択するには、議員御指摘の経営的手法による資産管理、いわゆるファシリティマネジメントの視点から、長期的かつ戦略的に判断することが必要となります。
県では、「県有資産総合管理方針」に基づき、維持管理コストの見通しや、貸付けも含めた有効活用、資産全体のスリム化などの観点を踏まえ、資産の保有を継続するか否かの判断を行っているところであります。
例えば、庁舎等の建物については、施設の利用状況と建物の劣化度などの評価に加え、それぞれの施設の性質や特性を踏まえ、保有し利活用を続けるのか、処分対象とするのか、いずれの方向性を決定することが重要であるかを考えています。
こうした選択により、未利用資産との方向性が示されたものにつきましては、県庁内や地元市町村に活用希望の有無を照会しております。
希望がない資産のうち、民間への売却に支障がないものについては、一般競争入札により売却を進めております。
加えて、急激な高齢化の進展や今後の人口減少を踏まえ、県有施設のダウンサイジングや統廃合を行うことについて、現在検討を進めております。
また、デジタルトランスフォーメーションの進展による庁舎の在り方についても同様に検討している最中であり、どこにいても公共サービスが受けられるようになり、また、職員のテレワークが進み働き方も変化すると、現状の施設の一部は不要となるかもしれません。
資産として保有すべきか否かの選択に当たっては、ファシリティマネジメントの視点から、これまでの枠組みに加えDXの進展など社会変化も考慮し、将来を見据えて判断をしてまいりたいと考えております。
未利用財産の試算額について(総務部長)
Q 並木正年 議員(県民)
県有施設は、本庁舎や県立高校などの一般施設、ダムや橋りょうなどのインフラ施設、浄水場や処理場などの公営企業施設、また、廃止などによって利用していない未利用資産の4つに分類されるため、各所管が保有、利活用、処分を慎重に精査することが求められます。
未利用資産は、この10年間で69件、金額にして約160億円が売却されていますが、現在でも活用が見込まれない未利用財産は、旧大宮警察署跡地など26か所、総面積約12万7,000平方メートル存在しています。また、未利用地のうち、建物を解体して更地になっている資産は、さいたま市南区別所2丁目の旧別所第2庁舎跡地など13か所ありますが、これらは県の資産であるとともに、県民の大切な財産でもあります。
そこで、26か所の未利用資産を地価調査、地価公示に基づいて売却した場合の試算額はどうか。また、13か所の更地についても総務部長に伺います。
A 小野寺亘 総務部長
県の公有財産管理台帳における土地の価格は、各市町村が算定した固定資産税評価額を用いております。
議員お話の地価公示価格は、総務省の「固定資産評価基準」によれば固定資産税評価額の約1.4倍とされています。
また、建物については、その多くが既に耐用年数を経過し残存価値はなく逆に解体撤去費用がかかるため、売却する際にはその額を差し引く必要がございます。
未利用財産26か所のうち、建物がある13か所については解体費を差し引いた試算額が約29億円、更地の13か所の試算額は約57億円で、合計約86億円となります。
なお、公的団体に売却する場合には、「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」に基づき、原則として2割低い額となり、実際の売却額は試算額を下回る可能性がございます。
高需要が見込まれる未利用財産の活用について(総務部長)
Q 並木正年 議員(県民)
更地になっている未利用地のうち、さいたま市南区沼影2丁目にある旧沼影職員住宅跡地は、武蔵浦和駅から徒歩数分の好立地であり、隣にはマンションが幾つも並ぶ環境です。こちらがその現地の写真になります。面積は2,102平方メートル、約640坪、テニスコート約10面分相当で、解体から7年経過しており、現在はフェンスで覆われていますが、看板等の表示がないため、ここが誰の土地であるのかは全く分からない状況です。
周辺は土地需要も多く、駐車場の相場は1か月9,000円から1万1,000円とのことです。国土交通省の指針による駐車場の標準面積は、1台当たり12.5平方メートルですので、この敷地面積を単純に換算すると、実に168台分の駐車スペースになります。仮に車路や緑地帯など半分を差し引いたとしても、約80台の駐車スペースができ、貸し出した場合は年間約1,000万円近い財源が確保できたことになります。保有資産を解体する場合は、その時点で方向性を明確に示していくことが重要であり、利用価値の高い資産であれば、短期間でも有効に活用すべきであったと考えます。そこで、特に需要が見込まれる更地の活用と在り方についての考えを総務部長に伺います。
A 小野寺亘 総務部長
旧沼影職員住宅跡地につきましては、さいたま市から公園用地としての取得希望が示されたことから、現在売却に向けた協議を進めておりますが、短期的には活用ができておりません。
このような未利用資産を有効に活用するためには、議員御指摘のとおり建物の解体前からその方向性を明確にしておくことが重要でございます。
具体的には、建物解体前に、最適な利活用方法やスケジュールなどについて、個々の資産ごとに検討することが必要であると考えます。
また、特に需要が見込まれる更地の活用と在り方につきましては、歳入確保に資するよう、これまでも資材置場や駐車場として短期の貸付けなどを行ってまいりました。
今後は、このように利用価値が高く、高需要が見込まれる更地については、その利用について民間事業者に広くアイディアを募るなどの工夫をしていきたいと考えています。
例えば、NPOや企業から企画提案を受け、期間を限定した運動施設や展示場として貸付けを行うなど、新たな活用方法も検討してまいります。
未利用資産につきましては、地域の住民や地元市町村の意向を踏まえながら、財政運営にも貢献できるよう、今後も柔軟で多様な活用に努めてまいります。
県有資産総合管理方針のビジョンについて(高柳副知事)
Q 並木正年 議員(県民)
県有施設は、人口減少や時代のニーズとともに、その在り方が課題となっており、当時は必要であったはずの施設を閉鎖することは、地域振興や地域特性から、地元市町村の理解が当然必要になります。以前、武内議員も、地元の旧毛呂山高校跡地について質問をされていましたが、施設の保有、活用、処分の判断は、10年以上経過しても五里霧中の状況です。
2015年に策定された県有資産総合管理方針は、おおむね10年間の取組を示してきましたが、残り3年となった今、用途制限を変更しての売却を含め、どの未利用財産をいつまでにどうするのかの方針を明確にしておく時期だと思います。
そこで、改めてビジョンやロードマップを示す必要があると考えますが、いかがでしょうか。昨年3月、知事の定例記者会見において、広範な視野と鋭い経営感覚を持つと紹介され、総務部長も経験なされている髙栁副知事に伺います。
A 高柳三郎 副知事
「県有資産総合管理方針」は県有資産の総合的かつ計画的な管理や利活用に関する基本的な方針について定めているものでございます。
この中で、未利用財産などの処分については、「公的利用を優先しながら積極的に取り組むことにより、資産保有に要するコストの縮減と歳入の確保を図る」との方向性が示されております。
これを基本に、未利用財産の利活用を図っているところですが、地元市町村の意向をしっかりと伺った上で、丁寧な調整を行っていることから、協議等に時間を要し、利活用に至らず長期間の保有となっている資産もございます。
今後、利活用を進めるためには、未利用財産全体の基本的な活用方法や手順を示したビジョンを明確にするとともに、個々の財産のロードマップを作成することが有効な手段の一つと考えております。
ロードマップには、活用または処分までのステップとタイムスケジュールを示すとともに、短期的な利用方法や、地元市町村との調整や協議の予定などを盛り込むことを考えております。
未利用財産の利活用を進めることは、県の財政運営に有効な手段の一つであると認識しております。
「未利用財産をいつまでに・どうするのか」を明確にすることにより、未利用財産の適切な管理と迅速な処分につなげるよう努めてまいります。
DXによる県民サービスの効率的な運用について(保健医療部長)
PCR等無料検査の運用について
Q 並木正年 議員(県民)
デジタルを活用して、利便性が高く、快適で豊かな県民サービスを実現するため、昨年12月に、DXビジョンロードマップが示されました。直近3年間の工程表とともに、将来のビジョンに向けて具体的に何を進めていくのかを明確化しておくことも必要ですが、今行っている業務の中で取り入れ可能なものは、すぐにでも実行すべきだと思います。
例えば、昨年から全県民を対象に行われているPCR等無料検査です。県ホームページでは、検査結果はメールや電話での通知となっていますが、一部の薬局では、検査結果を取りに行かなければならない利便性に欠けたものとなっています。感染拡大時に検査通知を取りに行くことは、非対面、非接触の新しい生活様式に逆行する上、快適な県民サービスだとは言えません。また、陽性となる可能性のある方も検査に訪れることから、受ける側の薬局にも少なからずリスクがあるものと思います。
また、PCR検査の有効期限は、検査当日を含めて4日間ですが、検査キットの不足や感染増による検査の集中から、結果通知は早い薬局で当日、遅いところでは3日後と大きな差が出ています。薬局や検査会社側の事務作業に支障がある状況であるならば、受検者側から情報を取りに行けるようシステムを構築してみてはいかがでしょうか。また、利便性向上のためにも、通知を取りに行くことがないよう、県内で統一した運用を行い、欲しいときに結果を受け取れる体制が必要だと思いますが、保健医療部長の考えを伺います。
A 関本建二 保健医療部長
PCR検査等無料化事業では、抗原定性検査は短時間で結果が判明し、その場で検査結果を受け取れますが、PCR検査は採取した検体を検査会社に持ち込むため後日のお知らせになります。
多くの場合、検査結果は検査会社から受検者にメールで通知されますが、一部、薬局などの検査事業者から電話や郵送、来店での受け取りとなっております。
御提案の検査結果のシステムについては、県民の利便性向上の観点から、検査事業者の意向を確認しながら検討してまいります。
指定難病患者の申請手続きの簡素化
Q 並木正年 議員(県民)
指定難病は、治療法の確立が難しく、生涯にわたって医療ケアが必要になるなど、単に経済的な問題だけではなく、介護等に人手を要することから、家族のストレスや本人にも精神的に負担となる疾病です。指定難病は、2015年の110疾病から、現在は338疾病となっており、これに伴い患者数も増加し、本県では、令和2年度末時点で認定を受けている方は約5万2,000人です。
申請には、難病指定による診断書や課税証明、収入状況申告書など提出書類も多く、新規の申請から受給者証の交付までは2、3か月を要します。また、長年の療養が必要になるケースが多いにもかかわらず、1年ごとに特定医療費の支給認定を受けるための診断書等の再提出が必要になります。
そこで、家族や患者の負担軽減のため、データが蓄積されている認定済み患者の再交付申請の簡素化や、指定医と保健所間でのオンライン化によるカルテ、診断書の提出など、国に先駆けて今できることから始めてみてはいかがでしょうか、保健医療部長の見解を伺います。
A 関本建二 保健医療部長
指定難病公費負担制度は、更新手続きを毎年行う必要があり、患者負担が大きいと認識しております。
申請手続きについては難病法及び施行規則等により規定されており、認定済みの患者の再交付申請の簡素化をはじめ国に簡素化を要望しておりますが、抜本的な改善にはつながっておりません。
オンライン申請は、申請者の負担軽減だけでなく、事務の効率化にもつながるため、国の紙ベースを前提とした申請制度を改めていただく必要があります。
指定医と保健所間でのオンライン化については、国において、指定医が診断書をオンライン登録する仕組みづくりが進められております。
一部のオンライン化に止まらず、申請手続き全体のオンライン化・簡素化が進むよう国に働き掛けてまいります。
参加者目線に立ったコバトン健康マイレージ事業の刷新について(保健医療部長)
5年間の検証と次年度以降の進展について
Q 並木正年 議員(県民)
県民の健康づくりのきっかけとしてウォーキングを推奨するコバトン健康マイレージのスタートから、今年度で5年という節目の年を迎えました。この事業の登録者数は、昨年12月末時点で約13万8,000人、参加団体は109団体ですが、将来的に目標とする参加者40万人の達成は、険しい道のりが予想されます。
その理由として、登録者数はやや増加傾向にあるものの、登録しただけ、あるいは中断、休止されている方が半数以上の56%、約7万8,000人と非常に多いことが課題です。このように半数を超える方が活動実態のない現状を考えると、継続参加者の実情とともに、中断、休止の要因を検証することが必要です。
私も携帯アプリでの参加から数年がたちますが、システムのメンテナンス中により、歩数送信ができない時間が22時から24時であるなど、1日分の歩数を送信できないことが何度かありましたので、メンテナンス時間の変更が求められます。また、歩数計利用者の方から伺った話としては、使い始めは端末の設置場所に送信しに行くものの、徐々に面倒になり、この不便さから利用をやめてしまうケースが多いようです。さらに、市町村でも条件の違いや不参加団体もあり、ほとんど使われていない端末の設置場所があるなど、費用対効果もさることながら、多くの改善が必要だと感じます。そこで、この5年間の検証と次年度以降の在り方について、保健医療部長の考えを伺います。
A 関本建二 保健医療部長
これまでの5年間を検証すると、1年目の参加者数は2万7,000人でスタートし、4年目には手続きの簡素化とポイント対象を拡大した結果、10万1,000人に増加し、さらに今年度はこれまでに4万人を超える方が新たに参加しております。
議員お話しのとおり、歩数送信のある方の割合であるアクティブ率は、年間40パーセント台で推移しており、決して高くはありません。
月ごとのアクティブ率を検証したところ、企業対抗戦などのイベントを開催した月はアクティブ率が向上していることが分かりました。
今後も、魅力的なイベントを企画するとともに、中断・休止している方には、直接、メールなどにより再開を促してまいります。
また、中断・休止の要因についても、今後、アンケートなどにより検証し、改善を図ってまいります。
さらに、システムメンテナンス時間も、できる限り参加者の歩数送信に差しさわりのない時間帯に変更いたします。
歩数を送信する端末については、今後、利用状況について市町村から聞き取りを行い、設置場所などについて検討してまいります。
次年度以降につきましては、事業効果の検証結果を踏まえて、例えば、健康データを活用したアドバイス機能の導入など、参加者目線で魅力ある事業の在り方を検討してまいります。
参加者の満足度向上について
Q 並木正年 議員(県民)
令和2年度に行ったマイレージ参加者2,760名によるアンケート調査では、外出手段や健康診断の受診状況、さらには地域活動など、多岐にわたる調査の回答が得られています。そして、次年度以降更に発展させるためには、いただいた意見から、魅力のある部分を更に伸ばし、今の参加者を逃がさない仕組みが必要になります。
そこで、3点伺います。
まず1点目、参加者インタビューでは胸が熱くなるエピソードがあるように、これらを広く紹介することで、新規参加者の獲得につなげてみてはいかがでしょうか。
2点目、現在は年4回の抽せんですが、中断、休止されている方々の再開を促すためにも、協賛企業を増やすなどして、年6回の抽せんにしてみてはいかがでしょうか。
3点目、現在放映中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の反響から、県物産観光協会が企画するゆかりの地をめぐるツアーは、予約で埋まるほど注目されているようです。そこで、参加者が参考にするウォーキングマップに取り入れるなど、県内各地の魅力を取り入れてみてはいかがでしょうか、保健医療部長に伺います。
A 関本建二 保健医療部長
コバトン健康マイレージに参加されている方からの声には、ウオーキングを通じて家族のきずなが強まったなど心温まるエピソードがございます。
議員お話のとおり、今後につきましては、こうした参加者からいただいたエピソードを、県ホームページや、マイレージの参加者募集のチラシなどで広く紹介し、新規参加者の獲得に努めてまいります。
また、マイレージの抽選回数については、年4回の定期抽選の合間に、民間企業と連携して、イベントやキャンペーンなどにおける賞品抽選を実施してまいります。
県内各地の魅力については、季節ごとに旬の県物産観光協会主催のツアーや市町村の名所などをマイレージ参加者に紹介してまいります。
また、議員お話の、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の「ゆかりの地」関連のウオーキングマップについては、コバトン健康マイレージに取り入れるよう検討してまいります。
こうした取組を通じて、コバトン健康マイレージの魅力を高め、参加者の更なる満足度向上に努めてまいります。
気候変動への挑戦
地域気候変動適応センターの取組について(環境部長)
Q 並木正年 議員(県民)
地球の温暖化は、産業革命以降の工業化に端を発し、温室効果ガスの濃度は当時と比較して43%上昇、また、平均気温は100年当たり0.71度の割合で上昇していることから、世界的にカーボンニュートラルを目指す取組が加速しています。
令和3年度の県政世論調査の最終報告では、県政への要望として、5位に「地球温暖化を防止する」、7位に「自然を守り、緑を育てる」など、環境関連の項目が上位となり、特に、地球温暖化を防止する項目を選ぶ県民の割合は、平成27年度の6.4%から、昨年度は17.3%にまで上昇しています。
地球温暖化対策には、温室効果ガスの排出自体を削減する緩和策と、温暖化の影響に対応する適応策をともに推進していくことが重要です。
適応策については、平成30年6月に気候変動適応法が制定され、都道府県及び市町村は、その区域における気候変動の影響や情報の収集・提供等を行う拠点として、気候変動適応センターの設置に努めることとされました。本県では、法が施行される平成30年12月1日に、全国に先駆けて環境科学国際センター内に地域気候変動適応センターを設置したことで、この定例会の質問でも取り上げています。
そこで、気候変動適応センターとして、環境科学国際センターが行ってきたこれまでの成果と今後の展開について、環境部長の考えを伺います。
A 小池要子 環境部長
県の気候変動適応センターでは、気候変動の実態や影響、今後の気温上昇予測などの情報をグラフや写真を用いて、WEBサイトなどで、分かりやすく提供してまいりました。
また、新たに対話型のセミナーであるサイエンスカフェを開催するなど、県民の皆様に温暖化対策の重要性を直接訴えかける機会の充実も図っております。
さらに、より地域の実情に応じた情報の発信と対策に取り組んでいくため、市町村の適応センターの共同設置も進めてきたところです。
これにより、例えば、さいたま市からデータの提供を受け、将来の気候変動と高齢化が熱中症の救急搬送者数に与える影響を予測するなどの取組につながっております。
これまでに6つの市と共同設置しており、全国でも最も多い市町村適応センターが開設されておりますが、今後も拡大に向けて、市町村へ働き掛けてまいります。
また、研究機関であることも生かし、県内の人工排熱の簡易な推計ツールを開発・提供するなど、県民や市町村への情報発信も更に充実してまいります。
本県における気候変動に関する最新の知見やデータを基にした分析結果や将来予測の情報を積極的に発信し、その役割をしっかりと果してまいります。
BEMS導入によるエネルギーの最適化について(総務部長、環境部長)
Q 並木正年 議員(県民)
一方、緩和策の推進としては、省エネ性能の高い施設などの導入とともに、エネルギー使用を最小限にしていく必要があり、その方策の一つとして、BEMSの活用が考えられます。BEMSとは、Building Energy Management Systemの略で、建物の状況に応じて設備の運転状況やエネルギーの消費状況などを監視、制御することで、省エネから低コストにつなげるための操作管理システムです。つまり、空調や照明を自動制御することで無駄な運転を省き、必要な運転だけを行い、エネルギーの見える化から効率化、最適化を図ることで、消費量とともに低コストを実現させる役割を果たします。
神奈川県では、中小企業にBEMS導入のための設置費用の一部補助を行い、年間の電気料金が約30%削減されるなど、高い省エネルギー効果を得ることができた事例を公表しています。本県でも昨年度から、スマート省エネ技術導入事業としてBEMS導入の補助を行っていますが、導入による削減効果が知られていないためか、申請件数は僅か2件となっています。
脱炭素社会の実現に向けて、温室効果ガスを着実に削減していくためには、エネルギーマネジメントを拡大することが必要ですが、これは老朽化した施設ほど削減が難しく、大規模修繕が必要になってしまうことが普及しない要因だと考えます。
そこで、民間に対して導入した場合の削減効果を示すためにも、築30年を超える県有施設でエネルギーの効率化と最適化を図るBEMSの導入を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか、総務部長に伺います。
また、民間企業への積極的な削減効果の周知と導入促進について、環境部長の見解を伺います。
A 小野寺亘 総務部長
これまで、県有施設の省エネルギー化は、老朽化に伴う改修時に、エネルギー効率の高い空調設備やLED照明等を導入することで実施してまいりました。
BEMSにつきましては、議員お話しのとおり、エネルギー使用量を見える化することや、設備を自動的に制御することで、限られたエネルギーを最適に管理し、省エネルギー化に寄与するシステムでございます。
近年、BEMSの管理制御部分は、処理速度が増すなど性能は飛躍的に向上する一方で、価格は安価になり、さらに製品の種類も多くなってきております。
今後は、環境部とも連携しながら、まずは、見える化により取り組むべき課題を明確にしやすい、設備のシステムがシンプルな小規模事業所で、試験的に導入を検討していきたいと考えております。
この結果をもとに、CO2排出量削減などの環境負荷の低減、費用対効果、施設の特性などを踏まえ、BEMSの効果が期待できる施設について検証してまいります。
A 小池要子 環境部長
エネルギーの使用状況を見える化し無駄を把握するには、BEMSなどのEMS 、エネルギー・マネジメント・システムの導入は効果的であり、本県では令和2年度からその導入補助事業を開始いたしました。
しかしながら、EMSの導入によってどのような削減効果が得られるのか分かりにくい面もあることなどから、これまでにこの事業の活用は2件に留まっております。
実際に、この事業を利用した食料品製造事業者は、EMSを活用することによりボイラーの蒸気量等の最適条件を検証することで、加熱工程のエネルギー使用の無駄を把握し、CO2削減を実現しております。
県では、温暖化対策に取り組む県内中小企業等を対象としたセミナーを開催しており、この3月2日には、こうしたEMSの活用効果を実際に導入した事業者に発表していただくことも予定しております。
こうしたセミナーの開催やホームページ等により、EMSの導入効果を発信していくとともに、補助事業の活用をより一層働き掛け、導入の促進に取り組んでまいります。
東松山鴻巣線、御成橋を含めた荒川河川区域内の4車線化について(県土整備部長)
Q 並木正年 議員(県民)
東松山市から吉見町、鴻巣市に至る県道東松山鴻巣線は、国道254号や国道407号に接続し、鴻巣市内では荒川を越えた御成橋東交差点で上尾道路と接続する予定です。現在、圏央道桶川北本インターチェンジから鴻巣市箕田交差点までは、国において、上尾道路二期工事9.1キロメートルの事業化により用地買収が進められており、県道東松山鴻巣線も整備を進める必要があります。
この路線の課題は、河川区域である2,537メートルの川幅日本一の荒川に架かる御成橋の4車線化であり、河川区域内の都市計画の変更や、長さ805メートルの橋りょう建設が挙げられます。令和2年9月定例会の一般質問において、道路構造の検討に必要な現況測量を実施することが答弁されましたが、都市計画の変更に向けた進捗状況と今後の見通しについて、県土整備部長に伺います。
A 北田健夫 県土整備部長
県道東松山鴻巣線は、東松山市内の国道254号、国道407号と鴻巣市内の国道17号を東西につなぐ幹線道路で、国が整備を進めている国道17号上尾道路とも接続する重要な路線です。
御質問の荒川河川区域内の4車線化について、まずは、鴻巣市と吉見町の行政境から上尾道路に接続する区間までの都市計画を一体的に変更する必要があります。
この都市計画の変更に向けては、県では、これまでに、現況測量や橋の構造の検討を行い、現在、既存の御成橋の上流側に2車線の新たな橋りょうを架設し、4車線化する計画で国と協議を進めております。
今後は、橋りょうや道路の設計を進めるとともに、国などの関係機関との調整を図りながら、4車線化に向けて鋭意取り組んでまいります。